自分の洋服で“おしゃれな誰か”が着回し提案、「クローゼット」が1.4億円調達

STANDING OVATIONの荻田芳宏社長

「洋服はたくさん持っているのに着ていく服がない」というのは、女性にありがちな悩みらしい。そのせいか、女性ファッション誌は毎号のように「着回し」特集を組んでいる。

ファッションに興味が薄い男性読者のために説明しておくと、着回しとは、1つの洋服を何通りにも着ることだ。彼女たちが愛読する雑誌には「着回しコーデ1週間」「着回し大作戦」のような見出しが踊るが、2014年1月に創業したSTANDING OVATIONが手がける「XZ(クローゼット)」は、アプリで女性の「着回し力不足」を解決しようとしている。

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おしゃれな誰かが着回し提案

スマホで手持ちのアイテムを撮影してネット上の「ソーシャルクローゼット」に投稿すると、おしゃれな誰かが新しい着回しアイデアを提案してくれるアプリ。誰かが⾃分のアイテムを使ってコーディネートを作成するとお知らせが届く。

自分や他のユーザーの「クローゼット」からアイテムを選んでコーディネートが作れる

自分や他のユーザーの「クローゼット」からアイテムを選んでコーディネートが作れる

新品ではなく、自分がすでに持っているアイテムで、自分でも気づかなかった新しい着回しアイデアを発見できるのが特徴だ。例えば、「このトップスはスカートしか合わせたことがなかったけどパンツとも合わせられるんだ!」みたいな気付きがある。

誰かが⾃分のアイテムを使ってコーデを作成するとお知らせが届く様子

誰かが⾃分のアイテムを使ってコーデを作成するとお知らせが届く様子

昨年9月にiPhoneとAndroid向けのアプリを公開し、ダウンロード数は約5万2000、ユーザーの平均年齢は25歳。これまでに投稿されたアイテムは27万点に上り、平日でも毎日1000点、土日になると1日に2000点近く増えている。

着回しアイデア提案数は5万5000件を超え、STANDING OVATIONの荻田芳宏社長は「クックパッドで料理のレパートリーが広がるように、クローゼットで着回しバリエーションが増えている」と手応えを感じている。

アイテムを投稿するほど着回しアイデアが埋もれない仕組みに

その一方で、着回しアイデアが埋もれてしまう課題もある。

現在は、自分が投稿したアイテムが他人に使われた場合のみ、着回し提案のフィードバックが得られる仕組み。言い換えれば、他のユーザーが自分と同じアイテムを投稿してフィードバックを得たとしても、自分のもとには届かない仕様だ。こうした課題を荻田氏は認識していて、8月にアプリを大幅リニューアルする。

リニューアル後は、同じアイテムを投稿したすべてのユーザーに着回し提案が届く。「青いスカート」や「白いスニーカー」のように、自分が投稿したアイテムと似たアイテムに着回し提案が寄せられた場合にも、お知らせが届くようにする。アイテムを投稿するほど新たな着回しアイデアに出会えるようになれば、コミュニティがさらに活性化しそうだ。

アパレルメーカーへの課金も視野

9月にはスマートフォン向けサイトを公開し、着回し力がアップするような雑誌っぽい記事を掲載する。新たなユーザーを獲得するとともに、ネイティブアドでの収益を見込む。

自分の服に合うアイテムを不特定多数の人に聞けるQ&Aコーナーも設け、「気に入っているジャケットに合うアイテムを教えてください」のような質問を写真付きで投稿すると、おしゃれな誰かが提案してくれる仕組みを作る。

ファッション誌を意識した着回し提案記事(左)とQ&Aコーナー(右)

ファッション誌を意識した着回し提案記事(左)とQ&Aコーナー(右)

将来的にはアパレルメーカーへの課金も視野に入れている。

例えば、Q&Aにはアパレルメーカーが回答できるようになっているので、押し売り感なく自社商品を提案したり、良質な回答をすることでファンを増やせるかもしれない。現在はアパレルメーカーと交渉中で、クローゼット経由で販売した金額の一部を手数料として徴収するビジネスモデルを検討している。

「ファッションのクラウド化」は成立するか

競合に挙げられることが多い国内のファッション系サービスとしては、500万人が利用するコーディネート検索アプリ「WEAR」や、200万人が利用するコーディネート作成アプリ「IQON」がある。これらについて荻田氏は「どちらもコーディネートの参考にはなるが、着回しの解決にはつながらない」と見ていて、本人のセンス任せになってしまうと語る。

これに対して、クローゼットはおしゃれな人の知恵を集合知化して、自分だけでは気づかなかった意外な着回しを発見できるのが強みだとアピールする。荻田氏は「ファッションのクラウド化」をテーマに掲げるが、その成否は、クローゼットの最大の価値である着回し提案の回数が増え、その結果、アイテム登録数も増える好循環が生まれるかどうかにかかっていそうだ。

7月8日にはgumiベンチャーズ、DBJキャピタル、アイスタイルキャピタル、個人投資家を引受先とする、総額1億4000万円の第三者割当増資を発表。調達した資金は8月のアプリリニューアル、9月のスマホウェブ版の開発にあてる。

STANDING OVATIONは昨年11月に東京・渋谷で開催した「TechCrunch Tokyo 2014」のスタートアップバトルのファイナリストでもある。

STANDING OVATIONの荻田芳宏社長

STANDING OVATIONの荻田芳宏社長

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。