UberがフードデリバリーPostmatesの自律型宅配ロボット部門のスピンアウトを計画中

Uber(ウーバー)の新たなスピンアウトが進行中だ。

Uberが2020年に26億5000万ドル(約2752億円)で買収した食品宅配スタートアップ企業のロボット部門Postmates X(ポストメイツ・エックス)は、計画に詳しい複数の関係者によると、別会社として分離するために入札で投資家を募集しているという。

新会社はServe Robotics(サーブ・ロボティクス)と称されるが、これはPostmates Xが開発した黄色と黒の自律的な歩道配達ロボット「Serve(サーブ)」の名称にちなんだものだ。最近、ウェストハリウッドで食品を配達するために同地域のデリバリー食料店であるPink Dot(ピンクドット)と提携したこのServeロボットは、新会社の目玉になる可能性が高い。

この件について、Uberはコメントを拒否している。

投資家に向けて提案されているこのスピンアウトが完了すれば、Postmates Xの責任者でServeプログラムを率いてきたAli Kashani(アリ・カシャニ)氏が新会社を運営することになるだろう。Anthony Armenta(アンソニー・アルメンタ)氏は新会社のソフトウェア部門を指揮し、Aaron Leiba(アーロン・リーバ)氏はハードウェア部門を担当する、つまりPostmates Xと同じポジションを維持することになる。

UberはServe Roboticsの筆頭株主として、この新会社との商業契約を維持する。引き換えに、Serve Roboticsは知的財産と資産を取得することになる。この取引に詳しいある関係者によると、Uberは新会社の約25%の株式を保持するために協議を行っているという。

Serve Roboticsという名称の法人はまだ存在しない。しかし、ウェブサイトのドメイン「serverobotics.com」は2021年1月6日に登録されている。

Uberの利益までの道のり

Uberは2019年5月に公開市場に上場した後、事業の合理化を進め、2020年は新型コロナウイルスによる圧迫を受けてそれを加速させた。今回のスピンオフも、この合理化に基づく事業戦略に沿ったものになるだろう。

2年前、Uberは配車サービスやマイクロモビリティから物流、公共交通機関、食品配達、そして自律走行車や空飛ぶタクシーのような未来的な乗物にいたるまで、交通に関する産業全体にわたり事業を展開していた。しかし、同社のDara Khosrowshahi(ダラ・コスロシャヒ)CEOは、黒字化に向けて会社を押し進めていく中で、この「動くものなら何でも」というアプローチを解体してきた。

2020年には、UberはLime(ライム)と複雑な取引を交わして、電動スクーター / 自転車シェアリングサービスのJump(ジャンプ)を事業譲渡した。また、貨物運送事業であるUber Freight(ウーバー・フレイト)の5億ドル(約520億円)相当の株式を売却し、自動運転部門のUber ATG(ウーバー・アドバンスト・テクノロジーズ・グループ)と、空飛ぶタクシーとして計画されていたUber Elevate(ウーバー・エレベート)から身を引いた。

Aurora Innovation(オーロラ・イノベーション)はUber ATGを買収したが、それはJumpとLimeの件と似たような構造の取引だった。

AuroraはUber ATGのために現金を支払わなかった。代わりにUberはATGの株式をAuroraに譲渡し、Auroraに4億ドル(約415億4000万円)を出資して、統合された会社の26%の株式を取得した。

同様に細工された取引で、Uber Elevateは2020年12月にJoby Aviation(ジョビー・アビエーション)に売却された。

Uberが投資を続ける分野の1つにデリバリーがある。同社は、デリバリーサービス「Uber Eats(ウーバー・イーツ)」の需要が急増していることに好機を見出し、この分野に置ける地位を強化するために買収する企業を探し始めた。Uberは料理宅配サービスのGrubhub(グラブハブ)を買収しようと試みたが失敗し、欧州の大手企業であるJust Eat Takeaway(ジャストイート・テイクアウェイ)に敗れた。

結局、UberはPostmatesの買収に落ち着き、2020年7月に26億5千万ドル(約2151億8000万円)相当の全額株式交換によってこのデリバリースタートアップを買収することで合意。取引は2020年12月に完了している。

Serveは親しみやすいロボット

Postmatesが歩道配送ロボットへの探求を本格的に始めたのは2017年、同社がカシャニ氏の起ち上げたLox Inc.をひっそりと買収した後のことだった。同社の研究開発部門であるPostmates Xで責任者を務めるカシャニ氏は、「なぜ2ポンド(約907グラム)のブリトーを2トンの車両で運ばなければならないのか」という疑問の答えに着手した。

Postmatesは2018年12月、最初の「Serve」と名付けられた自律型配達ロボットを公開した。その第2世代(デザインは変わらないが、LiDARセンサーが異なるほか、わずかなアップグレードが施された)は、ロサンゼルスで計画されていた商用化に先立ち、2019年夏に登場した。

Postmatesはパートナーと協力するのではなく、自社の配送データを使って、歩道ロボットを設計と展開する基礎を作ったと、10月に開催された「Mobility 2020」イベントのTCセッションで、カシャニ氏は語った。

「データを見てみると、配達の半分以上が近距離であることがわかります。それなら問題なく、これらのロボットが実際に配達を完了させることができます」と、カシャニ氏は当時、自律型配達ロボットの実用化について語っている。

Postmates Xは、同社の過去の配送データを利用してシミュレーションを開発し、それをServeロボットの設計に利用した。このシミュレーションによって、チームは必要とされるバッテリー容量や荷物室のサイズなどの機能を決定した。

このロボットは、Postmatesの配送事業のほんの一部に過ぎない。しかし、同社が商業的に事業を展開しているロサンゼルスとサンフランシスコの2都市では、新型コロナウイルスの感染流行が非接触配送の需要を煽り、ロボットへの関心が高まっているという。

カシャニ氏は2020年10月に、このロボットはロサンゼルスで何千もの配達を完了し、同市のウェストハリウッドにまで地域を拡げる準備をしていると語っていた。その拡大は昨年末、ちょっとした意外性とともに開始された。Serveロボットは、Pink Dotの店舗のシグネチャーカラーに合わせて、鮮やかなピンク色に変更されたのだ。

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カテゴリー:ロボティクス
タグ:UberPostmatesフードデリバリー

画像クレジット:Ouster

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(翻訳:TechCrunch Japan)

投稿者:

TechCrunch Japan

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