Pablo Borquez Schwarzbeckは、家族が営む農場で行われていた作業を愛しながら育った。しかし自分は農家に向いていないと感じた彼は、結局ビジネススクールの道を進むことにした。その後ロサンゼルスでProducePayを立ち上げたSchwarzbeckは、現在彼の生まれ育ったコミュニティに恩返しをしようとしている。
この度ProducePayは、生鮮作物を育てる農家に資金を提供するため、出資と借入で合計7700万ドルを調達した。森林地用の10億ドル規模のファンドや穀物の証券化など、一部の生産物には種々の資金策が存在するが、果物や野菜を育てる農家は借入に苦しむことが多い。
そこで同社は、長期保存できない作物を育てている農家のための資金調達モデルを考案したのだ。
ProducePayのサービスは、SchwarzbeckなりのAgricultural 2050 Challengeに対する取り組みだ。2050年までに90億人に達すると言われている世界の人口を支えるため、農作物の生産力向上や農業手法の変革が必要になってくると予測されており、2014年に発足したFarm 2050イニシアティブに参加している企業(Innovation EndeavorsやFlextronicsのLab IX)を筆頭に、テクノロジーへの投資こそが農業の未来を支えることに繋がると考えている投資家もいる。
一方Schwarzbeckは、農作物の生産量を増やすためには、農家が資本を手に入れやすいような環境を作ることが重要だと主張し、「多くの人が気付いていないようですが、農作物の供給量を増やす上で1番の障害となっているのが、農業を始めたいと考えている人や、生産量を今よりも増やしたいと考えている人の手元にお金がわたっていないことなのです」と話す。
ProducePayは、農家から事前に決められた価格で作物を買い取り、市場でその作物を販売している。販売された作物に関し、ProducePayの収支がゼロであれば、農家は1セントもProducePayに払う必要はなく、もしも利益が発生すれば、ProducePayの手数料を差し引いた金額が農家に還元されるようになっている。
農家は同社のサービスを利用することで、事前に収益を確定できるため、生産量やオペレーションの向上に繋がるインフラに投資できるようになるとSchawarzbeckは説明する。
さらにProducePayは農作物を担保にとっているため、万が一の場合も、農家は農場を手放さなくてすむ。1980年代には多くの農家が担保にしていた農場を失って廃業し、これが農業の産業化を早めるきっかけになった。
CoVentureは、ProducePayの革新的なアプローチに感銘を受け、シードラウンドでの投資に続き、今回のラウンドではリードインベスターを務めていた。具体的に彼らは、700万ドルの出資のうち約500万ドルをカバーし、7000万ドルの借入のアレンジも行った。なお、出資を決めた他の投資家には、既存株主のMenlo Ventures、Arena Ventures、Red Bear Angels、Social Leverageが含まれている。
「ProducePayは、例えるならば(SaaS)企業に金融機能がくっついたような会社です」とCoVentureのパートナーで、ProducePayの取締役も務めているAli Hamedは話す。「CoVentureは、南米の農家を筆頭に、従来の金融システムの中で困り果てていた人たちに対して資金策を提供したいと考えています」。
社会移動を実現するためには、資本へのアクセスが不可欠だ。ProducePayは農家に新たな資金源を提供することで、(生活を脅かすことなく)彼らの生活水準の向上に寄与している、とHamedはSchwarzbeckと同じように語っている。
「生鮮作物の栽培や収穫はとても労働集約的な仕事のため、事前に多額の資本が必要になります。そのため、天然資源や適性に恵まれた人であっても、農業を始めたいと思ったときや、既存の農場の収穫量を増やすためにインフラ投資を行いたいと思ったときに、資金不足で思うような動きがとれないということがよくあります」とSchwarzbeckはメールでの取材に答えた。
農家にとって、ProducePayのサービスは大きな意味を持っている。
「毎年自分や家族の生活をリスクに晒す代わりに、農家はProducePayのローンを利用することで、ビジネスの可能性を最大化できると同時に、来年まで生き残れるかどうかを心配せずにすみます」とHamedは話す。
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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter)