金属3DプリントのDesktop Metalが同業で3Dプリントで入れ歯などを作るEnvisionTECを312億円で買収

金属3Dプリンターで知られるDesktop Metal(デスクトップ・メタル)が米国時間1月15日、同業の3Dプリント企業であるEnvisionTEC買収の意向を発表した。2002年にドイツで設立されたEnvisionTEC社は、フォトポリマー付加製造に特化しており、その技術はDesktop Metal社の既存のポートフォリオよりも、3Dプリント界の寵児であるCarbon社などと直接競合するものとなる。

今回の取引は、2020年8月にDesktop Metal社がSPACの合併トレンドの一部として株式公開に踏み切ったことに続く動きだ。これに先立ち、Desktop Metalは4億3000万ドル(約446億5000万円)の投資をきっかけにユニコーンの地位に急浮上しており、自己資金には事欠かなかった。同社は、現金と株式の組み合わせで3億ドル(約311億5000万円)を投じてEnvisionTECを買収する予定だという。

Desktop Metalがこれにより成長する可能性は大きい。EnvisionTECには190種類以上の材料に印刷できる基礎技術があるが、かたやDesktop Metalには、EnvisionTECがこれまでに構築してきたものを超えて、その技術をスケールアップさせるためのリソースがある。

このパズルの中で、デンタル分野がかなり巨大なピースであることは明らかだ。歯科用アプリケーションはこの種の大量3Dプリントの最も明確で即効性のある使用例の1つであり、実際、同社はすでに歯科分野で、Smile Direct Club(スマイルダイレクトクラブ)のような企業を含む約1000社の顧客を抱えている。新型コロナウィルスが大流行した中、同社はEnvision Oneデンタル3Dプリンターの出荷台数を前年の3倍に増やした。

Desktop Metal社のCEOであるRic Fulop(リック・フロップ)氏はTechCrunchに「これは、レストレーションから即日のフルアーチインプラントまで、あらゆるものに使用されます」と語っている。「通常、入れ歯を手に入れようとすると、インプラントデンチャー(インプラント義歯)には3週間待たなければなりません。この製品はそれを即日で行うことができる初めてのソリューションです。しかも手頃な価格で」。

このニュースに続いて発表されたプレスリリースによると、他の既存の顧客にはFord(フォード)やHasbroなどが含まれている。フロップ氏によると、買収は今四半期中に完了される予定だが、買収後もEnvisionTECは独自の部門として運営を続けるという。

「我々は、彼らの販売チャネルにてこ入れしていくことができるます」とフロップ氏は語る。「その既存の能力を拡大し、当社のチャネルを利用して金属からコンポジット、バイオマテリアル、さらにはフォトポリマー印刷に至るまでのフルソリューションを提供するためのツールとなり、(EnvisionTECを)後押しできることを楽しみにしています」。

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カテゴリー:ハードウェア
タグ:Desktop MetalEnvisionTEC買収

画像クレジット:EnvisionTEC

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(翻訳:Nakazato)

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TechCrunch Japan

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