英国のチャレンジャーバンクStarlingが約4.4億円を調達、評価額は2063億円に

小規模で動きの速いテック系銀行スタートアップのチャレンジャーバンクに、多額の資金注入が続いている。強気の投資家たちが、そうしたチャレンジャーバンクには大手のライバル銀行から顧客を引きつけるチャンスがあると考えているからだ。その最新の動きとして、英国に拠点を置くStarling(スターリング)が、11億ポンド(約1653億7000万円)の事前評価額で、2億7200万ポンド(約408億9000万円)を調達したことを発表した。

このシリーズDラウンドによって、同社の事後評価額は13億7200万ポンド(約2063億円)となった。

旧来の銀行だけでなく、Monzo(モンゾ)やRevolut(リボルト)のような他のチャレンジャーバンクとも競合しているStarlingは、調達した資金を成長の継続のために使うと述べている。Starlingはすでに利益を出している。米国時間3月8日に投稿された最新の財務書類では、Starlingは2021年1月の収益が1年前に比べて400%増加した1200万ポンド(約18億円)だったと報告している。これは1年分に換算すると1億4500万ポンド(約218億2000万円)となる。4カ月連続で営業利益を計上し、1カ月あたりの純利益は現在150万ポンド(約2億3000万円)を超えている。

2017年に設立されたStarlingは、現在200万以上の口座を保持しており、その中にはビジネスアカウントも30万口座含まれている。これらの口座のうち、どれくらいの数がアクティブかははっきりしない。Starlingによれば、上の数字は開設された口座数だ。貸出残高は20億ポンド(約3010億円)を超え、預金残高は54億ポンド(約8126億円)となっている。

Starlingは、調達した資金を、英国での融資業務の拡大、欧州の他の地域への拡大、戦略的買収のために使用する予定だと述べている。

Starlingの創業者でCEOのAnne Boden(アン・ボーデン)氏は声明の中で「デジタルバンキングは転換点に達しました」と語る。「今やお客様は、これまでの銀行に代わるより公平で、よりスマートで、より人間的な代替手段を期待しています。それこそが、成長を続け新しいプロダクトやサービスを加える私たちが、ご提供しているものなのです。新しい投資家のみなさまは、次の成長段階に入る当社に豊富なご経験をもたらして下さいますし、既存の支援者のみなさまの継続的なご支援は、多大な信頼をお寄せ頂いている証拠です」。

今回のラウンドはFidelity Management & Research Companyが主導し、そこにQatar Investment Authority (QIA)、310億ポンド(約4兆6650億円)規模のRailways Pension Schemeの投資マネージャーであるRPMI Railpen (Railpen)、国際投資企業のMillennium Managementが参加している。またこのラウンドは私たちが11月に報告した少なくとも2億ポンド(約300億円)の調達に続いて行われた。

今回の資金調達は、消費者バンキングにとって非常に重要な時期に行われた。Starlingが活動している市場である英国では、ここ数年の傾向として、オンラインバンキングやモバイルバンキングへの移行が徐々に進んでいたが、それらの傾向が、新型コロナウイルス(COVID-19)の拡大を抑えるためのロックダウンや強制的なソーシャルディスタンスによって急速に加速した。

チャレンジャー(ネオ)バンクは、進化している消費者行動の中にあって、最大の勝者となっている。チャレンジャーバンクたちは、バンキングインフラプロバイダー(Rapyd、Plaid、Mambu、CurrencyCloudといった企業が含まれるまた別のスタートアップカテゴリー)から、APIを介してホワイトラベルサービスとして提供される手段を利用し、引き出しや預金などの基本的なサービスを提供するが、通常はその柔軟性はかなり高く、追加の貯蓄や財務のヒント、顧客への貯蓄サービスなどを、デジタルプラットフォーム上で提供している。

旧来の大手銀行たちは、こうしたイノベーションに追いつこうと躍起に努力してきたが、とりわけ過去10年間の銀行危機によって、既存銀行が世間で思われていたほど強力でも盤石でもなかったことが顕になったことによって、新しい世代のユーザーたちはそのブランドや権威への信頼感を弱めている。

またその大きな市場イメージによって、多くのネオバンクの急増も予想されている、つまりStarlingは旧来の銀行以外とも競合していくということになる。そうした競合相手には、Monese(マネーズ)、Revolut、Tide(タイド)、Atom(アトム)、Monzoなどがあるが、特に最後の企業はStarlingの元CTOによって設立された、手強い競争相手だ。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Starlingイギリスチャレンジャーバンク資金調達

画像クレジット:Starling

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:sako)

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TechCrunch Japan

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