スタートアップの世界にいると、物理的な店舗を設けるというのは少し古臭い感じがする。都市部で人気の地域に出店するためにバカ高い賃貸料を払って、ましてや長期間の契約を結ぶなど考えたくもないほどだ。
しかしY Combinatorの投資先であるBulletinは、実店舗で商品を販売したいと考えているブランドのために柔軟に使えるスペースを提供しようとしている。COOのAli Kriegsman(CEOのAlana Branstonと共に下の写真に写っている)は、自分たちのアプローチを「小売のためのWeWork」と表現する。
Bulltinは店舗となる場所をおさえ、さまざまなサイズ(少し棚が置いてある程度のものから、もっと大きいものまで)のセクションに区切ることで、顧客企業に販売スペースを提供しており、顧客は気に入ったセクションを1ヶ月単位で借りられるようになっている。
店を訪れるお客さんは、小規模で独立したさまざまなブランドの商品を、ひとつの店舗でまとめて見ることができる。恐らくブランドの入れ替わりのスピードも速いので、店を訪れる度に違った雰囲気を味わうこともできるかもしれない。
しかも通常の小売店と違い、ブランド側は「大きなスペースにある各ブランドの店舗」とKriegsmanが表現する各セクションを、自分たちの好きなように形作ることができる。具体的には、どの商品がどこに陳列されるかや商品の価格もブランドが決められるほか、陳列されていない商品をiPadでお客さんに見せたり、メールアドレスなどの顧客情報を集めたりと、自分たちがやりたいことを何でもできるようになっている(店内の販売員はBulletinのスタッフだが、各ブランドは販売員を教育することも可能)。
ブランドの中には、Bulletinのサービスを小売販売モデルのテストに使うところもあれば、新商品のローンチ時に1、2ヶ月だけスペースを借りるところもある。解約の1ヶ月前に連絡さえすれば、顧客は好きなタイミングで好きなようにBulletinのスペースを使えるとKriegsmanは話す(賃貸契約と準備には5日ほどしかかからないと彼女は付け加える)。
実はBulletinは、YCの2017年冬期アクセラレータープログラムに参加する前に、昨年の助成金プログラムにも参加していた。Branstonによれば、当初ふたりは「素晴らしい新進気鋭のブランドを扱っていて、実際に商品を購入できるウェブマガジン」をつくろうとしていたが、その流れでニューヨークシティ周辺にポップアップストアをオープンしたところ、ポップアップストアの方が儲かることがわかったという。
「顧客は別に新しいオンライン販売のチャンネルを必要としていないことに、私たちはすぐに気が付きました」とBranstonは話す。ブランドが実際に必要としていたのは、人がたくさん訪れて「すぐに商品を販売できる」小売スペースだったのだ。
Bulletinはまだオンラインストアも続けているが、今はポップアップ戦略を続けつつ、そのノウハウを応用して長期的に店舗を構えることに注力している。同社は、昨年11月にニューヨークのウィリアムズバーグに初めての店舗をオープンし、現在各スペースは「キャンセル待ちの状態」だとKriegsmanは言う。
本日(米国時間2月21日)Bulletinは2つめとなる店舗をソーホーにオープンした。ウィリアムズバーグの店舗は家財を中心に扱っているが、ソーホーの新店舗は女性向けの商品を集中的に扱っていく(核となるテナントにはシャワーキャップのShhhowercapや、キャンドルのKeapなどが含まれている)。そのほかにもBulletin Pantry(食料品)、Bulletin Baby(子供用品)、Bulletin Wellness(健康用品)といった新しい店舗を現在計画中だ。
彼女たちの計画から考えると、今後はもちろん店舗を増やしていくことになるが、当面の間全ての店舗はニューヨーク内でオープンし、将来的にはロサンゼルスを皮切りに他の街にも進出していきたいとBranstonは話す。
さらにBulletinは、スペースの予約や売上情報の確認が簡単にできるソフトの初期バージョンを既にローンチしており、今後もソフトの改良を続けていくとKriegsmanは付け加える。
YCに加え、BulletinはこれまでにNotation Capital、Halogen Ventures、Jesse Draperからも資金を調達している。
[原文へ]
(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter)