車内を仮想空間と現実を融合したエンターテイメントの場にするHolorideが約13億円調達

没入型の車内XRメディアプラットフォームを開発しているHoloride(ホロライド)は現地時間4月22日、シリーズAラウンドで1000万ユーロ(約13億円)を調達し、評価額は3000万ユーロ(約39億円)となったことを発表した。

スウェーデンのADASソフトウェア開発会社Terranet(テラネット)が320万ユーロ(約4億円)を拠出してラウンドをリードし、中国の金融や自動車テクノロジーの投資家が参加した。投資専門家のJingjing Xu(ジンジン・シュー)氏と教育・エンターテインメントゲーム開発企業Schell Gamesがこの中国の投資家グループをまとめた。Schell Gamesはコンテンツ制作でHolorideと提携している。

Holorideは欧州や米国、アジアなどグローバルマーケットへの進出に備え、そして2022年夏のプライベート乗用車向けのローンチを前に、調達した資金を新しいデベロッパーと人材探しに使う計画だ。

「コンテンツクリエイターコミュニティを重んじています。そして今夏には、コンテンツクリエイターが当社のプラットフォームでクルマ向けのコンテンツを制作できるよう、多くのツールをリリースします」とHolorideの創業者でCEOのNils Wollny(ニルス・ヴォルニー)氏はTechCrunchに語った。

ミュンヘン拠点の同社は2019年にCESでプロダクトを発表した。TechCrunchは車内バーチャル・リアリティシステムをテストする機会を得た。TechCrunchのチームはHolorideが乗車とVRヘッドセットの使用による車酔いをどのように抑えるかを解決したかを知って驚き、そして喜んだ。鍵となることは?ユーザーのヘッドセット内での体験を車両の動きに合わせることだ。プロダクト展開では、ユーザーはHolorideアプリをスマホやVRヘッドセットのような他のデバイスにダウンロードできる。デバイスは車とワイヤレス接続し、現実を拡大する。

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「当社のテクノロジーは2つの面を持っています」とヴォルニー氏は話した。「1つは、ローカライゼーション、あるいは車からデータポイントを取り出してリアルタイム同期を行うポジショニングソフトウェアです。もう1つは、Elastic Software Development Kitと我々が呼んでいるものです。コンテンツクリエイターは移動時間やルートに合わせた弾力のあるコンテンツを制作できます。Terranetとのコラボレーションは、正確なキャプチャやより速いスピードで高精度での環境解釈を可能にするTerranetのセンサーやソフトウェアスタックが、将来さらなる可能性をもたらすことができることを意味する。

元々ADASアプリケーション用にデザインされたTerranetのVoxelFlowソフトウェアはHolorideがリアルタイムの車内XRエンターテインメントを高度化するのをサポートする。TerranetのCEOであるPar-Olof Johannesson(パー−オロフ・ヨハンソン)氏はVoxelFlowをコンピュータービジョンと物体認知における新たなパラダイムだと表現し、VoxelFlowでは距離や方角、物体のスピードを計算するために複数のセンサー、イベントカメラ、レーザースキャナーがクルマのフロントガラスとヘッドランプに統合されている。

TerranetのVoxelFlowは複数のセンサー、イベントカメラ、レーザースキャナーを通じたコンピュータービジョンと物体認知を活用している。VoxelFlowは距離や方角、物体のスピードを計算するために複数のセンサー、イベントカメラ、レーザースキャナーがクルマのフロントガラスとヘッドランプに統合されている(画像クレジット:Terranet)

メーカーにとらわれないHolorideは、もしTerranetのソフトウェアが統合されて製造されたクルマでHolorideが使われていれば、VoxelFlowがリアルタイムで計算したデータポイントを使うことができる。しかしより重要なのは、Holorideが3DイベントデータをXRアプリのために再使用できる能力だ。これにより、クリエイターは最もインターラクティブなエクスペリエンスを作ることができる。TerranetはまたVoxelFlowを活用する新たな分野を開拓することを楽しみにしている。

「もちろん我々はHolorideの広いパイプラインへのアクセスも熱望しています」とヨハンソン氏は述べた。「この取引は獲得可能な最大市場規模を大きく拡大し、自動車産業の核心に踏み込むものです。自動車産業では通常、リードタイムとターンアラウンドタイムがかなり長くなります」。

Holorideはクルマでの退屈な時間をゲームや教育、生産性、マインドフルネスなどに使えるインターラクティブなエクスペリエンスに変えることで、乗車体験に革命を起こすことをミッションとしている。例えば2019年のハロウィンの時期に、Holorideは飛び出してくるモンスターやライダーに課すタスクなどで、「Bride of Frankenstein(フランケンシュタインの花嫁)」の恐ろしい世界に乗客をどっぷりと浸からせるためにFord、Universal Picturesとタグを組んだ

ヴォルニー氏は、Holorideが常に次のステップに目を向けてきたと話したが、プロダクトはまだ市場投入されていない。同氏は、将来は自動走行車両が行き交い、みんなが乗客という未来のクルマの未来のテックスタックの重要な要素を構築したいと考えている。

「自動車メーカーはいつもクルマを購入する人やドライバーにフォーカスしていますが、乗客に対してはそれほどではありません。乗客はHolorideが真にフォーカスしたい人たちです。我々はあらゆる車両を動くテーマパークに変えたいのです」とヴォルニー氏は話した。

カテゴリー:VR / AR / MR
タグ:Holoride資金調達自動車

画像クレジット:holoride

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

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TechCrunch Japan

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