米上院議員クロブシャー氏、アマゾンのフィットネストラッカーHaloについてプライバシー面の懸念を表明

ミネソタ州選出のAmy Klobuchar(エイミー・クロブシャー)上院議員は、Amazon(アマゾン)が新しく発表したフィットネストラッカーのレビューを受け、公開書簡を出している

クロブシャー上院議員は米国保健福祉省のAlex Azar(アレックス・アザー)長官宛に、「最近寄せられる報告から、Halo(ヘイロー)が個人の健康に関する、大変広範囲にわたるプライベートな情報にアクセスできることについて懸念せざるを得ません」と書き送ったのだ。そして、「ヘイローは、市販のコンシューマー向け健康デバイスの中でも前例のない規模の個人情報を収集すると考えられます」と危惧した。

このフィットネストラッカーに対する懸念を表明したのは、同議員が初めてではない。2020年8月のデバイス発表時に、人々が眉をひそめたのは事実だ。しかし、常時オンのマイクや装着者の全身ボディスキャン機能を搭載するこのデバイスに疑問を呈した人々の中で、彼女は製品に対して実際に行動を起こせる立場にある数少ない一人だ。

同議員は、TechCrunch(テッククランチ)とのインタビューの中で「私は今もFitbit(フィットビット)を着けていますよ」と述べた。それからすぐに訂正し、 「あら、今朝は着けるのを忘れていたみたい。 なんてこと。 フィットビットは、ほぼ毎日着けています。しばらく着けない時期があったんですが、2月からは大体ずっと着けています」と語った。

もちろん同議員だけではない。Pew(ピュー)が2020年1月に出したレポートによれば、米国では成人の約5人に1人がスマートウォッチかフィットネストラッカーを普段から装着している。筆者自身も着けているし、読者の中にも少なからずおられるだろう。ヘイローは一線を越えてしまったとする見方もあるかもしれないが、トラッカーにおけるプライバシー侵害の懸念はヘイローに始まったことではない。同議員は、ヘイローが収集するデータの規模が「何らかのルールと規制の必要性を感じさせるものだった」とはいえ、トラッカーの分野において全体的に監視と規制の強化が必要だ、とした。

「規定が必要だと本当に思います」とクロブシャー上院議員は述べる。「保健福祉省に書簡を送るのは、保健領域のデータのプライバシー保護について同省にもっと大きな役割を担ってほしいからですが、健康に関する個人情報が守られるためには、保健福祉省と連邦取引委員会の間で、何らかの規定を策定する必要があります。アマゾン・ヘイロー・バンドはその最たる例にすぎず、同様の問題を抱えるデバイスは他にいくつもあるのです。この点で、州レベルでの規制などはすでにありますから、あと必要なのは合衆国基準です」。

同議員が送った書簡では、アザー長官と保健福祉省に対し、健康データの保護において同省が果たす役割に関する4つの質問が提起されている。アマゾン側の言い分は、大きく次の2点だ。まず、ボディスキャンと会話検出はオプション機能であること、そしてローカルに格納されるこれらのデータに同社が直接アクセスすることはできないという点である。

クロブシャー上院議員が送った書簡について尋ねたところ、アマゾンから次のような回答が返ってきた。

「アマゾン・ヘイロー・バンドに関する質問の件につきましては、クロブシャー上院議員の事務所とやり取りさせていただいているところですが、当製品の設計と製造において、大前提にあるのはプライバシーです。ボディスキャンの『Body』や音声収集の『Tone』は任意選択の機能であって、製品の利用に必須ではありません。また、アマゾンはボディスキャン画像や収集された音声サンプルにアクセスできないようになっています。本サービスのプライバシーに対する取り組みは透明性の高いものであり、詳しくはアマゾン・ヘイロー・バンドのプライバシーホワイトペーパーにてお読みいただけます」。

クロブシャー上院議員は、「(書簡は)特に健康に関する個人情報の保護や、セキュリティとプライバシーの確保を求めているんです」と述べる。「それらすべての手段を講じているとアマゾンが言っているとしても、この分野に関わるすべての企業に対するルール作りは必要です」。

