今日の世界では、約14億人の人びとが、電気を使えない。OECDのデータによるとそれは主に、東南アジアや中国、インド、アフリカのサブサハラ地域の人たちだ。
それらの地域に対する通信の整備や代替エネルギーの供給努力は行われているが、スタートアップのEvaptainersは、電気を使わず、水を利用して食品や飲料をかなり低い温度で保存することのできる、一種の冷蔵庫を作った。
Evaptainersの協同ファウンダーSpencer Taylor, Quang Truong, Jeremy Fryer-Biggsの三名が作った冷却装置は、アナログ時代に発明された“ジーアポット(zeer pot)”(二重ポット)冷蔵庫の現代版だ。その動作原理は、人間が汗をかくことに似ている。
Taylorが言うには、“汗をかくと、水の分子が相転移を起こして水蒸気になる(蒸発する)とき、体の熱を奪う。そのため、涼しく感じる。このマシンでは、タンクの中の水が浸透膜に接して蒸発する”。
同社のEV-8型冷蔵庫は、一日に1/3リットルの水と、湿度65%以下の暑い日を必要とする。ミルクなら60リットルを、外気温より約35度(華氏)低い温度で保存できる。
このデバイスと使うときは、まず上部の注ぎ口から水を入れる。水は飲用でなくてもよい。下図のように折りたためるので、これがもっとも必要とされる田舎などに、運びやすい。
同社のミッションは、貧困等で食べ物が得られにくい地域における食品の損傷腐敗の防止だが、公益事業の営利企業でもある。社員は北米に5名、北アフリカに2名いる。これまで、補助金や助成金等で50万ドル近い資金を調達している。
Truongによると、この会社の創業を着想したのは、Tufts Fletcher School of Law and DiplomacyとMITで学んだコースと、食糧援助NGOで失敗したことが契機だ。
ファウンダーは曰く、“いろんな農業援助プロジェクトで、何百万ドルも投じて冷蔵倉庫を建築しようとしているが、政治家や役人の汚職(資金の横領)などで何も建たないことも多い。それにそもそも、安定的な電力供給のないところではどうするのか、という問題の方が大きい。いちばん簡単な答は、電気を必要としない何かを作る/することだ”。
同社のメインの関心は、食糧や電気の安定供給のないところに住む人びとを助けることだが、Evaptainers冷蔵庫は今後、アウトドアスポーツやキャンプ用品としてのバージョンも、開発を検討したい、という。
“途上国市場の、支払い能力のない、貧しい消費者や食糧生産者の手にこの技術を渡すためには、アメリカの消費者から得られる高い利益率が助けになる、…そんなビジネスモデルを考えたい”、とTaylorは語る。