ライナフのオートロックマンション向け「置き配」とヤマト運輸がAPI連携、配送スタッフのセキュアな入館・非対面受け取り実現

AIやIoTで不動産のデジタルリノベーションを実現するライナフは3月28日、オートロックマンション向け置き配対応化サービス「置き配 with Linough」について、ヤマト運輸による複数デジタルキーの一括管理システム「マルチデジタルキープラットフォーム」を連携開始させたと発表した。これにより、オートロックマンションでも配送スタッフはセキュアな入館が可能になり、玄関先といった場所への置き配を依頼できるようになる。

対象は、ヤマト運輸のEC専用配送商品「EAZY」を利用している配送。物件(開始時)は、エントランス用スマートロック「NinjaEntrance」を設置している、東京都の練馬区・豊島区・板橋区一部のオートロック付マンションとなっている。今後は対象マンションを増加させ、NinjaEntranceと連携可能な事業者とのパートナー連携も拡大するという。

具体的な連携内容は、ライナフのNinjaEntranceとヤマト運輸のマルチデジタルキープラットフォームをAPIでシステム連携させたというもの。入居者によるエントランスオートロック解除の承諾を得ていることが前提で、配送スタッフ専用のウェブアプリケーションから、オートロックの解錠を可能にする。また暗号化通信を用いることで、配送スタッフはセキュアな入館が可能になる。

入居者は、ヤマト運輸から届いた荷物のお届け予定通知(電子メールやLINEなど)に記載されているリンクから、日時・場所の変更ページにアクセスし置き配の場所を選択。エントランスのオートロックの解錠の承諾しておくと(この項目はオートロック解錠物件居住者のみに表示)、自宅の玄関ドア前などで非対面での荷物受け取りが可能となる。

なお、一部のオンラインショップでは、注文時でも受け取り方法を置き配に設定可能だが、オートロックの解錠には、お届け予定通知から置き配の設定と同意が必要となる。また「置き配」をする場所は、玄関ドア前、自宅宅配ボックス、ガスメーターボックス、自転車から選択可能。

2014年11月設立のライナフは、AIとIoTの最新技術により不動産管理ソリューション「ライナフスマートサービス」を展開。2021年3月より、大手ECサイト提供のオートロック解錠デバイスとNinjaEntranceを活用し、オートロックマンションでの安全な置き配普及と、そのサービス展開を行なう置き配 with Linoughを提供している。

置き配バッグ「OKIPPA」がRakuten EXPRESSの配送方法に採用、EC事業者とのタッグで再配達削減へ

置き配バッグ「OKIPPA」を展開するYperは4月20日、楽天の配送サービス「Rakuten EXPRESS」における正式な配送方法としてOKIPPAが採用されたことを明らかにした。

Rakuten EXPRESSでは以前から不在再配達を減らす仕組みとして置き配に対応済みで、4月22日からは置き配を選んだ際の荷物置き場の1つとしてドアノブに設置したOKIPPAを指定できるようになる。YperによるとEC事業者が配送先選択肢にOKIPPAを取り入れた事例は今回が初めてだ。

またこの取り組みと合わせて、楽天オリジナル柄のOKIPPAを抽選で1万名に無料配布することも発表している。

Rakuten EXPRESSの受け取り場所としてOKIPPAを指定可能に

OKIPPAはこれまでも何度か紹介しているように、手軽に置き配を利用できる“簡易的な宅配ボックス”だ。手のひらサイズに折りたたんだOKIPPAを玄関のドアノブに吊り下げておくだけで、不在中や在宅時に非対面で荷物を受け取れる。既存の宅配ボックスと違い、常設していても玄関前のスペースを取らないのが特徴だ。

盗難や個人情報漏洩対策として2種類の鍵(ドアノブ専用ロックとシリンダー式南京錠の内鍵)を採用しているほか、バッグと連携するモバイルアプリを通じて「置き配保険」も提供。同アプリには配送状況の確認機能や到着時の通知機能なども搭載されている。

OKIPPAでは2018年9月の販売開始から公式サイトを含む複数のECサイトで個人向けに販売する傍ら、日本郵便を含む複数の事業者と連携して無料で各地に配布する取り組みを進めてきた。その結果として現在は全国13万世帯以上で活用されているという。

Yperで代表取締役を務める内山智晴氏は以前よりOKIPPAを通じて再配達を削減するためには、バッグの普及とともに「OKIPPA便のような形で、ECサイトの配送方法の選択肢の1つに採用してもらうことが重要だ」と話していた。そういった意味では今回の取り組みは同社にとって非常に大きな一歩となるだろう。

