起業家の旅路は圧倒的に険しい

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編集部記Ben Narasinは、Crunch Networkのコントリビューターである。Ben Narasinは25年間起業家として活躍し、その後8年間を投資家として活動し、現在はCanvas Venturesのジェネラルー・パートナーを務めるベンチャーキャピタリストを務めている。

投資先であるシード段階の会社のファウンダーの1人が私に連絡してきた。今週末、すぐにでも話がしたいとのことだった。彼は「会社が崩れ落ちそうで」アドバイスが必要だと言った。

その会社はシードラウンドを調達し、そのほとんどの資金がまだ銀行口座にある状態だった。会社のミッションに深く共感する、とても優秀なエンジニアを採用することもできた。エンジニアは妥当な給与を受け取っていた。しかし、ファウンダー間の折り合いがつかない対立のために会社は崩れようとしていた。

問題について彼と話をしたところ、どうやらその難局を抜け出せる道筋はなさそうだということが明らかとなった。私は両者が決裂したことを互いに認め、いずれかがビジネスを先に進める道を探した方が良いだろうとアドバイスした。それが不可能なのであれば、会社に関わった全ての人たちの将来の可能性を守るため、解散するのに最も後腐れがない方法を探すことを提案した。

彼の返答は、気が滅入るような内容だった。もう一方のファウンダーは、将来の可能性を守ったり、新たな道を探すことに全く関心がないという。彼は、ここに来たのは起業家としての旅路を進むためであり、それが失敗に終わるなら、自宅に帰るだけだと話したのだそうだ。

彼らが迷い込んだそのような難局は紛れもなく起業家の旅路そのものだ。

スタートアップを外側から見る分には、スタートアップゲームは、そう、ただの「ゲーム」だと捉えることは容易い。大勝する人がいて、成功への階段をまたたく間に駆け上がる。何百億ドルのバリュエーションに世界制覇を成し遂げる。何億人のユーザーが使うアプリを提供し、その栄光には何世代にも渡って家族を潤す資金が伴う。

しかし、起業はゲームではない。起業家の旅路の大半は(私もその旅路を通ったことがあり、今もそこに生き、没頭し、心の底から敬愛している)懸命な努力が求められ、痛みや争い、葛藤に満ちた時間でもある。例えば、次のようなことが起きる。

  • カスタマーのコンバージョンが起きない
  • 重役が会社を去る
  • パートナーとなる予定だった企業の優秀な担当者が契約締結の前に仕事を去り、振り出しに戻る
  • 共同ファウンダーと意見が対立する
  • テクノロジーがスケールしない
  • 重要な空きポジションを埋める人材を採用できそうにない
  • 採用が決まった途端、採用予定の人に提示したボーナスの5倍をその人が働く大手企業が提案し、採用が妨げられる
  • リソースの域を超える請求書が溜まる
  • 人件費をもう一度資金調達しなければ払えなくなる
  • 資金調達がなかなか合意に至らなかったり、予想より長くかかる
  • 自分たちより優れているとは言えない競合他社がプレスで露出を獲得しているのに、自分たちにはない

ぱっと思い浮かんだのはこれくらいだ。起業家の旅路は険しい。本当に難しいものだ。

難局に立たされたファウンダーからの相談を何回も受けたことがある。その中の一部は成功への道を辿り、一部は失敗への道を辿った。けれども私のメッセージはいつも一緒だ。上昇する前に状況が悪くなると言うが、この旅路では最悪に最悪が重なる。それでももし踏みとどまって、なお前に進もうとするのなら、いずれ道が開けてくるかもしれない。ただ、ひたすら前を目指すことだ。良くても悪くても、素晴らしい状況でも、どん底な状況でも、それは全部起業家の旅路の一部に過ぎないのだから。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website/ twitter

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。