2020年の旅行業界の市場規模は1830億米ドル(約20兆円)に上るとの予測がある。この分野で、これまで自己資金で事業を展開してきたスタートアップが、初めて外部から投資を受けると発表した。
ToursByLocals(ツアーズバイローカルズ)は、約162カ国でローカルガイドを調達し、観光客に対して、個人や小グループの旅行を検索・予約できるツールを提供している。同社は1月13日、3300万カナダドル(約28億円)の資金調達を発表した。投資家はTritium Partnersのみだ。調達した資金は、人材採用や予約、支払い、レビュー投稿などに関する独自技術の開発、事業開発チームの拡充に使う予定だ。
カナダのバンクーバーに拠点を置くToursByLocalsにとって初の外部からの資金調達となる。同社は過去10年間にわたって自己資金で事業を進め、顧客を145万人まで積み上げ、4500万米ドル(約49億円)ほどの売上を計上している。現在、約100人の従業員がいる。
ToursByLocalsはPaul Melhus(ポール・メルハス)氏、Dave Vincent(デイブ・ヴィンセント)氏、Luciano Bullorsky(ルチアーノ・ブロウスキー)氏が共同で創業した。バリュエーションは公表していないが、以下の情報が参考になるかもしれない。ダイナミックでプレーヤーが多い同社が事業を展開する旅行業界には、Airbnbのような競合他社がいる。ベルリンのGetYourGuideは、2019年ソフトバンクから資金調達し、現在の評価は10億ドル(約1100億円)以上だ。香港のKlookも同じくソフトバンクから投資を受け入れ、10億ドル以上で評価された。オランダにはWithlocalsという会社もある。こちらも参照されたい。
だが、すべての会社が順調なわけではない。Y Combinatorでインキュベーションを受けたVayableは、12月に静かに事業を終えた。
ToursByLocalsのプラットホームには、少人数のグループツアーからプライベートツアーまで、約4130のプロフェッショナルガイドと3万のプランがあるという。ユニークなセールスポイントは、ガイドを同社が選別している点。応募したガイド10人のうち平均して1人選ばれる。またガイドは「考古学者、美術史家、野生生物専門家、写真家、グルメ」など、一般的に観光旅行で出会うことのない人々に焦点を合わせている点も特徴的だ。「ローカル」というのは、単に特定の地域に住んでいるということではなく、あるテーマに詳しいということを意味している。
「ローカルガイドつきプライベートツアーは、目的地でさまざまな体験をする最適な方法だ。創業以来、当社は旅行者のために本当に思い出に残るプライベートツアーを作ることに注力してきた。また、世界1000カ所以上で現地のツアーガイドがカスタマイズできるツアーを提案できるよう支援してきた」と、ToursByLocalsのCEOであるメルハス氏は声明で述べた。
「Tritiumとの提携を楽しみにしている。成長のための資金だけでなく、Tritiumチームとその経験豊富なマーケットプレイスエグゼクティブのネットワークの両方からの戦略的アドバイスを高く評価しており、主要なオンライン旅行マーケットプレイスとして事業を拡大し続けていく」
Tritium Partnersにとっては、ベンチャーマーケットへの初めての参入になる。プライベートエクイティファームとして名高い同社は旅行業界に注力しており、HomeAwayやピアツーピアRVレンタルマーケットプレイスであるRVShareに投資している。
「ToursByLocalsは、業界最高水準のツアーと現地ガイドを備えた最高のプライベートツアーマーケットプレイスとして際立っている」とTritiumのパートナーであるBrett Shobe(ブレット・ショーブ)氏と言う。「当社はToursByLocalsチームと提携し、当社の資本と経営資源を活用して、彼らのエキサイティングな成長軌道を支え、加速させることを楽しみにしている」
現在、同社のビジネスの大部分は直販によって拡大しているようだ。直販なら顧客の旅行体験をしっかりコントロールできる。ガイドを選ぶ際には、バックグラウンドチェック(身元調査)も実行する。支払いや顧客サポートも直接扱う。これらは、リピーターの旅行者を獲得するだけでなく、ガイドからも肯定的な反応を得られるため、マーケットプレイスの両サイドで良い効果があるようだ。ToursByLocalsは、すべてのツアーで20%の手数料をとる。
興味深いのは、同社が規模を求めてサードパーティと組むかどうかだ。例えば、Booking.comやAirbnbといったアグリゲーションプラットフォームへの自社の旅行商品の供給が考えられる。こうしたプラットフォーム側でも、既存の航空その他のチケットや宿泊予約などの旅行サービスに旅行商品を加えて、ユーザーあたりの収益を増やす狙いがある。
サードパーティのコンテンツを、自社のプラットフォームに取り込むことも考えられる。より大規模なツアーや、旅行に関連した製品やサービスなどだ。同社はまた、旅行者が小さなツアーを他人と「シェア」する方法も検討している。例えば、クルーズに参加中の2組のカップルがいずれもどこかに上陸するときに、催行人数4名の1日ツアーにともに参加して費用をシェアするといったものだ。
画像クレジット: Laszlo Szirtesi
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(翻訳:Mizoguchi)