ドローンによる配送が物流の将来にどのように適合していくのか、誰にもはっきりとはわからない。しかし、1つ確かなことは、ドローンが大事な荷物を、注文主の家の芝生に直接落としてしまうわけにはいかないということだ。その解決策となりそうなのが、Matternet(マッターネット)の「Station(ステーション)」と呼ばれる、自動化されたドローンの着陸スペースと荷物の受け取り・送り出し機能を備えたタワーだ。この花のような形の構造物は、ついにレンダリング画像から現実の世界へ飛び出し、スイスの医療施設に設置された。
このStationは2020年初めに発表があったものだが、コンセプトのレンダリング画だけでは、最終的にアイデア通りのものになるかどうかはわからない。今回のケースでは、完全に60年代のSF映画の小道具のようなものができあがった。
しかし、この特異な形状は、荷物運び用ドローンが着陸してバッテリーを交換するための安全な場所を提供し、雨や風などの天候、そして罪のないロボットから医療用ペイロードを奪おうとする困り者から、ドローンと荷物を保護するという目的に適っている。
初めて実際に設置された今回のケースでは、ドローンが輸送するのは温度管理されたハードシェルケースで、中には通常は陸路で移送される多数のバイラル瓶が入れられる。これらは検査サンプル、血液、薬など、使用期限が短く、何らかの理由で施設間を移動する必要があるものが対象となるだろう。
Stationの内部で、ハードケースはドローンから取り外され、許可された人が取り出せるように保管される。支柱の部分には、病院の制限区域に入るときに使うようなIDバッジで開閉が保護された小さな収集用のドアが備わる。これは通常の認証システムと統合させることで、ドローンによって運ばれた荷物を、空気チューブやカート、マニラ封筒のように、しかし同じ建物内にいなくても、簡単に受け取ることができるようにするアイデアだ。
最初のStationはルガーノのEOC病院グループに設置されたが、最初の大規模な展開はアブダビで、市の保健局および同地のドローン配送会社SkyGo(スカイゴー)と協力し、市内の40カ所にStationのネットワークを構築する予定だ。これらも、比較的軽量で緊急性の高い医療品の搬送という基本的に同じ目的のために使用されるが、その規模はより大きなものになる。
2021年8月、Matternetはドローン企業として初めて、Pfizer(ファイザー)製ワクチンを拠点間で輸送した。これはどこの病院ネットワークや保健所も実現を望んでいる短期輸送だ。もし繁華街で大量の注射が必要になったら、多数の人々を避難させるのではなく、配給所や近くの診療所から数百人分のワクチンを空輸することができるようになる。
もちろん、このような貴重な荷物は、中庭や屋根の上に無造作に置き去りにするわけには行かない。だからこそ、Stationはこの種のネットワークに必須となるだろう。とはいえ、ネットで注文した食品を配達してもらうために、自宅の裏庭にStationを設置しようとは思わないほうがいい。
画像クレジット:Matternet
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(文:Devin Coldewey、翻訳:Hirokazu Kusakabe)