個人の健康情報に関するプライバシー保護が注目を集めるきっかけとなったのは、2019年11月にGoogle(グーグル)が21億ドル(約2100億円)でフィットビットを買収する計画を発表したことだ。その時は、この買収は2020年のどこかの時点で成立するものと思われていた。しかしフタを開けてみれば、その見込みは楽観的すぎたようだ。2020年8月の証券取引委員会への届出の際に、フィットビットは買収の成立が2021年5月にまで延びる可能性を示したのだ。

新型コロナウイルス感染症によるパンデミックもこの遅延の一因になったと考えられるが、グーグルが直面している最大のハードルは政府の承認だ。Amnesty International(アムネスティ・インターナショナル)をはじめ、多くの団体や個人がこの買収に対する懸念を表明している。欧州連合(EU)は、この買収によって「グーグルが広告の提供と表示のパーソナライズに活用できるデータが、すでに掌握している膨大なデータに加えて、さらに増加するため、グーグルのオンライン広告市場における支配的地位をより強固なものにする恐れがある」と8月に判断した。

この買収に関する調査が行われ、今週ついに欧州委員会は買収へのゴーサインを出したが、これには重大なただし書きが付いている。グーグルに課せられた最大の条件は、フィットビットの健康関連データを10年間はターゲティング広告に利用しないというものだ。また、EUは期間後に、この保護措置をさらに10年間延長する権利を留保している。

クロブシャー上院議員は、プライバシーに関する条件を課すことは必須だと考えていることを述べ、「条件が十分かどうかは、事実に基づいて、米国の規制当局がこの米国で判断すべきだと思います。データサイロを作成することになって良かったです。(……)それと、合併に対する調査を大いに強化することが必要だと思います。合併のタイミングを狙って、反競争的行為として許可を与えないか、条件を課した上で許可するようにすべきなのです」と語った。

独占禁止法違反への監視強化は、同議員にとって重要なプロジェクトになっている。2019年8月には、コネチカット州選出のRichard Blumenthal(リチャード・ブルメンソール)上院議員とともに、独占行為を抑止するための法案を提出しており、新大統領の着任後に法案が通過することを希望しているところだ。

「新たな会期が重要な転機になるでしょう」とクロブシャー上院議員は述べた。「トランプ政権のもとで、これらの重要な問題が取り上げられました。遅かったですが、最終的にはやるべきことをやってくれたのです。ただ、市場の独占に対処するための法律を実際に成立させるほど力を傾ける余裕が、トランプ大統領にはありませんでした。それで、これはバイデン政権と次期司法長官の仕事になると思います」。

とはいえ、テック企業の規模と影響力を有意に抑えるには、買収時点での規制当局の調査を強化するだけでは不十分だ。多くの事案において、その規制ポイントははるか昔に通過してしまっている。

同議員も、「今後の独占的な吸収合併について考えればいい、というものではありません」と述べ、次のように続けた。「すでに起こったことも見直すのです。Facebook(フェイスブック)訴訟はそういうことですし、グーグルの訴訟も、見る角度によってはそういうことです。 他にDoubleClick(ダブルクリック)などの事案もありますが、問題の大部分は、独占力がどのように行使されているか、という点です。過去の吸収合併について訴えられることもありますが(フェイスブックの事案がそうです)、『排除行為』と呼ばれる反競争的な行為について訴えられる可能性もあります」。

フィットビットユーザーの上院議員がインタビューの結びに付け加えたのは、彼女は決してアンチテクノロジー派ではない、ということだった。「イノベーションってすばらしいと思うんです。私もいつも利用しています。まあ、オンライン注文で愉快な体験をしたこともありますよ。今、家には900グラムのメープルヨーグルトが6個もあるんです。冷蔵庫に入れていた小さいパッケージのものと勘違いして、買ってしまいました。 イノベーションはすばらしいものだとは思いますが、競争を許容しても同じようにすばらしいと思います。むしろ、さらに良くなりますよ」。

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カテゴリー:セキュリティ
タグ:プライバシー アマゾン フィットネス

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(翻訳:Dragonfly)

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TechCrunch Japan

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