意識がなく、動かない人体の頭蓋に穴を開けるロボットを発明したら、多くの人が、“うひゃー、それだけはやめてくれ!”、と思うだろう。でも大丈夫、ここでご紹介する開頭ロボットは、とても良くできている。
このロボットが作られた主な目的は、顕微手術(microsurgery, マイクロサージャリー)、中でもとくに、聴覚に障害のある人の内耳に直接音を伝えるために行う蝸牛インプラントの取り付けだ。
このインプラント手術は1年に何万回も行われているが、リスクが大きくて難しく、わずかなエラーや施術者のわずかな動きで、不治の損傷が生じる。
今では精密を要する工程で機械が多く使われているが、今回はベルン大学の研究者たちが、極端にデリケートで人体への損傷の可能性がある工程を実行するロボットに取り組んだ。それは、頭蓋の正確な位置および深さにドリルで穴を開け、蝸牛の正しい場所への(施術者の)アクセスを与えることだ。
チームのペーパーは今日発行のScience Roboticsに載っており、開頭ロボットの成功を述べるとともに、インプラントの取り付けもロボットが行う〔施術者不要〕方式も提案している。
この、ロボットによるドリル操作は、ロボットを外科手術の計画システムや、立体視像、組織タイプの生体検出など、にも応用できることを証明する足がかりになる、と彼らは考えている。もちろん、そのほかの顕微手術も、より前進させるだろう。
ロボットが施術もやるようになったら、脳にドリルで穴を開ける治療プランは不要になる。しかしそれが実現するまでは、このようなロボットが、外科手術において切望されていた一貫性〔人的ゆらぎやむらがないこと〕を提供し、医療技術の人間には不可能な部分を担うことになるだろう。