郵政事業の窮状はアマゾンのせいではない。生き残るには刷新が必要だ

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(編集部注:本稿は、Oracleに買収されたAddThisの創業期エンジニアであるCyrus Radfar氏によって執筆されたものである)

トランプ大統領が最近、3回にわたってアマゾンをツイッターで攻撃した。それによりアマゾンの株価は大きく下げ、時価総額で40億ドルも失った。これはギリシャの経済を超える額だ。

トランプ大統領の批判はこうだ。アマゾンは巨額の益を出しながら、荷物を持たせている郵政公社におこぼれしかやっていない−。ツイッターを多用する大統領が展開する批判としては特段珍しいというものではない。しかし、どんな天候でも、どの時間帯でも確実に届けられるという、従来の手紙より信頼度の高い手段である電子メール、ひいてはテクノロジーがUSPS(アメリカ合衆国郵政公社)に与えた影響を検証するという点では有意義なものだろう。

郵政公社は本当に窮状にあるのか

郵政公社はアマゾンやその他の企業の荷物配達をわずかな額で請け負い、そのために毎年、何十億ドルもの赤字を出している。アマゾンは儲かる一方で、郵政公社の財政は苦しくなるばかり。まったく間抜けな話だ。どうしてこんなことが起こるのか。この稚拙な問いは、トランプ大統領が2017年12月にツイッターに投稿したものだ。この批判が何を意図しているのか明確ではなかったが、このツイートは郵政事業が本当に窮状にあるのか、もしそうだとしたらアマゾンは責められるべきなのかという論争を瞬く間に巻き起こした。

まず最初に言えるのは、郵便事業が毎年数十億ドルもの赤字を出している、というのは事実であるということ。正確に言えば、2017年は27億ドルの赤字だった。過去10年以上、郵便事業は赤字続きとなっている。また、郵政公社とアマゾンはなかなか興味深い関係にある。郵政公社と競合するUPSやFedEXがeコマースの巨人、アマゾンの荷物配達で1個につき7〜8ドル徴収しているのに対し、郵政公社はたったの2ドル。しかし、掘り下げると話はそう簡単ではない。

郵政公社とアマゾン

トランプ大統領に言わせると、郵政公社とアマゾンの関係は「まったく馬鹿げたもの」となる。しかし多くの人にとって、これは郵政事業の中では、抜け目ないビジネスの一部分にすぎないと映るはずだ。というのも、2017年、郵政公社にとってアマゾンは最大の顧客だった。郵政公社が第1種郵便を独占してそれなりの利益を出していたのはいまや昔。行政から独立した機関である郵政公社にとって、郵便事業で儲けを増やすためにアマゾンの配達を請け負うというのは賢明な策なのだ。しかも配達件数が激増する産業に郵政公社が接近するのは何も今回が初めてではない。過去を振り返ると、2010年にNetflixのDVD購読サービスだけで6億ドル、というのがある。もちろんNetflixのDVD配達サービスはすぐに廃れ、オンデマンドストリーミングに取って代わられた。そして今、アマゾンは自前での配達サービスを計画している。これこそが、大打撃になるかもしれないと郵政公社が備えるべきことなのだ。

電子メールと経済危機のダブルパンチ

技術の革新が進む中で郵政事業が最初に抱えた試練は、電子メールによるものだった。しかし、これは想定したよりも大打撃にならなかった。2002年にはほとんどの米国人が電子メールを使うようになっていたが、それでも郵政事業は2003年から2006年までの間、なんとか黒字だった。この時代、人々はまだ手紙を書き、挨拶カードを送り、何といっても請求書はすべて郵送されていた。

しかし2007年の世界経済危機は、郵政事業にとってもろに大打撃となった。おそらくこの影響はいまだにひきずっている。経済危機では何千もの事業所が苦境に陥り、その結果、経費削減の大鉈を振るい始めた。その矛先の一つが郵便だった。2000年には請求書のほぼ3分の2が郵便で届けられ、これによる郵便収益は15〜18億ドルだったと推測される。しかし2006年から2010年にかけて、郵政公社の取扱量は420億件減り、うち150億件は電子請求書に取って代わられた。

それにも増して、ソーシャルメディアの台頭が郵政公社をさらに厳しい状況に追いやった。2010年から2014年にかけてハガキの配達件数は4億3000万件減った。より多くの人がクリスマスのあいさつや誕生祝いカードを送るのにFacebookやInstagram、Snapchatを利用するようになり、郵便で送る人は激減した。当然のことながら、郵政公社にとってかつて大きな割合を占めていた郵便事業の収益は21世紀に入って少なくなっている。

政府のリスク回避の動きの中で

郵便事業の人たちは、新しいテクノロジーに脅かされるのを見ていただけで何も対策をとらなかった、と言うのは不当だろう。

郵政公社は最新のテクノロジーを扱う機関だ。例えば2014年に発表されたホワイトペーパーの中で、3Dプリントは業界に影響を及ぼしうるものであり、郵政事業はそれにより恩恵を受けることができるかもしれないと述べている。2015年のホワイトペーパーではIoTについても記述している。どちらの白書も、そうした最新テクノロジーが市民に深く浸透する前に先見の明でもって発行されている。

しかし残念なことに、そうした先見ある考え方は実行に移される前に潰されてしまった。国営企業に近いという郵政公社の位置づけは、第1種郵便を独占するという点では有利に働くが、それと引き換えに運営面では議会に左右される。どのような商品やサービスを展開するかや価格設定などは自分たちで決められるものの、他の連邦機関と異なり1982年以来、財政的な支援は受けていない。

2016年には、郵政公社は郵便事業でNetflixや他のビデオレンタル事業者との関係を最大限活用しようと試みたが、郵便規制委員会から待ったがかかった。2013年には土曜の郵便配達を取り止めようとした。これにより年間20億ドル経費削減できるはずだった。しかしこれもまた、議会により却下となった経費削減できるどころか、2016年には郵便切手を49セントから47セントに値下げする命を受け、このために年間20億ドルの負担増となった。

郵政公社と議会のこじれた関係に伴う問題は根深い。郵政公社の存在そのものについても疑問符がつきまとう。それは何かと言うと、郵政公社は270万人もの職員を抱えていて(参考までに、ウォルマートの2017年の従業員は220万人だった)、郵政公社はアメリカで最大の雇用主だ。また、FedEXやUPSが対応しないような僻地にも配達していて、つまり必要だから存在している。一方で、郵便事業は民営化すべきだという意見もあれば、郵便はすでに時代遅れで廃止すべきと主張する人もいる。

当然のことながら、郵便事業の当局は、今後どうすべきか見当がついていない。改革を進め、収益アップに取り組むのをサポートするという人もいれば、必要な改革ですら阻もうとする人もいる。

郵政公社のモットーである、雪や雨が降っていようがいまいが、暑かろうが夜の暗がりだろうが、定められた業務を素早くこなす、というのは正しい。消費者の行動が大きく変化する中での彼らの対応はまったく特筆すべきものだ。

彼らはアメリカ国民に対しサービスを行っているのであり、どうあるべきかを決めるのは彼らなのだ。しかしながら、議会のせいで、そしてフェアではないとしてアマゾンとの関係を断つことを余儀なくされた場合に郵政公社が収入を逃すことになるのは確実だろう。事は微妙で、複雑なのだ。郵政事業がなくなって損をするのはアマゾンだけではない。

世界がますますバーチャルコミュニケーションへと傾いている時代にあって、郵政公社がいかに奮闘するか、期待したいところだ。

[原文]

(翻訳: Nariko Mizoguchi)

投稿者:

TechCrunch Japan

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