飲食店の仕入れコストを減らすプラットフォーム「クロスマート」を運営するクロスマートは9月24日、ベンチャーユナイテッド、セゾン・ベンチャーズ、XTech Ventures、梅田裕真氏などを引受先とする第三者割当増資により総額1.2億円を調達したことを明らかにした。
同社はTechCrunchでも何度か紹介しているXTechの子会社として設立されたスタートアップ。2019年4月より展開するクロスマートでは、飲食店と卸売業者をつなぐことで飲食店に「仕入れコストを削減する手段」を、卸売業者には「新たな顧客開拓チャネル」を提供してきた。
飲食店の食材原価率は一般的に30%ほどとも言われるように、店舗にとって仕入れコストの削減は利益を増やす上で大きな影響を与える。ただクロスマートがメインターゲットとしている小規模の飲食店や個店の多くは自ら把握している仕入れ先の選択肢が限られているため、簡単にこのコストを減らせるわけではない。
そこで従来は飲食店コンサル経由で複数業者に見積もりをとったり、「飲食店.COM」のようなマッチングサイトを使ったりしていたわけだけど、クロスマートはそれをよりシンプルに、かつ効果的にできるような仕組みを整えた。
同サービスのウリは飲食店が1ヶ月分の納品伝票を登録するだけで、複数の卸売業者から一括で見積もりの提案を受けられることだ。スマホから請求書を撮影しさえすればいいので作業時間はだいたい10〜15分ほど(登録作業自体をクロスマートに依頼することもできる)。日々の業務内で無理なく使えるだけでなく、コンサルに依頼する場合などと違って飲食店側の利用料金が無料のためハードルも低い。
「(飲食店としては)どうしても集客の方を優先しがちだが、実は売上を伸ばすよりも仕入れコストを削減できた方が経営的なインパクトが大きいことも多い。クロスマートは納品データを軸に、今よりもコストが下がるというピンポイントの提案だけが届く。無駄な提案は一切こないことが他にはない特徴だ」(クロスマート代表取締役の寺田佳史氏)
「飲食店の人たちは仕入れ以外の仕事もあるので、仕入れ先の選別だけに膨大な時間をかけるというのは難しい。従来の仕組みでは自分で積極的に情報を集めて、複数の業者に問い合わせた上で話を聞く必要があった。クロスマートでは納品書をあげさえすれば、後は相手から情報が届く。ある意味“受け身”の姿勢で効果的にあいみつを取れる」(クロスマート執行役員の岡林輝明氏)
サービススタートから約5ヶ月が経った現在は約250店舗の飲食店と約50社の卸売業者が利用。平均で5%のコスト削減を実現している。
「この半年ほど、まずは飲食店の成功体験を作ることを目標にやってきた中で、大きなものでは年間60万円のコスト削減につながるような例もでてきた。単にコストを下げたというだけでなく、その先で顧客向けのキャンペーンにお金を使えるようになったり、アルバイトスタッフの給料をあげることができたりなど、成功事例と言えるものが増えている」(寺田氏)
クロスマートのビジネスモデルは飲食店側からはお金を受け取らず、卸売業者から月額の利用料を得る構造。ミニマムでも月額5万円からのため、当然ながら卸売業者がそれだけの料金を払ってでも使いたいと思うサービスになっている必要がある。
その点についてはこれまでになかった「新規顧客の開拓チャネル」として卸売業者から評価されているそうで、毎月10〜20件のペースで利用企業が増えているという。
「新規開拓のために飛び込み営業をしている業界。優秀な営業マンであっても獲得できるのは月に3〜4件とも言われているので、月額数万円を払っても新たな顧客が獲得できれば十分ペイする。Web上で双方をマッチングする既存サービスは『食材を買いたい』という飲食店の書き込みに対してレスをする形が多く、その飲食店が何を買っているのかがわからない状態で提案をする。クロスマートの場合は、どの飲食店が何をいくらで買っているか把握した状態で商談を開始できるので、卸売業者にとっても効率がいい」(寺田氏)
今のところ卸売業者側のユーザーは大きく2パターン存在するとのこと。1つはすでに営業マンが何人もいる業者が営業活動をより生産的に行うべく導入するケース。そしてもう1つが人員が足りず営業活動を積極的にできていない業者が、事業を伸ばすために導入するケース。
どちらにせよ無闇に営業マンを増やすよりも効果が見込めるということで、引き合いが増えているそうだ。
今回の資金調達は飲食店側を中心に、双方の利用企業が増えて成功事例が生まれているタイミングで「営業を含めて一層アクセルを踏むため」のもの。人材採用を強化しさらなる事業拡大を目指すという。
「目標として掲げているのは外食産業の生産性自体をあげていくこと。飲食店と卸売業者をマッチングすることで仕入れのコストを削減するのはその1歩目で、ゆくゆくは日々の受発注や代金の支払いなど飲食店のバックオフィスの生産性向上を一気通貫でサポートできるサービスを目指したい」(寺田氏)