約10万ページの法律書籍を自由に横断検索・閲覧できる「Legal Library」が正式公開

法律書籍をデータベース化することによって、Googleで検索するように書籍の中身まで自由に検索でれば便利ではないか——。本日12月9日に正式ローンチを迎えた「Legal Library」はそんなアイデアから生まれたプロダクトだ。

同サービスを手がけるLegal Technologyは弁護士である二木康晴氏が創業したスタートアップ。弁護士や法務担当者などが日々行なっているリーガルリサーチの負担を削減する仕組みとして「法律版の『日経テレコン』や『SPEEDA』」という構想にたどり着き、プロダクトの開発を進めてきた。

今年の7月には経済産業省、厚生労働省、公正取引委員会などの官公庁の資料を一部データベース化したベータ版を先行リリース。本日よりそこに約10万ページ分の法律専⾨書を加える形で、正式版として本格的に提供を始める。

冒頭でも触れた通りLegal Libraryは特定のキーワードなどに基づいて複数の法律専門書籍や官公庁の市資料を横断検索できるリーガルリサーチツールだ。

たとえば「民法 改正」と入力して検索ボタンを押すと、タイトルや目次はもちろん、本文内に該当する記述が含まれる書籍を簡単に見つけることが可能。本日時点では下記の出版社とタッグを組み、総計約10万ページの法律専⾨書(約数百冊)や官公庁の資料が検索・閲覧の対象となる。

  • 有斐閣
  • 中央経済社
  • ⽇本加除出版
  • 現代⼈⽂社
  • きんざい
  • ⺠事法研究会

二木氏によると書籍についてはリーガルリサーチの現場で特に利用頻度が多いようなものを中心に、信頼できる専門書をリストアップして出版社の協力を得ながらデータベース化したそう。昨今増えてきているリーガルテックプロダクトの中でも「弁護士に真っ向から売りにいくプロダクト」になるため、弁護士にとって馴染みがある書籍をクラウド上で便利に使える点を訴求していきたいという。

現在は書籍を横断検索・閲覧できるほか、「弁護士は同じページを何度も見返すことが多い」(二木氏)ことを受け一覧画面からすぐに該当箇所に飛べるメモ機能を搭載。各書籍の奥付を簡単に印刷できる機能や、気になる本を出版社のECサイトで買える購入機能も備える。

年明けには、従来本を見ながら手打ちしていた「書籍内に記載されている契約書のひな形や書式」をWord形式で出力できる仕組みなども順次追加していく予定だ。

メモ機能

また新しい取り組みとして今回から「Research Concierge」を始めた。これはいわゆるサポートデスク的な役割に近く、自分が調べたいトピックについてどの本が詳しく書かれているかを質問できるサービス。ベータ版を法律事務所や⼤企業など200以上のアカウントで使ってもらう中で、特に弁護士以外のユーザーはリサーチに苦戦してしまうケースもあったため、その課題を解決する仕組みとして取り入れたそうだ。

まずはLegal Technologyのメンバーが人力でQ&Aのデータセットを蓄積していきつつ、ゆくゆくは似ている質問を機械的に判断するなどして、多くの人が気になる回答にすばやくたどり着けるような機能も作っていきたいという。

「リサーチについては日本中で同じことを調べたいという人がたくさんいるはず。1000人が同じことをやっているとすると、トータルでものすごい時間がかかっていることになる。自分たちはデータベースを保有しているので効率的に調べることが可能。得意な人が1回調べて、その結果をみんなに共有できるようになればリサーチ業務がもっと楽になる」(二木氏)

1月にも紹介した通りリーガルリサーチはまだまだアナログの要素が多い。弁護士やパラリーガルは何か調べたい事項がある場合、弁護士会の図書館や事務所内の図書室などで関連する書籍を手当たり次第チェックしているのが現状だ。

オンライン上に法律書籍のデータベースを作ることで検索の効率が上がるだけでなく、外出時や出張時など手元に書籍がないような時でもすぐにリサーチができるようになる。

「日本には約1.7万の法律事務所が存在し、そのうち1万は1人の弁護士が運営する個人事務所だと言われている。個人事務所であっても結構な数の案件を担当していて、調べ物に手が回らないという状況はよくある。事実行為を調べる部分は誰がやっても結果が変わらないのでLegal Libraryに丸投げして、それ以外の工程に多くの時間を費やせるような環境を整えたい。そうすることで弁護士の雑務的な作業が減るだけでなく、日本全体の法務の質が上がるようなプロダクトを目指す」(二木氏)

Legal Libraryは月額5200円からの定額制サービスになるが、2020年1⽉31⽇まではフリートライアル期間として無料で利用することが可能だ。

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。