駐車場シェアリングサービス「akippa」を運営するakippaは5月22日、既存株主の住友商事など7社を引受先とした第三者割当増資により、総額で8.1億円の資金調達を実施したことを明らかにした。
今回の調達は既存事業の拡大とともに、同社が今後見据えるMaaS(Mobility-as-a-Service)を軸としたモビリティプラットフォームの構築に向けたもの。調達先7社および各社との業務連携の内容は以下の通りだ。
- 住友商事 : 2016年9月に業務提携、2017年にakippaへ出資。モビリティ部門と連携しカーシェアの駐車スペースやEVの充電スポットなど、中長期的にakippaの駐車場を活用。海外展開のサポートも
- 日本郵政キャピタル : 郵便局等の駐車場や遊休地の貸し出しを検討
- JR東日本スタートアップ : 2018年3月より保有する駐車場をakippaで貸し出し開始。今後もJR東日本沿線の駐車場をakippaを通じて提供、鉄道と2次交通とのシームレスな連携へ
- ニッポンレンタカーサービス : 2018年内を目標にID連携を進めレンタカーと駐車場をセットで予約できる仕組みを目指すほか、カーシェアステーションとしてakippaの駐車場を活用
- FFGベンチャービジネスパートナーズ : 九州エリアでのakippaの展開支援
- 中部日本放送 : 東海エリアでのakippaの展開支援とグループの各種事業との連携
- 千島土地 :大阪中心に関西エリアでのakippaの展開支援
なおakippaはこれまでに約16億円を調達していて、今回のラウンドで累計の調達額は約24億円となる。
会員数70万人、累積の駐車場拠点数も2万箇所を突破
akippaは2014年4月にリリースされた、駐車場のシェアサービスだ。貸し手側は空いている駐車場を貸し出すことで駐車料金の50%を収入として得られる点が大きなメリット。導入時に精算機や車止めなど初期投資が不要で、時間帯や日数も柔軟に選択できる。
一方の借り手はアプリから15分単位で駐車場を予約することが可能だ。もともとが空きスペースなので料金がリーズナブルなことに加え、事前予約制・キャッシュレス方式を採用(クレジットカードもしくは携帯料金と合算で支払う)。当日現地でコインパーキングの空きが見つからず焦ることもないし、支払いの手間もない。
akippa代表取締役社長の金谷元気氏によると、2018年4月時点で会員数は70万人以上、累積の駐車場拠点数も2万箇所を超えているという。特に1年で倍以上になったという拠点数については、個人のものだけでなく大手企業が提供する駐車場が増加傾向にある。
1月には東京都内のタクシー会社の車庫を貸し出す実証実験も実施するなど、幅広い業界との繋がりを強化。またコインパーキングやSUUMO月極駐車場を提供するリクルートなど、同業他者との連携も積極的に行ってきた。
「前回のラウンド(2017年5月)以降はとにかく駐車場を増やすことにフォーカスしてきた。それまでは需要に対して供給が全く追いついていない状況で、キャンセル待ちが多発するスペースも少なくない。駐車場がなくて困っている人が確実にいるのに、その課題を解消しきれていなかった」(金谷氏)
そこで明確な供給不足の打開策としてakippaが着手したのが、これまで導入が難しかったゲート式駐車場の開拓だ。ゲート式駐車場はコインパーキングや商業施設などでよく見かける、入り口で駐車券を取り、出口で清算するタイプの駐車場のこと。
akippaでは先日、このゲート式駐車場をakippaに対応できるようにするIoT端末「シェアゲート」を発表した。ゲート式駐車場でも事前予約・スマホ決済ができるようになるということなのだけど、これが同社にとって大きな意味を持つのだという。
「akippaに登録されている拠点数は順調に伸びてきているものの、拠点あたりの台数は5台くらいの所が多くすぐに埋まってしまう。一方のゲート式の駐車場は通常の駐車場と比べて規模が違う。200〜300台規模の駐車スペースを持つ拠点も珍しくなく、ニーズのあるエリアで開拓できた場合のインパクトが大きい。今後はシェアゲートを通じて1施設あたりの駐車台数を増やしていくことにも取り組む」(金谷氏)
金谷氏いわく、ARPU(アープ / ユーザー1人あたりの平均売上高)を増やす1番の方法は駐車場を増やすこと。特に東京ドームなど「予約ニーズの多い場所に、いかにたくさんの駐車スペースを持っているか」が重要だという。
引き続き多方面での連携も進めながら、2020年に拠点数を10万箇所まで増やすことが目標。シェアゲートについても2019年末までに1000箇所での導入を目指すという。
駐車場シェアに留まらない、モビリティプラットフォーム構築へ
ここからは少しだけその先の話をしてみたい。冒頭でも触れたように、akippaが見据えているのはMaaSを軸としたモビリティプラットフォームだ。これは駐車場や車といった移動に関連するツールを「モノ」としてではなく「サービス」として提供するということ。カーシェアや駐車場シェアがまさにその一例だ。
「akippaが考えるMaaSの第1フェーズは、車を持っていなくてもカーシェアと駐車場シェアを使って家から目的地まで快適に移動できるもの。ここではカーシェアを提供するプロバイダーのサービスに加えて、自社でC2Cのカーシェアをやることも視野に入れつつ、一連のサービスがakippaIDで予約決済できるようにする」(金谷氏)
金谷氏によると70万人のakippa会員のうち約50万人が車を保有しているそう。ただし約8割の時間は車を使わず持て余しているとのことで、その時間を使って残りの20万人にC2Cで車を貸し出すというモデルが成り立つと考えているようだ。
とはいえ、それだけではプラットフォームとしては車が足りないので、プロバイダーのサービスもakippaから利用できるようにする。その第一弾が調達先である日本レンタカーであり、今後の住友商事だ(住友商事は2018年4月に北米のカーシェア事業者Turoに出資。日本を含むアジアでサービス展開を進めていく方針を明らかにしている)。
もちろん車だけでなく駐車場も各地で必要になる。この点についても「日本でたくさん土地を持っているJR東日本や日本郵政と連携をとっていきたい」(金谷氏)とのこと。今回の資金調達は金谷氏が何度も言及していたが、足元の駐車場シェア事業の拡大だけでなく、その先にあるモビリティプラットフォームを見据えたものになっている。
「2020年までは駐車場シェアを中心に事業を成長させていく方針。そこから徐々にMaaSの第1フェーズに取り組む。最終的にはカーシェアの車が自動運転車に変わり、akippaで呼び出すと現地まで迎えに来る。そして目的地で人を降ろした後は車だけが駐車場兼充電spotにいく、という世界観を実現したい。akippaは困りごと解決屋。2030年に世界最大のモビリティプラットフォーマーになるということをビジョンに、モビリティに関する課題を解決していきたい」(金谷氏)