米国政府によるテンセント関連企業排除の次期ターゲットはゲーム会社

米国オンラインゲーム業界の大手企業数社が、中国のマルチビリオンダラー企業であるTencent(テンセント)との関係に関する情報提供を求める書簡を米国政府から受け取った。

米国商務省は、同じ中国企業の人気メッセージング・支払いアプリであるWeChatの新規ダウンロードを禁止する動きを見せている一方で、Epic Games(エピックゲームズ)、Riot Games(ライオットゲームズ)をはじめとする米国のゲーム会社に対して、会社のデータセキュリティー方針およびTencentとの関係を尋ねる書簡を送った(Bloomberg記事)。

Bloombergは本件に詳しい筋の情報として「財務省が代表を務める対米外国投資委員会が、これらの企業が米国顧客の個人情報をどのように扱っているかに関する情報を求めている」と報じた。

Tencentは世界最大のゲーム会社であり、ロサンゼルス拠点のRiot Gamesを傘下にもつほか、米国で最も人気のあるバトルロワイヤルゲームであるFortnite(フォートナイト)の開発元のEpic Gamesの株式の40%を保有するなど、複数の米国ゲーム会社に出資している。

この要求は米国政府がTencentに対して米国ゲーム会社の株式を売却させようとする圧力の前兆とも考えられ、中国製ソーシャルメディア・ネットワークTikTokを排除する同様の動きに続くものだ。

TikTok(テックトック)騒動の中心にあるのは、大人気のソーシャルメディア会社がユーザーデータをどのように扱い、そのデータがTikTokの親会社である中国のBytedance(バイトダンス)にどう悪用されれるのかという点だ。そして米国時間9月18日の発表でWilbur Ross(ウィルバー・ロス)商務長官は「TikTokのソーシャルメディアサービスと同じことがTencentのゲーム会社にも当然あてはまる」と強く主張した。

「本日の行動は、我々の国家安全保障を万全に保ち『中国共産党から米国国民を守るためにはどんなことでもする』というトランプ大統領の姿勢を改めて証明するものだ」とロス氏は声明で語った。そして「大統領の指示に従い、中国による米国市民の個人データの不正な収集と戦うと同時に、国家の価値と民主的ルールに基づく規範を推進し、米国の法律と規制を積極的に施行するべく重要な行動を起こした」と続けた。

テクノロジー企業が世界経済産出量におけるシェアを拡大する中、Facebook(フェイスブック)を始めとするソーシャルメディア企業は中国市場への参入を拒否されている。一部には、米国政府によるTikTokの米国資産売却の強要は、米国企業が中国国内市場で経験したのと同じ制約を中国企業に課そうとするものだと見る向きもある。

セキュリティーの懸念は、ネットワーキング・通信テクノロジー開発のHuawei(ファーウェイ)など、中国のさまざまなテクノロジー企業に対する米国の貿易制限の中心になってきた。

同じ議論をゲーム業界に広げることは、トランプ大統領の在任期間中に続いている米中貿易戦争の新たな火種になりかねない。しかしこれは、兵器システムなどを除き、歴史的にテクノロジー分野の大部分で海外競合他社の参入に門戸を開いてきた市場に壁を築こうとする前例のない試みだ。

Tencentの投資先は300社を超えており、前述のようにRiot Gamesは2011年に株式の93%を買収したあと2015年に完全子会社化した。さらに、企業価値170億ドルのゲームテクノロジーデベロッパーであるEpic Games(CNBC記事)や、Call of Dutyなどの開発元、Activision Blizzard(
アクティビジョン・ブリザード)の大株主でもある。

米国内で事業を展開する海外企業の経済活動を制約するトランプ政権によるあらゆる行動が、この国のテクノロジー産業に意図しない影響を与えかねない。

競争の激しいソーシャルメディア分野からTikTokが消えることで、表面上利益を得ると思われる企業の経営トップでさえ米国政府のアプローチを非難している。

米国時間9月18日、Instagram(インスタグラム)CEOのAdam Mosseri(アダム・モセリ)氏は政府の発表をTwitterで非難(未訳記事)した。米自由人権協会(ACLU)も直ちに発表を非難した。同協会の国家安全保障プロジェクトのディレクターであるHina Shamsi(ヒナ・シャムシ)氏は声明で、「この命令は米国で2つのソーシャルメディアプラットフォーム上で重要な取引を行う人々の米国憲法修正第1条で保証された権利を侵害している」と語った。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

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TechCrunch Japan

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