MedRhythms(メドリズムス)は、神経系の損傷や病気を患った人の歩行能力を測定し、改善することを目的としたデジタル治療プラットフォームの開発を進めるために、2500万ドル(約27億4000万円)の資金をシリーズBラウンドで調達した。
このラウンドは、Morningside Ventures(モーニングサイド・ベンチャーズ)とAdvantage Capital(アドバンテージ・キャピタル)が共同で主導し、以前から出資していたWerth Family Investment Associates(ワース・ファミリー・インベストメント・アソシエイツ)も参加。メイン州ポートランドを拠点とする同社は、これまでに3100万ドル(約34億円)の資金を獲得している。
共同設立者でCEOのBrian Harris(ブライアン・ハリス)氏は、ボストンのSpaulding Rehabilitation Hospital(スパルディング・リハビリテーション病院)で神経学的音楽療法の研究者として、脳卒中患者や脳の障害を持つ人々に音楽を使った治療を行っていた。そこでハリス氏は、患者やその家族から、病院外で同様の治療を受けるにはどうしたらよいかという質問を受けるようになった。適切な代替手段が見当たらなかったため、2016年にハリス氏は起業家のOwen McCarthy(オーウェン・マッカーシー)氏とともにMedRhythmsを起ち上げた。
同社のプラットフォームは、センサー、音楽、ソフトウェア、そして「リズミカルな聴覚刺激」という根拠に基づく介入を用いて、運動を制御する神経回路に働きかける。この技術は、脳の聴覚システムと運動システムが外部のリズミカルな手がかりに同期して結合するという神経学的プロセス「エントレインメント(引き込み現象)」を利用することで、時間の経過とともに歩行機能の改善をもたらす。
「音楽ほど脳を活性化させる刺激は他にありません」とハリス氏はいう。「音楽に夢中になっている時には、神経可塑性が新しい結合を作り、古い結合を強化することを助けます。神経可塑性によって私たちは新しいことを学び、脳に障害がある人は回復することができるのです」。
1年前、MedRhythmsのデジタル治療製品は、脳卒中による慢性的な歩行障害を治療するとして、米国食品医薬品局(FDA)からBreakthrough Device(ブレイクスルー・デバイス)指定を受けた。これは、パーキンソン病、急性脳卒中、多発性硬化症などの神経疾患の治療に、音楽を使用することに注目している同社のパイプラインにおける最初の製品でもある。そのために、同社はMassachusetts General Hospital(マサチューセッツ総合病院)と、ニューロイメージング(脳機能イメージング)の研究を行っている。
ハリス氏は、今回のシリーズBで調達した資金を、製品の市場投入やチームと治療パイプラインの拡張に充てたいと考えている。同社ではこの技術を商業化し、臨床試験を開始するために、FDAへの申請を準備しているところだ。
Morningsideの投資パートナーであるStephen Bruso(スティーヴン・ブルーソ)氏は、MedRhythmsのチームを1年前から知っていたと語っている。デジタルヘルス分野に積極的に取り組んでいるMorningsideは、それ以来、MedRhythmsに注目していたという。
新型コロナウイルスは、ヘルスケアの提供の仕方を根本的に変えた。これまでの病院や診療所で治療を受けるという形は、強固だが変化に抵抗するものだったと、ブルーソ氏はいう。しかし、新型コロナウイルス感染流行によって在宅での遠隔医療を余儀なくされ、それはまた、医療業界に革新をもたらすことになった。在宅療法は、患者のコンプライアンスと回復の両方において改善の余地があるとブルーソ氏は期待しており、MedRhythmsは治療を家庭に移行させるという最近の風潮を利用している。
この2〜3カ月の間に、Morningsideが興味をそそられたのは、医薬品以外の方法で脳に影響を与えるという発想だった。
「音楽的な介入によって神経学的な変化や改善を促すというMedRhythmsのやり方には説得力があります」と、ブルーソ氏はいう。「感情的な記憶は音楽と結びついていることがあります。音楽によって薬を飲むよりも豊かな体験ができる。そのためにこの会社は存在しているのです」。
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カテゴリー:ヘルステック
タグ:MedRhythms、資金調達、脳、歩行、音楽、遠隔医療
画像クレジット:Hiroshi Watanabe / Getty Images
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(文:Christine Hall、翻訳:Hirokazu Kusakabe)