自動運転車が渋滞税の導入を加速する

自動運転車は、近い将来、町の通りのどこでも見られるものになるだろう。しかし、そうなる前に考えておかなければならない。自動運転車によって町中を素早く移動できるようになるのか、逆に渋滞がひどくなるのか?

自動運転だろうが、人が運転しようが、車は車だ。バス、路面電車、あるいは電車といった乗り物よりも、かなり多くのスペースを占有する。だから、そのコストが適切なものかどうか、はっきりさせておく必要がある。ライドシェアの普及のせいもあって、すでに多くの都市で交通量は増加の一途をたどっている。もしUberが自動運転車を本格的に導入すれば、より安く車を呼ぶことができるようになり、競争はさらに激しくなって、潜在的な道路の負荷は重くなる。

カリフォルニア大学サンタクルーズ校のAdam Millard-Ball教授がJournal of Transportation Policyに発表した研究では、自動運転車によって交通量が劇的に増えるという説得力のある主張が展開されている。Millard-Ball教授によれば、多くの人がハンドルから手を離して、ただ座っていればよくなることで、道路を走るの車の数は飛躍的に増加すると予測できるという。

さらに、使われていないときでも、自動運転車は必ずどこかに行く必要がある。これには3つの選択肢がある。家に帰るか、どこかに駐車するか、ぐるぐる回っているか、のどれかだ。ほとんどの場合、自動運転車は、料金を払って駐車するよりは、いつまでも通りを周回する方を選ぶだろう。

ライドシェアの普及が、渋滞税導入の検討を必然的なものにする。近い将来、多くの自動運転車が目的もなく町中を周回するようになる可能性を考えればなおさらだ。

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既存の渋滞税の徴収方法には、いろいろな考え方がある。最も一般的な方法は、都市の中心部、または町の中の特定の領域を指定して、その領域に入った車に対して定額、または変動性の料金を課すというもの。このシステムでは、ゲートに付いたカメラシステムによってナンバープレートを読み取り、車の通過を監視する。車両に取り付けた発信機を利用するタイプのものもある。いずれにせよ、渋滞税システムは、どれも道路の使用に対して料金を課すことになる。

特に、都市部全域での交通量を把握する変動性の価格設定は、自動運転車に対して、これまでとは異なった意思決定を促す可能性もある。乗客を拾うために、空車で通りを走り続けるのではなく、町の中心部せよ、郊外にせよ、駐車する方を選ぶようになるかもしれない。そうなれば、交通量を減らして渋滞を緩和する効果が生まれる。

変動性の価格設定では、交通量が増えるにつれて価格を高くする。それによって人間が運転する車も、将来の自動運転車も、できるだけ道路から追い出して、車の通行をよりスムーズにしようというわけだ。米国では、高速道路で変動性の料金徴収方法が採用されているのをよく目にするだろう。しかし、シンガポールやストックホルムで導入されている渋滞税システムでは、混雑する領域全体に対して変動性の料金を適用している。

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渋滞税を導入すれば、車両の使用量増加を抑える直接的な効果が期待できる。また自動運転車についても、それらが及ぼす影響に相応の金額を確実に徴収することができる。ニューヨーク市は2021年から、渋滞税を徴収する領域を導入することになっている。60番街から南のマンハッタンに入るすべての運転手が対象だ。最終的なシステムはまだ決定されていないが、専門家によれば、年間10億ドル(約1115億円)の徴収が見込まれ、公共交通機関の拡充に役立てられるという。

大西洋を挟んだロンドンでは、2003年以降、中心部の8平方マイル(約20平方キロメートル)の領域で、現在約15ドル(約1670円)の渋滞税を徴収する方針が採用されている。2002年と2014年の比較では、この中心部に入る自家用車は39%減少した。しかし、Uberや、他の企業によって導入されたライドシェアのせいで、車の数は急激に増え始め、混雑も再び増加傾向となっている。

ワシントンDCやロスアンジェルス地域の渋滞税としては、都市部の渋滞地域ではなく、高速道路を通行するドライバーに対して、渋滞しないレーンを通るための料金を徴収する制度が導入されている。一般のドライバーは、当然ながら無料だ。コストはスムーズな通行に見合ったものでなければならないからだ。ワシントンDC地域では、遠く離れた郊外からの通行料は、最大で40ドル(約4400円)ほどにもなる。しかし、それはスムーズな通行を確保するために必要なコストなのだ。

一方シンガポールでは、このロジックを市の中心部まで拡張し、独自の渋滞税のモデルとともに採用している。中心の商業地区内と、その周辺に50以上のチェックポイントを設け、そこを通過する際に、無料〜3ドル(約330円)の料金を課金するのだ。料金は時間帯や道路の混雑具合によって変動する。ストックホルムでも、シンガポールのシステムと同様のロジックを採用し、1日の上限を1台につき約11.3ドル(約1260円)として、料金を徴収している。

うまく設計された反応のよい公共政策は、市民の正しい選択を促すものだ。渋滞税は、市場原理に則った規制であり、道路上の車を常に適切な数に保つことを可能にする。実際には、ガソリン車と電気自動車の比率にもよるが、渋滞の緩和に加えて、こうしたシステムには大気の質と公衆衛生を改善するのに役立つという一面もある。もちろん、渋滞税から得られた財源が、交通網そのものの改善に役立つのも確かだ。

都市の指導者に、そこに住む人々はどのような都市を建設しようとしているのかと尋ねたとしよう。望ましい答えは、人々のための都市であって、車のための都市ではない。自動運転車が、誰にとってもより良い都市を築くのに役立つものになることを、確かなものにしようではないか。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

投稿者:

TechCrunch Japan

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