置き配バッグ「OKIPPA」を展開するYperは4月20日、楽天の配送サービス「Rakuten EXPRESS」における正式な配送方法としてOKIPPAが採用されたことを明らかにした。
Rakuten EXPRESSでは以前から不在再配達を減らす仕組みとして置き配に対応済みで、4月22日からは置き配を選んだ際の荷物置き場の1つとしてドアノブに設置したOKIPPAを指定できるようになる。YperによるとEC事業者が配送先選択肢にOKIPPAを取り入れた事例は今回が初めてだ。
またこの取り組みと合わせて、楽天オリジナル柄のOKIPPAを抽選で1万名に無料配布することも発表している。
Rakuten EXPRESSの受け取り場所としてOKIPPAを指定可能に
OKIPPAはこれまでも何度か紹介しているように、手軽に置き配を利用できる“簡易的な宅配ボックス”だ。手のひらサイズに折りたたんだOKIPPAを玄関のドアノブに吊り下げておくだけで、不在中や在宅時に非対面で荷物を受け取れる。既存の宅配ボックスと違い、常設していても玄関前のスペースを取らないのが特徴だ。
盗難や個人情報漏洩対策として2種類の鍵(ドアノブ専用ロックとシリンダー式南京錠の内鍵)を採用しているほか、バッグと連携するモバイルアプリを通じて「置き配保険」も提供。同アプリには配送状況の確認機能や到着時の通知機能なども搭載されている。
OKIPPAでは2018年9月の販売開始から公式サイトを含む複数のECサイトで個人向けに販売する傍ら、日本郵便を含む複数の事業者と連携して無料で各地に配布する取り組みを進めてきた。その結果として現在は全国13万世帯以上で活用されているという。
Yperで代表取締役を務める内山智晴氏は以前よりOKIPPAを通じて再配達を削減するためには、バッグの普及とともに「OKIPPA便のような形で、ECサイトの配送方法の選択肢の1つに採用してもらうことが重要だ」と話していた。そういった意味では今回の取り組みは同社にとって非常に大きな一歩となるだろう。
Rakuten EXPRESSは「楽天24」などの直販店舗や「楽天ブックス」、「Rakuten Fashion」、「楽天ビック」の商品に加え、「楽天スーパーロジスティクス」で担う「楽天市場」の出店店舗の一部商品を対象に36都道府県で配送サービスを展開している。
現時点では楽天市場で購入した全ての商品が該当するわけではないけれど、公式の置き配場所にOKIPPAが加わり、Rakuten EXPRESSの対応商品についてはOKIPPAを指定して受け取れるようになる。
「置き配を普及させていく上では配送会社が置き配に対応するだけでは十分ではない。特に規模の大きいEC事業者の協力が不可欠であり、今回の取り組みはOKIPPAにとっても大きな転換点になる。今後もこのような取り組みを加速させていくことで、再配達の削減や荷物を受け取るユーザーの利便性向上に繋げていきたい」(内山氏)
Rakuten EXPRESSとの連携は、国土交通省が2019年3月から1年間に渡り実施してきた「置き配検討会」がきっかけだ。Yperと楽天は共に検討会の構成員であり、さらなる置き配推進を目指しタッグを組むことになったという。
冒頭でも触れた通り、両社では楽天オリジナル柄のOKIPPAの配布キャンペーンも行う計画。本日から5月19日にかけて第1回抽選を実施し、2回に分けて合計1万個のバッグを配布する。
2020年は置き配が一気に広がる可能性も
再配達を削減する施策として近年注目を集め始めていた置き配が、今年は一気に普及していくかもしれない。楽天に限らず大手EC事業者で置き配関連の取り組みが加速している状況で、3月にAmazonが30都道府県の一部地域を対象に「玄関への置き配」をデフォルトの配送方法にする取り組みを始めたことは話題を呼んだ。
マンションの玄関前など共用スペースで置き配を利用する(荷物を置く)ことが消防法上の問題にならないのかといった議論も一部ではあったが、3月31日に実施された第五回置き配検討会では「共用部分に、宅配物・生協配送・牛乳配達など、避難の支障とならない少量または小規模の私物を暫定的に置く場合は、長期放置や大量・乱雑な放置等を除き、社会通念上、法的問題にはならないと考えられる」との見解も発表された。これも置き配を普及させたい事業者にとっては追い風になるだろう。
加えて直近では新型コロナウイルスの影響で、デリバリーなども含めて在宅時でも非対面で荷物を受け取れる選択肢が増えている。こうした取り組みによって置き配の認知度や利用度が高まる可能性も十分にありそうだ。
内山氏によるとYperでは昨年約12万個のOKIPPAを配布済みで、月あたりの荷物の処理個数はピーク時で60万件ほど(サンプリング調査からYperが推計)。ちなみにコンビニの同数値は推定で約320万個(Yperがコンビニへのヒアリングをもとに試算したもの)で、OKIPPAの5倍強だ。
あくまで計算上ではあるけれど、OKIPPAが63万個以上普及した場合にはコンビニと同程度の荷物を処理できるようになるとのこと。Yperでもまずはこの数値を1つのマイルストーンに設定しているという。
「今月末にも15万個を突破する予定だが、まだまだしばらくは普及フェーズ。まずはマイルストーンとして63万個、その後は昨年度からの目標である100万世帯への普及を目指す」(内山氏)
先日からはファッションサブスクの「メチャカリ」と共同で、OKIPPAを活用して衣類の返送を非対面集荷で実施できる実証実験も始めた。事業者との連携によるバッグの配布やEC事業者との連携と並行して、バッグ自体の用途を広げる取り組みも進めることでユーザーの利便性を高め、さらなる普及を目指す計画だ。