【編集部注】執筆者のTim Cannonは、HealthITJobs.comのプロダクト管理担当ヴァイスプレジデント。同社は1000件以上のヘルスケアITの求人情報を掲載する求人サイトを運営している。
テック業界で働く女性の数が男性より少ないことや、両者の間に賃金格差があることは既によく知られている。しかしComparablyの調査から、年齢が上がるほど賃金格差が縮まっていくという興味深い事実が浮かび上がってきた。
18歳から25歳の間にテック業界に入ってきた女性は、同じ年齢の男性よりも29%少ない給与を受け取っている一方、彼らの年齢が50歳を超える頃には、その差が5%まで縮まるということがわかったのだ。
ヘルスケアIT業界では経験と共に給与が大幅に増加する、ということが私の勤めるHealthITJobsの調査からも分かっていることから、これには納得がいく。しかしこれはそもそもなぜ賃金格差が存在するのかという問いへの答えにはならない。
問題は入社時からはじまる。つまり求人という採用プロセスのスタート地点から、既にこのようなトレンドの芽が生まれている可能性があるのだ。驚くかもしれないが、求人内容がテック業界における賃金格差を生み出し、固定化させている可能性がある。以下でその流れについて説明したい。
以前の給与に関する質問
ある求人に応募してきた候補者に対して、企業が希望給与やこれまでの給与について質問するという習慣が長く続いてきた。この質問はあまりに一般化しているため、候補者側も特に疑問を持たずに答えている。しかし給与の変遷に関する質問が、実は賃金格差を固定化しているかもしれないのだ。
そのためマサチューセッツ州は、企業が求人票や面接で候補者の給与の変遷を尋ねることを禁じる法案を可決した。これには新しい仕事の給与が以前の仕事の給与に基いて計算されてしまうと、特に女性は最初の仕事の給与が男性よりも低いことが多いため、それまでの賃金格差が引き継がれてしまうという理由がある。
さらに雇用者側は意図せずとも、彼らは候補者の前職での給与からその人の価値を推測したり判断したりする傾向にある。テック業界でいえば、候補者のスキルではなく前職の給与に基いた提示額が、賃金格差の拡大につながっている可能性がある。女性はスタート時に遅れをとり、そこから追いつこうとすることしかできないのだ。
闇に包まれた給与情報
企業は候補者に対して給与に関する情報を尋ねる一方で、自分たちは報酬や給与の決め方について教えないことが多い。そのような情報が与えられないために、採用前に給与交渉をしづらいと感じている女性もいる。
そのような背景もあり、Fractlが100人の市民を対象にした行った調査でも、女性は男性に比べ賃上げ交渉をしづらいと感じている人が多いことがわかっている。平均的に女性は男性よりも賃上げ交渉を行う可能性が低く、アフリカ系アメリカ人の女性が賃上げ交渉を行う可能性が1番低い。
賃上げ交渉は採用時の給与交渉とは少し異なるものの、どちらも似たようなスキルや自信が必要になってくる。さらに新しい業界での仕事を探している女性の頭の中では、最初から給与交渉することで波風を立てたくないという心理が働いている可能性がある。交渉に必要な情報が提示されていないとすればなおさらだ。
応募している職業の一般的な給与や、応募先企業の平均初任給、給与の決め方といった情報がないと、女性はどのくらいの水準の給与を希望すればいいのかわからない。
求人票の男性的なキーワード
ほとんどの人が気づいていないが、求人票の多くは男性向けにつくられている。ZipRecruiterが行った調査ではほとんどの求人で男性的なキーワードが使われているとわかったのだ。同社のウェブサイトに掲載されている求人情報を調べたところ、”assertive(積極的)”、”decisive(決断力のある)”、”dominant(支配力のある)”といった男性的な言葉が70%の求人に含まれていた。そしてテック系の仕事だと、その数は92%まで増加する。
このような言葉は採用と何も関係がないようにも見えるが、中性的な言葉が使われている求人への応募率はそうでないものに比べて42%も高い。つまり求人に男性的な言葉が含まれていると、女性の応募率が下がる可能性があるのだ。そのため、求人に使われている言葉が好ましくないという理由で、女性は高給なテック系の仕事に応募していないのかもしれない。
リクルート会社や雇用主は、給与格差を生み出そうとして意図的にそのような求人票をつくっているわけではないが、これまでに浸透したやり方がそうさせているのだ。しかし求人票の書き方を変えるだけならば大した作業ではない。どのくらいの給与情報を候補者に明かすかや、求人票に適した中性的な言葉を決めるのには少し時間がかかるだろう。ただこのような小さな変化を積み上げることで、テック業界にはびこる賃金格差を解消することができるかもしれない。
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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter)