英国スタートアップが独自のドローン交通コントロールでGoogleに挑む

空飛ぶタクシーで道路の渋滞が緩和できるのはもちろん、荷物の配達や捜索救助の活動、緊急の医療物資の配送など、ドローンが非常に有用なことを低コストでやってのける将来は、追求する価値がありそうだ。しかしこれらが現実のものとなる前に、空にある何千ものドローンの安全運航を確かなものにする必要がある。他のドローンや、人が操縦する航空機の航空経路、そして侵入禁止エリアに侵入したドローンは自動的に検出されるようにする必要があり、安全に飛行を続けるためにコースを変えなければならない。さもなくば、たとえばドローンがたくさん飛んでいる主要空港周辺の空はカオスになり、頻繁に事故が起こることになる。

そうしたシステムづくりでレースが展開されている。GoogleのX Labから誕生したAlphabet傘下のWingは、ドローンのための航空交通コントロールシステムの基準になればとの願いを込めてOpenSkyというプラットフォームを発表した。これまでのところOpenSkyはオーストラリアのドローン飛行管理が承認されているだけだが、米連邦航空局とのデモンストレーションプログラムも進行している。

しかし今週、Seraphim Capitalが490万ドル(約5億2780万円)出資している英国拠点のスタートアップAltitude Angel(アルティテュード・エンジェル)が自前のUTM(Unmanned Traffic Management、無人交通管理)システムを立ち上げた。

同社のConflict Resolution System(CRS、コンフリクト解消システム)は基本的に自動で衝突を回避する技術だ。これは、目の届かないところを飛んでいるドローンが安全を維持しながら飛行を続け、飛行計画から外れたり制限エリアに侵入したりしないことを意味する。自動コントロールにすることで、空中の衝突を防ぐことができるとAltitude Angelは語る。というのも、空にいるドローンの全ての居場所を知ることで、存在が驚きではなくなるからだ。

Altitude AngelのCRSは戦略的と戦術的のどちらの要素も有している。

戦略的な部分は、飛行の計画段階にある。例えば、誰かが飛行計画を提出し空域許可をリクエストするときだ。システムは提案のあったルートを分析し、すでに提出されている他の飛行計画や、地上の制限エリアと相互参照する。そして飛行計画のコンフリクトを解消するために別ルートを提案する。最終的には、ドローンのオペレーターがこうしたことをスマホのアプリでできるようになり、フライトの承認はオートメーション化される。

次のステージは戦術的な部分となる。これは、ドローンが実際に飛んでいるときに展開される。ダイナミックなシステムが絶えず航空機周辺の他の航空機や空域での変更(例えば、事件による一時的なフライト制限など)をモニターし、自動的にルートを調整する。

このCRSの肝は、ドローンとドローン操縦者が個人情報やセンシティブなデータを互いに交換することなく飛行計画を世界で提供されるサービスに保存できることにある。

Altitude AngelのCEOで共同創業者のRichard Parker(リチャード・パーカー)氏は、「ドローンや自動操縦航空機が戦略的にフライトを計画したり、潜んでいるコンフリクトに気づいたり、また状況に応じてルートを変えたりできる能力は、空での安全を確保する上で必要不可欠だ。この最初のステップは、ドローン操縦者と航空機オペレーター、他のUTM企業との間でのフライト前の共同作業となる。適切でタイムリーなガイダンスを提供し、空でのコンフリクトを予想して解決できることは自動フライトに革命を起こす。CRSは、ドローンや自動航空産業が成長する上で欠かせないものの1つだ」と語った。

Altitude Angelの他にもこうしたタイプのCRSを発表する企業は出てくるだろうが、万能のGoogleとAmazon(似たようなドローン配送計画を持っている)に挑む自信に満ちたスタートアップが他にもいることを示している。

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(翻訳:Mizoguchi)

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TechCrunch Japan

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