通信品位法230条の撤廃を引き合いに出し、トランプ大統領が国防予算案に拒否権を行使

前回の脅し(未訳記事)に続き、トランプ大統領は、7億4000万ドル(約766億円)の米国国防権限法案(NDAA)、すなわち年間の国防予算を定める主要法案に、拒否権を行使した。

トランプ大統領は今月初めのツイートで、セクション230(通信品位法230条)を「撤廃」する規定が入らない限り、NDAAを潰すつもりだと述べた。セクション230は重要な、そしてこれまであまり知られていなかったインターネットに関する法律で、今年の大統領選で敗北する前から、トランプ大統領が標的としていた。

「第230条の非常に危険な国家安全保障上のリスクを撤廃しなければ、我々の諜報活動は事実上不可能になるでしょう。逐一我々が何をしているか、すべて筒抜けになってしまうからです」と、トランプ大統領は拒否権に関する声明(米国大統領府公式サイト)で述べた。大統領が何を意味していたのか、あるいは国防権限法案を中国とロシアへの”贈り物”だと批判する中、何について言及していたのかは不明だ。

セクション230は、米国から “ビッグテック”への責任保護の贈り物(アメリカの企業だけに与えられる企業助成!)であり、私たちの国家安全保障と選挙の完全性に対する深刻な脅威です。私たちがそれを許すならば、私たちの国は決して安全でも安心でもありません…」

トランプ大統領はその決定の中で、セクション230の廃止を求める「超党派の声」を引用した。議会ではNDAAが圧倒的な超党派の支持を得ており、また、無関係な軍事費法案の中でセクション230の改革が真剣に検討されたことがなかったという事実にもかかわらず。

また、セクション230は「オンラインで外国の偽情報の拡散を促進する」ことから、過去に懸念を表明してきた脅威であると、これまで度々オンラインで危険な偽情報を拡散してきた大統領は主張している。

セクション230は、法律家や州、連邦政府が、テック業界における最も巨大で最も強力ないくつかの企業を抑制するために大きく動いたことで、2020年に注目を集めた。この法律は、インターネット企業がホストするコンテンツに対する責任からインターネット企業を保護するもので、大小のインターネット企業が長年にわたってオンラインビジネスを成長させるための扉を開いたと広く評価されている。

トランプ大統領は、自分のコンテンツを監視するテックプラットフォームに影響力を及ぼしたいと考え、今年前半にこのセクション230、そしてテック企業の中でも特にTwitter(未訳記事)を標的にした。5月には、大統領はテック企業の責任回避を攻撃する異例の、しかしほとんど効力のない大統領令(未訳記事)に署名。「編集、ブラックリスト、シャドウバンという選択を行う際、Twitterの選択は純粋かつ単純に、編集者としての決定である」と、大統領はこの命令に署名した際に述べている。

セクション230とNDAAに関するトランプ大統領の立場は、決して特に筋道の立ったものではなかった。NDAAは巨大な法案であり、多くの異質な事項を巻き込んだ種類のものではあるが、セクション230を廃止するためにそれを変更することは、まったく検討されていなかった。また、大統領がこだわるような、この法案の不評を言い立てることも難しい。NDAAは戦闘のみならず軍の多くの部分に資金を提供するもので、今年の法案には軍隊のための賃上げとベトナム退役軍人のための追加の健康支援が含まれている。

同様に、セクション230に関するトランプ大統領の見解は、共和党の他の多くの議員と比較しても、極端である。セクション230の変更を支持する向きは両党にあるが、議会では何を変更する必要があるかについての同意には程遠く、超党派の改革努力が続いている。来年に議会がどのような改革を行うにしても、セクション230を完全に撤廃するという結論に達する可能性は非常に低い。

大統領の拒否権行使を無効化するために、下院は月曜日に招集される予定だ。拒否権を覆すためには両院の3分の2以上の賛成が必要となる。下院は今月初め、共和党議員の大多数からの幅広い支持を含め、355対78票でNDAAを承認した。上院は12月11日、同様に党派を超えて84対13の賛成票を投じて法案を大統領に提出した。

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画像クレジット:Dustin Satloff / Contributor / Getty Images

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(翻訳:TechCrunch Japan)

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TechCrunch Japan

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