SpotやAtlasといったロボットの敏捷性には目を奪われるが、一体では汎用性は低いものの適応性の高い集団として活動できる超小型のシンプルなロボットにも、それなりにメリットがある。この「Tribot」(トライボット)は、アリをモデルに開発され、本物のアリと同じように、障害物をチームワークで乗り越えることができる。
スイス連邦工学大学ローザンヌ校(EPFL)と大阪大学によって開発されたTribotは、超小型、軽量でシンプルなロボットで、アリと言うより尺取り虫のような動きをする。しかし、必要とあらば障害物をジャンプで跳び越えることもできる。このロボット本体とシステムは、歩行と跳躍を使い分け、(他のアリと同様)探検アリ、働きアリ、リーダーアリの役割を流動的に担うアギトアリをモデルにしている。個々のロボットはそれほどインテリジェントではないが、集団としてコントロールされることで、知的な能力を発揮する。
集団行動の例として、複雑な地形のある地点から別の地点に渡る場合が考えられる。探検アリが先を行き、障害物を探知し、その位置と大きさを残りのメンバーに伝える。するとリーダーは、働きアリ部隊を送り出し、障害物の除去を行わせる。除去できないときは、探検アリはジャンプして障害物を跳び越えようと試みる。それに成功したなら、遠隔測定情報を後方のメンバーに伝え、全員が同じように跳び越えられるようにする。
現時点では、こうした行動はとてもゆっくりだ。下の動画を見ればわかるが、ほとんどのアクションは16倍速になっている。だが、速度はそれほど重要ではない。Squishy Roboticsのロボットと同じく、適応性と、簡単に展開できることに主眼が置かれているのだ。
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Tribotは、ひとつの重量がわずか10gで、基本的にプリント基盤にちょっとしたメカニズムと滑り止めを加えただけの構造なので簡単に大量生産ができる。論文によれば「擬似二次元メタマテリアルのサンドウィッチ」だそうだ。1台あたりのコストが1ドルほどならば、目標地域に数十台から数百台を投下でき、1時間から2時間ほどで状況を判断し、測量を行い、例えば放射線や高熱を発している場所を探し回るといった活動が行える。
もう少し速く動けたなら、同じロジックでデザインを改良すれば、キッチンやダイニングに群で現れて、パン屑を掃除したり、皿を所定の場所に運んだりできるだろう。余談だが、SF作家のレイ・ブラッドベリは、火星年代記(The Martian Chronicles)シリーズの「優しく雨ぞ降りしきる」(There Will Come Soft Rains)の中で、これを「電気ネズミ」とかなんとか呼んでいた。彼の作品のなかでも大好きな話だ。なので私はいつもそこに目を光らせている。
群での活動を基本としたロボットには、不具合が起きたときに致命的な事態に至らないという利点がある。ひとつのロボットが故障しても、群は維持され、すぐに別のロボットで補填できるからだ。
「大量に製造して展開できるので、多少の『被害』があってもミッションの遂行には影響しません」と、EPFLでこのロボットのデザインに携わるJamie Paikは話している。「彼らはその独自の集合的知性によって、未知の環境への高い適応性を示します。そのため、ミッションによっては、大型の、よりパワフルなロボットよりも高い性能を示します」。
ここでひとつの疑問が湧く。小さなロボットが集まって1台の超高性能なロボットを構成するというのはあり得るのか?(これはどちらかと言えば、そもそもコンストラクティコンとデバステーターから発生した哲学的な疑問だ。いろいろな意味で、トランスフォーマーは時代を先取りしている)。
Tribotはまだプロトタイプだが、すでに、他の「集団」タイプのロボットシステムと比較して大きな進歩がある。開発チームは、その進歩についてネイチャー誌に論文を掲載している。
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(翻訳:金井哲夫)