Google(グーグル)が初めて、これまでに当局から受け取ったジオフェンス令状の数を公表し、以前から議論が多いこの令状の発行頻度などがわかるようになった。
その数字は米国時間8月19日に公表され、Googleが2018年以降の各四半期に数千件のジオフェンス令状を受け取ったことを明かしている。それは、Googleが受け取る米国の令状の約1/4を占めることもある。そのデータによると、ジオフェンス令状の大半は地方や州の当局が入手しており、国の法執行機関はこのテクノロジー大手が従ったすべてのジオフェンス令状のわずか4%を占めるにすぎない。
データによると、Googleは2018年に982件のジオフェンス令状、2019年には8396件、2020年には1万1554件を受け取った。しかしこれらの数字は受け取った令状の総数をざっと示すだけで、個々の要求の詳細はなく、またあまりにも広範な要求を断った例についても記述がない。Googleの広報担当は、この件についてコメントしなかった。
数十にも及ぶ人権団体がこの数字の公表をロビー活動によって求め、その活動のまとめ役だったSurveillance Technology Oversight Project(STOP)の事務局長Albert Fox Cahn(アルバート・フォックス・カーン)氏は、Googleが数字を公表したことを称賛している。
カーン氏は「ジオフェンス令状はその適用範囲の広さが憲法違反に相当し、侵害的であり、私たちとしてはそれが完全に違法と見なされる日まで活動を続けたい」と述べている。
ジオフェンス令状は、犯罪が行われたときに現場近くにいて関心を持っていた人びとを探そうとするので「リバースロケーション」令状(reverse-location warrants)とも呼ばれる。逮捕状などと同じく警察は、裁判所にGoogleにリバースロケーショを命じることを求める。Googleにはその広告事業の運用のために膨大な量の位置データがあり、令状に従って、ある地点から半径数百フィート以内にいた人の情報を警察に渡して、容疑者候補の特定を助ける。
Googleは長いアダ、これらの数字の公開を避けてきた。その理由の一端は、ジオフェンス令状がGoogleだけの案件であるためだ。法執行機関は以前からGoogleのSensorvaultと呼ばれるデータベースにユーザーの大量の位置データがあることを知っており、The The New York Timesが2019年にそのことを初めて明かしている。
Sensorvaultには世界中の少なくとも数億台のデバイスの詳細な位置データがあると言われており、それらは、ユーザーがAndroidデバイスを使っていて位置データを有効にしている場合に収集される。あるいはGoogleマップやGoogleフォトといったGoogleのサービスを使っていてもよい。Google検索の結果ページでもOKだ。2018年のAssociated Press(AP)の報道では、ユーザーが自分の位置履歴を「停止」にしていても、Googleはそのユーザーの位置を取得できる。
しかし批評家たちは、当局はGoogleに、同じ地理的領域内にいる者全員のデータを渡すよう強要するから、ジオフェンス令状は憲法違反と主張してきた。
しかも、その令状によって完全に罪のない人でも罠にかけてしまうからだ。
TechCrunchは2021年初めに、ミネアポリス警察がジオフェンス令状を使って、2020年警察がGeorge Floyd(ジョージ・フロイド)氏を殺害したときに騒動を起こした人物を特定しようとしたと報じた。現場で撮影し抗議活動を記録しようとしていた1人が、暴力に近い場所にいたとして警察に位置データを要求された。NBC Newsの報道によると、フロリダ州ゲインズビルの住民が、その情報を住居侵入事件を捜査していた警察にGoogleによって渡されていたが、その時間にはフィットネスをしていたことがスマホに残っていたため無罪を証明できた。
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裁判所はまだ、ジオフェンス令状の合法性について広く審議していないが、一部の州はそれを禁ずる州法を準備している。ニューヨーク州の州議が2020年、ジオフェンス令状を禁止する法案を提出した。それは、ミネアポリスであったように、警察が抗議活動への参加者をターゲットにするためにそれを利用するかもしれないという危惧からだ。
そのときの法案作成を手伝ったカーン氏は、今回公表されたデータにより「この技術を違法化しようとする議員たちの動きが活発になるだろう」と述べている。
「はっきりさせておきたい。ジオフェンス令状の数はゼロ件であるべきなのだ」と彼は言っている。
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画像クレジット:TechCrunch/file photo
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(文:Zack Whittaker、翻訳:Hiroshi Iwatani)