農地の土壌水分を自動測定して灌水量を適正化するTule

前世紀までの技術的進歩により、農家の仕事は以前に比べてずいぶん楽になった。でも、農地に対する水の管理は、まだ手作業によるところが大きい。大農場では多くの人を雇って車で圃場を巡回させ、作物の健康状態や土の湿り具合をチェックしている。

Y Combinatorが支援するTule(“トゥーリー”と発音する)は、その過程を、広い土地の上の植物の水分量を感知するデバイスを使って、より簡単な作業にしてくれる。そのデバイスは、植物から空気中に放出される水分の蒸散量ないし‘蒸発散量’(evapotranspiration)を測定する。そしてセンサが集めた蒸散量のデータは、同社のサイトのサーバへ送られる。

水管理は農家にとってますます重要になりつつある。農務省のデータによると、合衆国の水資源の大半が農作物向けであり、その90%以上は西部諸州で消費されている。

カリフォルニア州のようなところでは、水の管理がとくに重要だ。アーモンドやアボカド、いちご、ぶどうなどの作物は土壌中の水分の管理に細心の注意が必要だが、今州は干ばつに見舞われている。

そのため、わずか一滴の水でも農家とその農地にとっては重要だ。土壌中の水分は、多すぎても少なすぎても何千エーカーもの農地の作物に悪影響を与え、食糧の不足や価格の上昇を招くだけでなく、農家の所得に壊滅的な打撃を与える。

農家が広い圃場をチェックするために、今ではドローンという最新のツールがある。しかし、環境学の学位を持つTuleの協同ファウンダTom Shaplandによると、ドローンでは、農家の人が目で見て分かること以上のことは分からない。

“ドローンは作物の画像を農家の人に見せるが、それはすでに目で見て分かっていることであり、土壌中の状態までは分からない”、とShaplandは言う。

Edynのような土壌湿度センサでは、土壌のごく一部や、特定の植物に関してしか分からない。

Shaplandは、彼がカリフォルニア大学デイヴィス校でPhDを取得したときの研究を、実際に農業に生かしたい、と考えた。彼と協同ファウンダのJeff LaBargeは、Tuleを作って、Shaplandの言うことの方が作物の健康を維持するための灌水の方法として、正しくて実装可能なソリューションであることを、実証しようとした。

Tuleの技術の原理は19世紀からあるが、実装が高価につくため、実用化はされなかった。その、センサというものがない時代のシステムは一基が50万ドルもするもので、一世紀以上にわたり、大学の研究室の外に出ることはなかった。

Tuleのセンサは30分以下で据え付けられ、一度に最大10エーカーの農地を測定でき、センサ一台の費用は1500ドルだ。

農家の人が作物の状態をモバイルでチェックできるアプリも、もうすぐリリースできる。今はPCなどからTuleのWebサイトにログインして、作物の状態をリアルタイムでチェックする。画面にはその農家の作物のデータや、向こう一週間の天気予報が出る。それを見て、その週の灌水の量を調節する。

LaBargeとShaplandは、将来的には水分の測定だけでなく、必要な作物への必要な量の灌水を自動的に行うシステムを作りたい、あるいは、誰かがきっと作るだろう、と考えている。彼らの関心対象は、もっぱら、水だ。

このようなセンサは、未来の世界の食糧生産にも貢献するだろう。35年後(21世紀半ば)の世界の人口は90億と予想されている。国連の食糧農業機構(FAO)の予想では、そのときまでに食糧の生産量を60%増やす必要がある。Shaplandによると、彼のセンサによって農家が正しい灌水をするようになれば、世界の食糧生産量は少なくとも30%はアップする。

Tuleはこの技術を大学からライセンスされた、という形になっているので、‘大学のお墨付き’が農家に対するセールストークでものを言うかもしれない、とShaplandは考えている。一方LaBargeは、地元のトマト名人からのお墨付きの方が有効、と言う。“彼らが良いと言えば、その地域の農家全員が採用するからね”、と彼は言う。

Tuleは最近、Khosla VenturesとBloomberg Betaからシード資金を獲得している。額は公開されていないが、100万ドル以上、という説がある。

同社のセンサ装置は現在、同社のWebサイトで予約販売している。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


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TechCrunch Japan

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