今未曾有の干ばつに襲われているカリフォルニアで、アグリテックのスタートアップCropXが、潅水を最適化して水の使用量を必要最小限に抑えるシステムを開発した。
それは土中に埋めた三つのセンサと、それらからの信号をワイヤレスで受信してクラウドに送るモバイルアプリの組み合わせで、ファウンダのIsaac Bentwichはこれを“土壌のインターネット”と呼ぶ。これらのセンサが、農地各部の水の必要量を正確に求めるのだ。
“今の農業には、大きな手抜きが一つある。それは、どの農家も、潅水を均一に行っていることだ”、とBentwichは言う。“もっとも進んだ農業技術でさえ、全農地を均質と見なしている”。
Bentwichによると実際には、1平方マイルぐらいの範囲内でも土壌の質は各所で大きく異なっている。そこでCropXは、詳細な実査ではなく、大学や政府機関などが一般に公開している土壌データや地形データを利用して、農地を複数の潅水ゾーンに分割する。
CropXが農家に三つのセンサを手渡すと、モバイルアプリがそれらを農地のどこに配置すべきかを示す。センサの電池寿命は最大で4年ぐらい、それらが土壌データをクラウドへ送り、するとアプリが、各潅水ゾーンで最大収量をあげうる水の量を計算する。
今CropXは、ミズーリ、コロラド、カンサスの3州で合計5000エーカーの農地の潅水に利用されている。同社は、このほど得られたシリーズAの資金900万ドル(Finistere Ventures、Innovation Endeavors、GreenSoil Investmentsなど)で、全国拡大に踏み切る予定だ。
Bentwichによると、CropXを使うようになった農家は、最大で25%もの省エネと省水量を報告している。適正潅水には、過潅水を防ぐだけでなく、化学物質の流出による環境被害を防ぐ効果もある。
米農務省によると、収量増加技術の市場の規模は2兆5000億ドルと言われている。しかし、潅水の最適化は今現在、90%以上の農家が行っていない。
Bentwichは次のように述べる:
過去150年間の三大農業革命というと、輪作(あるいは農業の個人経営化)、機械化、緑の革命(高収量化技術)だが、いずれにおいても水は無限にあると想定されている。単位収量を上げるために、つねに水が使われてきた。そして、今や水は文字通り枯渇してしまった。だから、特定の農作物の収量をほんの数パーセント上げるだけでも、その技術は10億ドル企業の機会になるのだ。
2050年の世界の人口を扶養するために今の70%増の農業生産量が必要と言われているが、そのためにはCropXのような技術の振興がますます必要だろう。