複数の素材から成る、立体構造の電子回路を一度のプリントで作る3DプリンタVoxel8が、ARCH Venture PartnersとBraemar Energy VenturesがリードするシリーズAのラウンドで1200万ドルを調達した。これにAutodeskとSpark Investment FundとIn-Q-Telが参加した。資金はこのプリンタを、企業の備品だけでなく、一人々々のエンジニアやデザイナーのデスク上に普及させるための拡販努力に使われる。
同社の協同ファウンダでハーバード大学の教授でもあるJennifer Lewisは、このプリンタに結実した3Dプリント技術をこれまでの10年間研究し、特許も取得している。Voxel8は、導電性インクと可撓性シリコンと高強度のエポキシを使って、完動品の電子部品ないし製品を一度にプリントする。
もう一人の協同ファウンダDan Oliverの説明によると、今の3DプリンタはFDM(fused deposition modeling, 熱溶解積層法)方式でプリントするものが、圧倒的に多い。それは一種類のプラスチックを熱で溶融して押出成形する方式だ。
そしてARCH Venture PartnersのマネージングディレクターClint Bybeeの説明では、“これまで3Dプリントというと、最終製品の一つ々々の部品を個別にプリントするものが多かったと思うが、Voxel8は、その中に電子回路のある機能部品(もしくは小さな最終製品)の全体を一度にプリントする。このような能力のある3Dプリンタが市場に出るのは、実はこれが初めてなのだ”。
このVoxel8プリンタは、クワッドコプタードローンや補聴器など、さまざまな電子製品の制作に使われてきた。最初からPCBを内蔵するから、これで作った3Dのアンテナは、従来の2Dの製品よりも省スペースで性能も良い。
“このプリンタを使って、次世代の電子製品をいろいろ作れる。それが楽しみだ”、とOliverは言う。“だからデザインやエンジニアリングに関わっている人たちに、個人レベルでこのプリンタが浸透して、さまざまなイノベーションを生み出してほしい”。
お値段は8999ドルで、最初の20回ぐらいのプリントに必要な素材もついてくる。Autodeskの高度なデザインツールも、同梱で提供される。
今同社には、航空宇宙産業や自動車、国防、医療機器、アパレルなどの大企業のR&D部門から予約注文が舞い込んでいる。発売開始は、今年の終わりごろだ。