米国時間8月20日早く、Facebook(フェイスブック)は、数百のQAnon(キューアノン)関連グループを削除したことを発表した。さらに多くのグループ、数百のページ、1万件のInstagram(インスタグラム)アカウントにも制限を加えたと話している。
The New York Timesが伝えているように、結成4年目になるQAnonは、かつては取るに足らない動きであったが、たとえば世界はドナルド・トランプの失脚を企てる小児性愛者に支配されていているとか、5Gモバイルネットワークが新型コロナウイルスを広めているとか、明らかに眉唾な、多岐にわたる陰謀論を振りまいているにも関わらず、この数カ月間に社会の本流に現れるようになった(The New York Times記事)。
なぜ、こんなことが起きるのだろうか?我々は今週たまたま、プロポーカープレイヤーからベストセラー作家に転身したことでも有名なAnnie Duke(アニー・デューク)氏(Newyorker記事)に話を聞く機会があったので、人々はこれまでになく陰謀論に感化されやすくなってしまったのか、そうだとしたらその理由は何かを聞いてみた。デューク氏は現在、著書「How to Decide: Simple Tools for Making Better Choices」(いかに決断するか:よりよい選択のための簡単なツール)を間もなく出版するなど、決定理論を教える学者でもある。
同氏の話がとても興味深かったので、ぜひ読者に伝えるべきだと考えた。ここで紹介する以外にも、デューク氏の新著について、またそれが起業家や投資家にどのように役に立つかについて、長く語った内容を、いずれまとめて紹介しようと思うので、お楽しみに。
私たちの脳は無作為性を好みません。私たち人類は、無作為な類のものの原因や結果を常に導き出そうとします。それでも気に入らず、点と点をつないで、存在するはずのない因果関係を作り上げるのです。
陰謀論を信じることと、知性とは関係がありません。物事の道理を理解すれば結果を左右できるという幻想を求める強い気持ちに対して、「そんなこともあるさ、ときとして人生とは無作為なもので、何をやるにも運が大きく関わってくる」と言い切ってしまえれば楽だという気持ちに基づく、まったくの別物なのです。
「新型コロナが流行して人々が死に、自分は家に閉じ込められるといった無作為なことは、いつでも起こり得る」とわかっていても、自分の人生に対する(自分の支配する)力の程度が示唆されてしまうため、すべては運任せだとは思いたくない。私たちの物の考え方は、大変に決定的です……。そのため、常に物事を結び付けることで、決定と結果と物事が、実際よりもずっと決定的に感じられるようにしているのです。
私たちはまた、そこにパターンなど存在していなくても、自然のパターンを見いだすことができます。それだからこそ、私たちは「前にあの平原へ行ったとき、ライオンがたくさんいた(だから安全のためにもう行くべきではない)」とある程度予測できるのです。世界は見た目とは異なること、そして私たちが常に世界に何かを押しつけていることを理解するのは困難なのです。
【編集部注】ここでデューク氏は、動いているように見えて実際には静止している2つの立方体による目の錯覚について話した
私が見たなかでもっとも強烈な錯視。反対方向に回転しているように見える2つの立方体は、じつはまったく動いていない。
立方体は確かに動いていると思えてしまうため、本当のことを知っているという確証が揺らぎます。そこで(ひとつの解決策は)、真実を知っていると自信過剰にならないことです。真実がそれ自身を私たちに押しつけてくるのに対抗して、自分が自分の真実を世界に押しつけているのだと自覚することです。
陰謀論は最近始まったのものではありませんが、いずれにせよ、長い間留まるものです。現在の最大の問題は、いとも簡単にそれが増幅されてしまうことです。
あることが真実か否かを見極める際に、私たちに備わっている発見的手法は、処理の流暢性です。つまり、そのメッセージをどれだけ簡単に理解できるかです。あることを何度も繰り返し聞かされると信ぴょう性が高まると、Stephen Colbert(スティーブン・コルベア)は言っています。写真を加えると……。例えばばキリンは世界で唯一ジャンプできない動物だと私が話すときに、キリンの写真を添えてやれば信ぴょう性が高まります。
それが、ソーシャルメディアのどこに利用されているかがわかるでしょう。陰謀論と反復。それが、真実かフィクションかの見分けづらくしているのです。
近々、デューク氏からは、なぜ会議がいつも間違った方向に進むのか、なぜ物事が正しい方向に進むときのことを十分に研究せずに損失にばかりこだわるのかなど、もっといろいろな話を聞く予定だ。
画像クレジット:JAE C. HONG / AP
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(翻訳:金井哲夫)