麻布大学は11月30日、獣医学系大学で初の仮想現実(VR)技術を採用した教育を開始したと発表した。同獣医学部獣医学科 小動物外科学研究室 高木哲准教授の開発によるシステムを利用。獣医外科学実習の授業において、360度カメラで撮影したVR動画をゴーグル型VRヘッドセットで視聴することで、高い臨場感をもって外科手術の基礎などを体験できる。
1890年創設の麻布大学は、今年2020年には学園創立130周年を迎え、獣医系大学としては2番目に長い歴史を持つ大学。獣医外科学実習は、外科手術に必要な器具・機材、減菌・消毒法の手技について基本的な技術を習得し、外科手術の基礎を学び、実践する授業という。VRを採用した教育は医学・医療系で利用されている例があるものの、獣医学系においては、国内でまだ例のない先進的な取り組みとしている。
開発したシステムは、VRヘッドセットにiPhoneを装着してVR動画を視聴するというもので、24セットを導入。360度カメラにより撮影した3D動画を同時に24名の学生が視聴可能で、学生はVR技術の特性を活かした没入感のある、高い臨場感の3D動画で手術や処置の手技を学べる。全学生がベストポジションで視聴できるため、実習に効果的な事前学習が行える。
またVRヘッドセットを装着し頭を上下・左右に向きを変えると、連動して動画の視点が変わるので、様々な角度の視点から手術の様子などを確認できる。そのため、手元だけでなく、全体の様子や雰囲気も把握でき、一般的な動画では実現できない教育効果を得られるとしている。
同システムは、同時に多数の学生が視聴できるため、同学の獣医学科(定員120名)において、教育の効率と質の向上に役立つという。学生によるアンケ―ト結果も満足度が高く、教育効果の向上が期待できるとしている。さらに、動物を使用した手術(手技)などを何度も繰り返して実施する必要がないため、動物個体の負担を軽減できるとした。
麻布大学は、私立大学として動物学分野の研究に重点を置くトップクラスの実績を基盤に、新たな人材育成に積極的に取り組んでおり、今後は、これまでの経験を活かしてより質の高いVRコンテンツの制作を目指すとしている。なお、VRを活用した獣医学教育の整備の一部は、文部科学省科学研究費(JP18K19256)の助成を受けて実施しているという。
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