近年はC2Cのフリマアプリの台頭もあり、スポットライトを浴びることも増えてきたリユース市場。リサイクル通信の調査では2016年時点で約1.7兆円の規模があると推計されていて、7年連続で市場が拡大していることからも今後さらなる成長が期待できそうだ。
そんな背景もあってか、前述したフリマアプリを筆頭にITを活用してこの領域の課題解決を目指すスタートアップも多い。
今回紹介するウリドキネットもそのうちの1社。モノを売りたいユーザーと買取ショップをつなぐC2Bの買取プラットフォーム「ウリドキ」を通じて、誰でも安心してモノを売れる仕組み作りに取り組んでいる。
そのウリドキネットは2月25日、複数の事業会社から1.5億円の資金調達を実施したことを明らかにした。第三者割当増資を引受けたのはエルテス、ディップ、東急不動産ホールディングス(TFHD Open Innovation program)など。ウリドキネットでは事業面での連携も見据えながら、さらなる成長を目指す計画だ。
高単価の買取依頼が増加、単月の黒字化も達成
ウリドキネットが展開するウリドキは、様々なリユース企業が集まるオンライン買取モールだ。
モノを売りたいユーザーが複数のショップの買取価格を比較した上で、自分が気に入った店舗に買取を依頼することができるのが特徴。同社では買取価格やショップごとの口コミといった情報を可視化することで、ユーザーがネット上でも気軽にモノを売れる「売却インフラ」作りを進めてきた。
ウリドキネット代表取締役の木暮康雄氏によると、もともとはゲームや本、CD、DVDといったメディア系商材が中心となっていたが、ここ1〜2年ほどでお酒や宝石、家具、楽器、ブランド小物など高単価商材の買取依頼が増加したそう。月単位の売上ベースでは前回資金調達を実施した2017年6月に比べて9倍近くまで成長。昨年は単月の黒字化も複数回達成した。
冒頭でも触れた通り、近年はメルカリやラクマなどフリマアプリの認知度が一気に広がり、何かモノを売ろうと思った際にフリマアプリを選択する人も少なくないだろう。この点について木暮氏は「本やファストファッションなどはリユース企業が高い価格で買い取るのが難しいため、C2Cと相性が良い」と話す一方で、「高単価商材はプロが本領を発揮しやすい。きちんと査定した上で正当な価格を提示できる。(他の商材と比べて)C2Cの価格メリットがない領域でもある」という。
確かに買う側にとっても、安い商品であればフリマアプリで気軽に買えても、数百万円の商品となると同じようにはいかないだろう。本当にその値段で買うのが問題ないのか、プロのお墨付きがあったほうが安心できるという人もいるはずだ。
データを活用してリユース企業をサポート
そのような背景から高単価商材の買取が増えていることに加えて「(事業の成長という点では)買取先となるリユース企業のネットワークが拡大したことも大きい」(木暮氏)という。
ウリドキは自社でユーザーから商品を買い取るわけではなく、あくまでユーザーとリユース企業をつなぐプラットフォームという位置付け。ここに参加するリユース企業が増えるということは、ユーザーにとって売り先の選択肢が増えることに繋がる。各リユース企業ごとで得意な領域も異なるため、より高く買い取ってくれる相手が見つかる可能性も出てくるというわけだ。
今回木暮氏の話の中で興味深かったのが「同じ商品を、自社サイトよりもウリドキの方が高い価格で買い取っているショップが複数ある」ということ。ウリドキは成約率の高いショップやユーザーから評判の良い店舗のデータを持っているので、“コンサル”のような形でプライシングやコミュニケーションの取り方、アクションの仕方などをサポートすることもできる。
「それによって店舗の運用コスト(1ユーザーを獲得するのにかかるコスト)を抑えることができれば、(抑えられたコスト分を)買取価格にも反映できる」という構造で、そのサイクルが上手く回り始めているのだそうだ。
調達先の事業会社ともタッグ、純粋想起の向上目指す
「(前回の資金調達以降で)ある程度の仮説検証ができ、数字も伸びてきている」と木暮氏が話す中での新たな資金調達。今回は人材採用などに向けた資金を集めるだけでなく、事業をグロースさせる上でのパートナーを増やす意図もあるという。
出資先にはエルテス、ディップ、東急不動産と事業会社の名前が並ぶが、そのうち東急不動産とはすでに共同で新サービスを発表済み。グループ会社の学生情報センターと協業し、学生マンションの住民を対象とした家財売却サービス「URIDOKI買取Day」を始める。
これはマンションの住民が専用ページから売りたい商品を登録しておくと、ウリドキの提携先のリユース企業が事前査定を実施。指定日時にマンションまで商品を取りにきてもらえるので、商品を引き渡せば現金で買取金額を受け取れるというサービスだ。
この事業は木暮氏いわく「眠っているリユースのニーズを掘り起こす」アプローチのひとつ。過去1年間に不用となった製品の価値が7兆6254億円にも上るという経産省の調査もあるように、まだまだリユース市場には大きなチャンスがある。その受け皿を作るという意味では「オンラインだけでは限界があり、オフラインとの掛け合わせが必要」だというのが木暮氏の見解だ。
東急不動産以外の調達先とは現時点で具体的な取り組みについては決まっていないというが、連携を取りながら健全な買取プラットフォームの構築を進めていく計画だという。
「何かモノを売りたいと思った時、パッと想起してもらえるような存在を目指していく。昨年は1年の間に色々な取り組みができたが、純粋想起に関してだけはあまり踏み込めなかった。モノを売る際に『ウリドキなら安全』『とりあえずウリドキをチェックしてみよう』と思われるプラットフォームにしていきたい」(木暮氏)