米連邦通信委員会の委員がSNS関連の大統領令を非難、我々の専権事項と主張

米連邦通信委員会(FCC)委員のGeoffrey Starks(ジェフリー・スタークス)氏は、ソーシャルメディア企業に対して行動を起こすよう駆り立てる大統領令(未訳記事)を精査し欠陥を見つけ出した。委員長は「この議論にFCCが加わるべきでない十分な理由がいくつもある」と指摘し、「これは我々の先見事項だ」と発言した。

この大統領令は、Facebook(フェイスブック)やYouTube(ユーチューブ)などのプラットフォームへの違法なコンテンツの投稿に関して、法に従いそれらを削除するよう努力する限りは責任を負わなくてよいと保証した米通信品位法230条を標的にしている。

政府内部には、この保護が行き過ぎており、ソーシャルメディア企業による言論の自由の抑圧につながると考える者もいる。トランプ自身も、今回の大統領令の直接のきっかけとなった郵便投票の不正を訴える根拠のない主張にファクトチェックの必要性を警告するラベルが添付されたことで、明らかに抑圧を感じている。

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スタークス氏はこの件に関する意見を、 テクノロジー関連の問題を研究する左派のシンクタンクInformation Technology and Innovation Foundationのインタビューで述べた。彼はFCCの5人の委員の中の一人に過ぎず、FCCはこの大統領令について、いかなる形であっても公式な見解はいまだ示していないが、法律上また手続き上の深刻な問題点を指摘する彼の言葉には重みがある。

「この大統領令は、1つのことをはっきりと正しています。大統領は、FCCにあれこれ指図はできないという点です」と同氏は話す。「我々は独立機関なのです」。

同氏は、法律は完璧ではないという自身の考えを示すことに注意を払っていた。つまり、このような形での法律の変更は、まったく正当化されないということだ。

「230条に関しては、特にトランプ大統領とTwitterが対立するよりもずっと以前から、広く議論されていました。この法律は更新すべきだと考える非常に聡明な人たちも大勢います」と彼は説明した。「しかし、最終的にこの論議は議会に委ねられることになります。大統領は、538名の議員を擁する連邦議会ではなく、委員5名の委員会に圧力をかけるほうがずっと好都合だと気づくでしょうが、それは民主的に選ばれた国民の代表による憲法に基づく機能を出し抜く理由として十分ではなく、ましてや納得の行くものではありません」。

米司法省も関与をはじめ、本日230条の改正ついて独自の提言(米司法省文書)を行った。しかしホワイトハウスと同様、司法にもFCCの責務を直接変更したり、でっち上げたりする権限はない。

一部の議員も、同じように法案の提言を始めているが、署名して法律として成立させようと賛同する者は現れない。

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別の委員であるJessica Rosenworcel(ジェシカ・ローゼンウォーセル)氏も彼の懸念に同調し、大統領令に対する早期の声明でこう表現している。「ソーシャルメディアは不満に思うでしょうが、FCCを大統領の発言監視役にしたところで、答にはなりません」。

FCC230条の「誠意ある」行動の定義を狭めることの難しさと不要性に関する法的制約について細かく説明したあとにスタークス氏は、この大統領令は、その文脈においてまったく意味をなさないと結論付けた。

「米国憲法修正第1条は、ソーシャルメディア企業に投稿内容の検閲を、政府には不可能な方法で自由に行うことを許しています。また修正第1条は、政府が言論に関してそれらの企業に報復することを禁じています」と同氏は話す。「大統領がここで提案していることの非常に多く、大部分が、その中核的概念に沿っておらず、そのためFCCはルール作りにさらに消極的になるのです」。

「最悪のシナリオは、大統領令に何らかの信頼性を与えるという怠慢を許し、私たちの民主主義の機能を圧迫することです。インターネットのサービスプロバイダーには確実な法的支援は与えないと、今後の規制制度に脅しをかけることです」。

とはいえ同氏は、この大統領令は必ずしもトランプ大統領が望む解決策にならなくとも、FCCが何らかの行動を起こすべきだと訴えていることも認識している。

「私は、できるだけ早く申立書を寄こすよう(米国家電気通信情報管理庁に)催促するつもりです。大統領令が出されてから、申立書を送るのに30日以上もかかる理由がわかりません。それを受けて私たちは行動に出ることができます。FCCは申立を精査し、投票を行います」と彼は言う。「そしてもし、結局そうなるのではないかと懸念しているのですが、申立が当局の法的問題によって失敗した場合には、私たちははっきりと声をあげ、この不幸な遠回りを終わりにするべきだと考えています。大統領選挙をいいことに保留にされ、私が恐れているように民間企業が脅かされることにならないよう注意しなければなりません」。

判断の多くは委員長であるAjit Pai(アジード・パイ)氏に委ねられることになる。彼は一貫して、政権の意向に沿ってきた。そしてもし、大統領支持者のCarr(カー)委員の熱意(FCC文書)が何かしらの傾向を示しているとしたら、大統領の「指導の求め」に連邦通信委員会の共和党系委員が喜んで対応することになる。

これまでのところ、大統領令に関連するFCCの行動について公式な発表はないが、米国家電気通信情報管理庁が迅速に動けば、早ければ来月の審査会で話が聞けるだろう。

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画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(翻訳:金井哲夫)

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TechCrunch Japan

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