Rakuten EXPRESSは「楽天24」などの直販店舗や「楽天ブックス」、「Rakuten Fashion」、「楽天ビック」の商品に加え、「楽天スーパーロジスティクス」で担う「楽天市場」の出店店舗の一部商品を対象に36都道府県で配送サービスを展開している。

現時点では楽天市場で購入した全ての商品が該当するわけではないけれど、公式の置き配場所にOKIPPAが加わり、Rakuten EXPRESSの対応商品についてはOKIPPAを指定して受け取れるようになる。

「置き配を普及させていく上では配送会社が置き配に対応するだけでは十分ではない。特に規模の大きいEC事業者の協力が不可欠であり、今回の取り組みはOKIPPAにとっても大きな転換点になる。今後もこのような取り組みを加速させていくことで、再配達の削減や荷物を受け取るユーザーの利便性向上に繋げていきたい」(内山氏)

Rakuten EXPRESSとの連携は、国土交通省が2019年3月から1年間に渡り実施してきた「置き配検討会」がきっかけだ。Yperと楽天は共に検討会の構成員であり、さらなる置き配推進を目指しタッグを組むことになったという。

冒頭でも触れた通り、両社では楽天オリジナル柄のOKIPPAの配布キャンペーンも行う計画。本日から5月19日にかけて第1回抽選を実施し、2回に分けて合計1万個のバッグを配布する。

2020年は置き配が一気に広がる可能性も

再配達を削減する施策として近年注目を集め始めていた置き配が、今年は一気に普及していくかもしれない。楽天に限らず大手EC事業者で置き配関連の取り組みが加速している状況で、3月にAmazonが30都道府県の一部地域を対象に「玄関への置き配」をデフォルトの配送方法にする取り組みを始めたことは話題を呼んだ。

マンションの玄関前など共用スペースで置き配を利用する(荷物を置く)ことが消防法上の問題にならないのかといった議論も一部ではあったが、3月31日に実施された第五回置き配検討会では「共用部分に、宅配物・生協配送・牛乳配達など、避難の支障とならない少量または小規模の私物を暫定的に置く場合は、長期放置や大量・乱雑な放置等を除き、社会通念上、法的問題にはならないと考えられる」との見解も発表された。これも置き配を普及させたい事業者にとっては追い風になるだろう。

加えて直近では新型コロナウイルスの影響で、デリバリーなども含めて在宅時でも非対面で荷物を受け取れる選択肢が増えている。こうした取り組みによって置き配の認知度や利用度が高まる可能性も十分にありそうだ。

内山氏によるとYperでは昨年約12万個のOKIPPAを配布済みで、月あたりの荷物の処理個数はピーク時で60万件ほど(サンプリング調査からYperが推計)。ちなみにコンビニの同数値は推定で約320万個(Yperがコンビニへのヒアリングをもとに試算したもの)で、OKIPPAの5倍強だ。

あくまで計算上ではあるけれど、OKIPPAが63万個以上普及した場合にはコンビニと同程度の荷物を処理できるようになるとのこと。Yperでもまずはこの数値を1つのマイルストーンに設定しているという。

「今月末にも15万個を突破する予定だが、まだまだしばらくは普及フェーズ。まずはマイルストーンとして63万個、その後は昨年度からの目標である100万世帯への普及を目指す」(内山氏)

先日からはファッションサブスクの「メチャカリ」と共同で、OKIPPAを活用して衣類の返送を非対面集荷で実施できる実証実験も始めた。事業者との連携によるバッグの配布やEC事業者との連携と並行して、バッグ自体の用途を広げる取り組みも進めることでユーザーの利便性を高め、さらなる普及を目指す計画だ。

日本郵便が置き配バッグ「OKIPPA」を10万個無料配布へ

スマホアプリと連動した置き配バッグ「OKIPPA」を展開するYperは6月24日、日本郵便が再配達の削減を目的としてOKIPPAを10万世帯に無料配布することを明らかにした。配布先は毎週1回抽選で決める予定で、本日から8月26日まで専用サイトで募集を行う。

これまでも何度か紹介しているOKIPPAは、手軽に置き配を利用できる“簡易的な宅配ボックス”のようなバッグだ。面倒な設置工事も不要で、玄関口に専用ロックで固定しておくだけ。普段は手のひらサイズに折りたためるので、限られたスペースでも簡単に宅配ボックス環境を構築することが可能だ。

専用ロックと内鍵が付属していて、宅配物を玄関口にダンボールのまま置く通常の置き配に比べて盗難のリスクを軽減できるのも特徴。プレミアムプランでは東京海上日動と共同開発した置き配保険も提供する。

バッグと連動したスマホアプリを併用すれば、荷物が預入されたタイミングでスマホに通知が届く仕組みだ。

OKIPPAは2018年9月中旬の発売開始から現在までに全国1万2千世帯以上で導入済み。昨年12月には日本郵便と共同で東京都杉並区の1000世帯にバッグを無料配布し、再配達率への影響を調査する実証実験を実施している。

