Microsoft(マイクロソフト)の顧客セキュリティ責任者によると、同社が受ける顧客データに関する政府の要求のうち3分の1が、令状の対象者に捜査内容を開示できない秘密保持条項付きで発行されているという。
この数字は、トランプ政権下の米司法省がニューヨークタイムズ紙、ワシントンポスト紙、CNNの記者に機密情報が漏洩した事件の調査の一環として、通話記録や電子メール記録を秘密裏に入手しようとしたことを受け議員たちが立法措置を検討している中、米国時間6月30日の下院司法委員会に先立って行われたMicrosoftのTom Burt(トム・バート)氏による証言で明らかにされた。
バート氏は、このような秘密保持命令は「残念ながらありふれたものになっている」と述べ、Microsoftは「法的または事実的に意味のある分析に基づかない形式的な秘密保持命令」を定期的に受け取っていると語った。
バート氏は証言の中で、2016年以降、Microsoftは毎年2400~3500件、1日に7~10件の秘密保持命令を受け取っていたと述べた。同社は透明性レポートの中で、2020年、米国当局から1万1200件近くの法的命令を受けたと述べている。
一方、米国の裁判所が10年前の2010年に承認した秘密保持条項付き令状の数は全体で2395件であり、バート氏によると、これは過去5年間のいずれかの期間においても、Microsoft1社が1年に受けた秘密保持命令の数よりも少ないという。
「これは、クラウドサービスプロバイダーの1社であるMicrosoftが受けた要求にすぎません。この数字を、データを保持または処理するすべてのテクノロジー企業に掛け合わせれば、政府による秘密監視の乱用の範囲がわかるかもしれません」とバート氏は証言している。「私たちは、秘密保持命令を無理な基準でしか得られないように提案しているわけではありません。意味のある基準であることを求めているだけです」。
秘密保持命令をめぐる論争の多くは、ここ数週間でApple(アップル)、Google(グーグル)、Microsoftに出された秘密保持命令が失効し、トランプ政権下の司法省がデータをホストするハイテク企業にデータを要求することで記録を極秘に入手しようとしていたことを、各社が報道機関に開示できるようになったことに端を発している。
バイデン米大統領は、ジャーナリストの電話や電子メールの記録の収集を中止することを約束するとともに、機密保持に関する条項を一部削除した。しかし議員たちは、この政策を法制化するには法改正が必要であると指摘するだろう。
バート氏は、Microsoftは「秘密保持命令の乱用を防ぐために、できる限りのことをする」と述べている。ソフトウェアとクラウドの巨人は、2016年にも秘密保持命令の合憲性を問うために司法省を提訴した。
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カテゴリー:ネットサービス
タグ:アメリカ、マイクロソフト、プライバシー、透明性
画像クレジット:Jeenah Moon / Getty Images
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(文:Zack Whittaker、翻訳:Aya Nakazato)