電通V、DNAシークエンシングの米Grailに出資――ファンド規模は2倍の100億円へ

電通が運用するCVCの電通ベンチャーズは、がんの早期発見に向けた血液検査手法を開発する米国のGrailに出資したと発表した。

Grailは2016年1月にシリーズAで1億ドルを調達しており、その際には、ビル・ゲイツ、ジェフ・ベゾス、Illumina、Arch Venturesなどが調達ラウンドに参加している。今回はそれに続くシリーズBの調達ラウンドだ。

2017年3月1日(米国時間)、GrailはシリーズBのファーストクローズで9億ドルを調達したと発表している。今回電通ベンチャーズが参加したのはセカンドクローズという位置づけであり、GrailはこのシリーズB全体で10億ドル〜18億ドルの調達を目指している。電通ベンチャーズは具体的な出資金額を明らかにしなかったが、関係者によれば数億円程度の出資金額だと見られる。

GrailはDNAシークエンス・キット大手のIlluminaからのスピンアウトによって誕生したスタートアップ。Illuminaから継承した独自のDNAシークエンシング技術をもち、大規模な臨床実験を裏付けとした血液検査手法を開発している。

Grailが開発する血液検査手法は、内視鏡や針を使って腫瘍組織を採取する従来の手法とは違い、血液を使って診断を行うというもの。血液などの体液を使った検査手法はリキッドバイオプシーと呼ばれ、患者への負担が小さい低侵襲な検査手法として注目されている。

電通ベンチャーズのジェネラルパートナーである平山悠氏は、同社がGrailに注目した理由として、「大規模な臨床実験を行うGrailは、ライフサイエンス企業であると同時にデータサイエンス企業でもある。また、予防医療という分野はマーケティングのノウハウが活かせる領域。そのことから、電通グループのクライアントやパートナー企業とのアライアンスによって彼らのサポートができると考えた」と話す。

「直接的に関わりのある医療分野の企業だけではなく、データの解析技術をもつ企業やデータセンターを有する企業など、幅広い種類のパートナーを紹介していきたい」(平山氏)

ファンド総額を100億円に増額。日本を含むアジア、欧州への投資強化

Grailへの出資の発表と同時に、電通ベンチャーズはファンド総額をこれまでの50億円からその2倍の100億円に増額することも発表した。

マネージングパートナーの笹本康太郎氏は、「2015年4月に誕生した電通ベンチャーズだが、これまでの投資案件には非常に良い手応えを感じている。今後、ファンド規模と人員を増やし、ビジネス開発を含む投資先企業へのサポートを強化していく」と話す。

グローバルファンドとして海外企業を中心に投資を行ってきた電通ベンチャーズだが、これまでは米国企業への出資案件が多かった。笹本氏は「電通グループがもつ専門性を活用できる幅広い領域の企業に投資するという方針は今後も変わらない。しかし、今後は日本を含むアジア太平洋や欧州地域への投資も強化していく」と話している。

電通ベンチャーズがライフサイエンス系のスタートアップに出資したのは今回で3度目だ。同ファンドはこれまでに健康管理デバイスのCueに出資しているほか、コオロギから抽出したタンパク質で健康食品を作るEXOにも資本参加している。

電通ベンチャーズのチーム。右から2番目が平山悠氏、その左が笹本康太郎氏。

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TechCrunch Japan

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