結果はこちらの記事にて取り上げた通り、対象の世帯数や期間は限定的ではあるものの最大で再配達率を61%削減することに繋がった。今回の取り組みは、ユーザーの荷物待ちストレスや再配達ストレスを解消しつつ、配送員の負担も減らす仕組みとして「置き配」をより多くのユーザーに体験してもらう目的もあるようだ。

Yperによると本日OKIPPAが日本郵便から正式に荷物受け取り容器として公認されたとのこと。これまで宅配ボックスを利用する際に必要とされていた利用申請の提出が不要となり、OKIPPAを受け取った日から利用できるようになるという。

このことからも再配達率を削減するべく、日本郵便が本気で置き配を普及させようとしていると言えそうだ。

今回の日本郵便との取り組みは、OKIPPAを通じて置き配をスタンダードな選択肢とすることを目指しているYperにとっても大きい。同社の代表取締役を務める内山智晴氏は以前「100万個設置することが今年の目標」と話していたが、一気に10万個を配布することでその目標にも一歩近づく。

「厳密に各社の数字が公表されているわけではないので、あくまで業界内で聞いている範囲だが、設置数が10万個を超えてくると個人用の宅配boxとしては普及個数が国内トップクラスになる。OKIPPAを通じて置き配への抵抗やハードルを下げることで、(OKIPPA以外も含めて)簡易宅配boxをインフラとして広げていきたい」(内山氏)

Yperは2017年8月の創業。同社は昨年ニッセイ・キャピタルから5000万円、今年4月にも同じくニッセイ・キャピタルとみずほキャピタルから3.5億円の資金調達を実施している。

“置き配”は再配達率を減らす救世主になるか、置き配バッグ「OKIPPA」が3.5億円調達

スマホアプリ連動型の置き配バッグ「OKIPPA」を展開するYperは4月24日、ニッセイ・キャピタルとみずほキャピタルを引受先とした第三者割当増資により3億5000万円を調達したことを明らかにした。

同社にとっては昨年ニッセイキャピタルから5000万円を調達して以来となる、シリーズAラウンドという位置付け。調達した資金を活用してバッグ量産体制の整備と人材採用、経営体制の強化を進めながら国内における再配達率の改善を目指していく。

アプリ連動型の「置き配バッグ」を展開

過去に何度か紹介しているけれど、OKIPPAは狭いスペースでも手軽に活用できる“簡易的な宅配ボックス”のような置き配バッグだ。普段は手のひらサイズに折りたたむことができ、設置するための工事も不要。玄関口に収納したバッグをかけておけば置き配を利用できる。

バッグの最大容量は57リットルで耐荷重は13kg。拡げると割と大きな荷物も入れることができ、撥水加工も施されている。盗難が心配なユーザー向けに、アプリのプレミアムプランとして東京海上日動と共同開発した置き配保険も展開済みだ。

またバッグ以外のプロダクトとして、YperではOKIPPAと連動したスマホアプリを手がけている。

このアプリではバッグに荷物が預入された際に通知が届く仕組みになっているほか、ヤマト運輸や日本郵便など配送会社5社に再配達依頼ができる機能、Amazonや楽天を含むECサイトで注文した商品の配送状況を追跡できる機能などを搭載。バッグを持っていないユーザーでも荷物管理用のアプリとして単体で使うことが可能だ。

今回Yperでは同様の特徴を持つ「荷物管理/荷物管理Lite」を吸収合併し、「荷物管理OKIPPA」としてアプリのリニューアルを実施。荷物管理/荷物管理Liteを開発していたチームもYperの開発体制に加わり、さらなる機能拡充と利用者数の拡大を目指していく。

なおOKIPPAの概要や開発背景については以前詳しく紹介しているので、そちらも参考にして頂ければと思う。

複数社が置き配サービス開始、置き配検討会もスタート

「この1年だけでも置き配を取り巻く環境が大きく変わってきた」——。Yperで代表取締役を務める内山智晴氏は2018年から2019年にかけての置き配市場についてそう話す。

同社では最初のプロトタイプを翌年2月に開発した後、4月にクラウドファンディングでプロジェクトを立ち上げ、9月下旬から一般販売をスタート。現在OKIPPAバッグの累計販売数は全国で1万個を突破しているという。

昨年4月にMakuakeで実施したクラウドファンディングプロジェクトでは、目標を大きく上回り、1800人以上が参加(2000個以上が売約)した

開発当初に置き配サービスをやっていたのはYperとファンケルぐらいだったそうだが、そこから昨年6月に楽天が自社サービス内で置き配に対応。今年2月にはAmazonが試験的に一部エリアで置き配を指定できるようにしたほか、日本郵便も3月からサービスを始めた。

