遠隔操縦宅配カートがロサンゼルスの食料品店で活躍中

ロボットはもはや、大学の研究室やeコマース大手やシリコンバレーでイケイケのスタートアップ御用達のハイテクツールではない。街の食料品店でも使えるようになった。

電動スクーターの遠隔回送で知られる設立1年目のシリコンバレーのスタートアップTortoise(トータス)は、その技術を宅配カートに応用した。同社は、地域の店舗や高級ブランドショップに電動カートを提供する目的で、オンライン食料品販売プラットフォームSelf Point(セルフ・ポイント)と提携した。地元の消費者に、遠隔操縦オペレーターの手で商品を届けるというものだ。

これら2つの企業は、すでにロサンゼルスの3社の顧客に製品を提供している。Kosher Express(コーシャー・エクスプレス)をはじめとする各顧客には、店から半径3マイル(約4.8km)以内の範囲で配達ができるカートを2台または3台が割り当てられている。歩道を自律走行する車両を運用する宅配業者のネットワークモデルとは異なり、食料品店は宅配カートをリース契約で借り受け、保管、充電、注文された商品の積み込みなどは自身で行うことになっている。

Self PointとTortoiseの初の事業は小規模なものだ。しかしこれには、ロサンゼルスの外に拡大できる素質がある。Tortoiseにとってこれは、遠隔操縦式の回送技術をさまざまに応用して水平的に事業展開するという大きなビジョンの検証するという重要な意味を持つものだ。

Tortoiseは、電動スクーターにカメラと電子回路とファームウェアを組み込み、遠く離れた場所からオペレーターがそのマイクロモビリティーを操縦して利用者の元へ届けたり、正規の保管場所に戻すという事業からスタートしている。その同じハードウェアとソフトウェアを利用して、今度は独自の宅配カートを作り上げたのだ。

Tortoiseの共同創設者で社長のDmitry Shevelenko(ドミトリー・シェベレンコ)氏は、同社の遠隔回送キットは、警備ロボットや掃除ロボット、さらに電動車椅子やその他の生活支援デバイスに応用できると話している。彼はまた、遠隔回送スクーターを作物の監視用に使えないかと農家から相談も受けている。

「現実的な観点から、一夜にしてあらゆる分野に乗り込むべきではないと考えていますが、技術的制約は1つもありません」とシェベレンコ氏は最近のインタビューに応えて話していた。

新型コロナウイルスの流行と、それが顧客の行動に及ぼした影響に動かされたTortoiseの第2幕は、宅配カートに決まった。

「現在は顧客の行動が変化する一世一代の時期なのだと、私たちは咄嗟に悟りました。あらゆるものがオンラインに移行し、人々はそれが自宅に配達されることを望んでいます」とシェベレンコ氏。Tortoiseは2020年5月にこの事業に着手してから、第4四半期には宅配カートの展開に漕ぎ着けた。それは、ハードウェアとソフトウェアと従業員の目的を変更できる、同社のリパーパス能力の賜物だ。

同社はいまも、マイクロモビリティーへの最初の技術適用に関して強気の姿勢を保っている。2020年初め、Tortoise、 電動スクーター配車サービスGoX(ゴーエックス)、技術系インキュベーターCuriosity Labs(クリオシティー・ラボズ)は、ジョージア州ピーチツリーコーナーズにて、ユーザーがアプリでスクーターを呼び出せるという6カ月間のパイロット事業を開始した。スクーターにはTortoiseの技術が搭載されている。利用者がスクーターを呼ぶと、何百マイルも離れた場所にいるTortoiseの従業員がスクーターを遠隔操縦してその人の元に届けるという内容だ。利用後、スクーターは安全な駐車場へ自動的に戻る。そこで、GoXの従業員がスクーターの充電と消毒を行い、適正に消毒されたことを示すステッカーを貼る。

Self Pointとの提携はTortoiseの次なる大きなプロジェクトだが、同社はオンデマンド宅配市場のほんの一切れに集中するだけだと、シェベレンコ氏は釘を刺した。

「速度が遅いので、温かい食事の配達には適しません」と彼はいう。Kiwibot(キウィボット)やStarship(スターシップ)などのスタートアップは、その市場に特化した小型ロボットを提供しているとシェレベンコ氏は補足した。Tortoiseの宅配カートは、大量の食品や酒などの商品の配達に特化している。

「食品産業には大きな間口があります」と話す彼は、自動化技術がいまだ開発途中である現在、遠隔操縦オペレーターと同社のキットの組み合わせを採用すれば、コストが削減できると指摘している。

カテゴリー:ロボティクス
タグ:Tortoise配達食品配達

画像クレジット:Tortoise

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(翻訳:金井哲夫)

投稿者:

TechCrunch Japan

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