電動キックスクーターシェアのLimeがアプリ不要の乗車機能を展開、予約料金も撤廃

Lime(ライム)はさらに多くの利用者を引きつけようと、電動キックスクーターをアプリのダウンロードなしに借りることができるなど、いくつかの新機能を展開する。

マイクロモビリティ企業の同社は米国時間3月24日、新規ユーザーにとっての障壁をなくしてスクーターへのアクセシビリティを向上させるためにデザインされた一連の機能を発表した。新機能には最長10分間の無料スクーター予約、最寄りのスクーターのレコメンデーション、ダークモードでのアプリ閲覧オプションなどが含まれる。

アプリ不要のエクスペリエンスはすでに同社の130のマーケットの半分超で提供されており、デベロッパーが使用状況をモニターし、分析している。この機能は電動スクーターでのみ利用できる。同社デベロッパーによると、無料の車両予約とレコメンデーションの機能は、同社の全マーケットで電動スクーターと電動自転車を借りるときに使うことができる。

「アプリやアプリに関連する機能を構築するために当社はライダーのフィードバックを使います」とシニアプロダクトマネジャーのVijay Murali(ヴィジャイ・ムラリ)氏はTechCrunchに話した。アプリストアのレビュー、機能あるいは機能の欠如についての顧客からのクレーム、顧客調査、世界中のライダーとの研究セッションなどを参考にしてデベロッパーが新機能に取り組む際の方向性を決める。最新のアップデートについて、同社のチームは顧客が求めている3つの項目で目標を設定した、とムラリ氏は話した。

「まず1つは、多くのユーザーがこの新たな交通手段を試す用意ができているものの、アプリをダウンロードしたりコミットしたりしたくないということでした」と同氏は述べた。「2つめは、当社の車両を頻繁に利用している人が持つ価格に関する懸念。そして3つめが特に大都市で最も近くにある車両を簡単に見つけられるようにすることでした」。

現在、顧客がアプリを立ち上げると、最寄りの車両へと案内され、無料で予約するオプションが提供される。これについて、ムラリ氏はスクーターに飛び乗るプロセスを合理化し、乗車を毎日の習慣にするのをサポートする、と語った。

アプリなしでの乗車機能は、マイクロモビリティの利用が初めてという人、アプリをダウンロードする容量がスマホに残っていない、あるいは高い国際データプランを使っている人向けだ。

この機能を使うには、顧客はカメラアプリでQRコードをスキャンする必要があり、そうすることでAppleのApp ClipsあるいはAndroidのInstant App機能につながる。すると顧客は乗車を確認し、Apple PayかGoogle Payを使って乗車を開始できる。テクニカル的にいうと、ユーザーは実際にはミニアプリをダウンロードしている。フルバージョンのアプリが100MBなのに対して、ミニバージョンはたったの10MBで、スマホに留まるのは8時間のみだ。平均的なライダーにとって、その作業はファイルやアプリをスマホで開けるかのようだ。アプリをダウンロードし、アカウントを作って決済方法を設定して使用方法を読むのには5分ほどかかるが、ミニアプリは30秒しかかからず、ずっと早い。

この機能は結果的にLimeアプリのダウンロードを少なくし、そのためユーザーデータも減少する。しかし現時点では販促により関心があると同社は話す。

「比較的高いダウンロードへの変換率も目の当たりにしています」と別のシニアプロダクトマネジャーZach Kahn(ザック・カーン)氏は述べた。「手間、そして決済方法や車両を選択する必要性を抑制すると、コンバージョンが増し、最初の乗車でそれなりの割合を占めます」。

同氏は、アプリなしの乗車を経由してLimeを利用するようになった人のコンバージョンレートを明らかにしなかった。ムラリ氏は、Limeがコストを排除した時にテストを行っている都市の多くのライダーが車両の予約をし始めたと語った。以前は予約の浸透率は低く、3%ほどだった。

「すべては、社会の異なるセグメントの人々、特にサービス提供が不十分のエリアの人々がLimeの車両にアクセスする際の障壁を少なくするためです」とムラリ氏は話した。「サービス浸透が不十分のコミュニティでは、スクーターに乗車するのにいくらかかるかというのが真っ先にきます。ですので、そうした不要な予約料金を排除することは、人々をもっと乗ろうという気にさせます」。

Uber(ウーバー)とAlphabet(アルファベット)の出資を受けているLimeはブロンクスで展開されるニューヨーク市のパイロット電動スクータープログラムを獲得しようとしている企業の1社だ。ブロンクスは多くの低所得コミュニティを抱え、公共交通手段が乏しいところだ。各企業はそれぞれにユニークなセールスポイントを持っている。例えばSuperpedestrian(スーパーペデストリアン)はファーストクラスの安全機能とジオフェンスコンプライアンスの強化を選んでいる。しかしLimeの優位点は純然たるサイズと新機能をすばやく実行できる能力にあるとムラリ氏は話す。

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「当社はライダーファーストというだけではなく、どうやってそれを実行するかを正確に理解していて、そうした機能や改善がアプリで起こるようにします」とムラリ氏は述べた。「それが他社と差別化を図っている点です。どれくらいのスケールと早さで、どれほど重要な進展を遂げているか。たとえば当社はApp Clipsというかたちの新しいテックを持っていて、最初にそれをテストしてマーケットに持ってきて、そしていまあらゆるマーケットで展開中です」。

声明の中で、Lime はアプリレスの乗車を提供する初のマイクロモビリティ企業だと主張した。しかしAppleはSpinからのスクーターを借りてApp Clipsを宣伝したようだ。SpinもまたニューヨークのRFP(提案依頼書)に応じた。同社の広報担当は、同社が将来App Clipsエクスペリエンスを電動キックスクーターに持ってくるためにAppleと協業していると話した。

カテゴリー:モビリティ
タグ:Lime電動キックスクーター

画像クレジット:Lime

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

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TechCrunch Japan

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