置き配に注目が集まる背景にあるのは再配達率の高さだ。国土交通省の発表では2018年(平成30年)4月期の宅配便再配達率は約15.0%。この数値を2020年度には13%程度まで削減することを目標に掲げている。

近年この課題を解決する有力なソリューションとして注目を集めてきたのが「宅配ロッカー(宅配ボックス)」だったわけだけれど、現時点で十分に普及しているとは言えず、これのみで再配達を劇的に減らすのは難しい。そこで新たな打開策として置き配への関心が高まっているわけだ。

それを象徴するように、3月には国交省と経産省が再配達削減検討に向けて「置き配検討会」を新設。検討会の委員名簿にはアスクルやアマゾンジャパン、日本郵便、楽天、ZOZOなどと並んでYperの名前も含まれている。

「今まではそもそも『置き配』とは何か、明確な定義やルールもなかった。国としてその環境の整備を進めていく検討会に委員として参加できるのは大きい。自分たちとしては当初からOKIPPAを『置き配のインフラ』にすることを目指してやってきた。置き配自体が国主導でスタンダードなものになって行けば、配送会社も積極的に検討しやすくなるし、OKIPPAをどのように活用するか議論もしやすくなる」(内山氏)

ECヘビーユーザーをターゲットにまずは100万個設置へ

Yperでは昨年12月に日本郵便と共同で、OKIPPAによる再配達削減の効果を検証するための実証実験を実施した。この実証実験は東京都杉並区の1000世帯にOKIPPAを無料配布し、約1ヶ月の期間に渡って再配達率への影響を調査するというものだ。

期間内に約6000個の宅配物が配送され、参加者の不在率は約51%だったそう。同実験ではこの51%に当たる約3000個の宅配物を「潜在再配達個数」とし、その内OKIPPAを活用することで受け取れた荷物(OKIPPA受取個数)が占める割合を「再配達削減率」として算出した。

そのロジックに基づくと、週ごとの結果では最大で再配達率を61%削減。トータルではOKIPPAを通じて1744個の荷物を受け取ったことになり、約57%の削減に繋がった。

「OKIPPAのメインターゲットはECサイトで週1回以上買い物をするようなヘビーユーザーで、かつ自宅に宅配ボックスが内容な人たち。彼ら彼女らは一般の消費者に比べて年間で3~4倍ほど荷物を受け取る機会が多く、その人たちに置き配の選択肢を提供できれば再配達率を6割以上削減することも可能だと考えている」(内山氏)

そのためにはそもそもバッグがしっかりと行き届いて使われる状態になっている必要があるし、配送員への認知の拡大なども含めてインフラとして整備される必要もある。内山氏によるとコアのターゲット層がだいたい200万人ほど全国にいると試算しているそうで、当面はその約半数に当たる100万人への提供を目標にしていくという。

現在の1万個から100万個はなかなか簡単ではないようにも思えるが、バッグの普及に関してはすでに複数の施策を始めているようだ。

たとえば消費者に直接販売するだけでなく、事業者と組んでエンドユーザーに無料配布する取り組みを実施。東京電力グループのPinTや建設会社のオープンハウス・アーキテクト経由で、それぞれのサービス利用者などに無料でOKIPPAを提供するB2B2Cモデルにも力を入れている(事業者がバッグを購入しユーザーに提供する仕組み)。

またOKIPPAに限らず置き配サービスの障壁となるオートロックマンション向けにも、それに対応したシステムを開発中だ。

「ドライバーは減っていっている一方で、宅配物の数は増えている。特にB2Cの宅配物の増加がネックで、そこにどうやって対応していくのかは大きな社会課題だ。配送の無駄をなくし配送効率をあげることは不可欠で、置き配は日本の治安の良さを活かした配送方法としてインフラ化できる可能性がある」(内山氏)

OKIPPAバッグが普及すればECサイトなどでOKIPPAの配送プランを作り、コンビニの宅配便取次手数料のようなモデルでのマネタイズも検討していきたいとのこと。今回調達した資金を用いて、月産数十万個単位で生産可能な量産体制を整備し、最低限のインフラを整えるべく事業を加速させるという。

「再配達は誰にとっても無駄なもの。ユーザーにとってはストレスだし、配送会社にとっても負担が大きい。それにも関わらず今はそこに対してコストを払っている。OKIPPAを通じて再配達を減らすことで、誰も損しない形で、サービスとしてもしっかり成長できるような仕組みを目指したい」(内山氏)

Yperのメンバー。左から3人目が代表取締役の内山智晴氏