IoTカメラと機械学習で、計器点検を効率化するクラウドサービス「LiLz Gauge(リルズ・ゲージ)」を運営にするLiLzは2月9日、シリーズAラウンドとして約2億5000万円の資金調達を実施したことを発表した。引受先は環境エネルギー投資、ドーガン・ベータの各ファンド、Sony Startup Acceleration Program、沖縄振興開発金融公庫など。
ビルや病院、工場など、機械を扱う施設では設備の点検を毎日人が行っている。計器の数値を読み取って異常がないか確認するのだが、LiLzはこうした点検作業を人が足を運ばなくともできるようにしたい考えだ。LiLzは専用IoTカメラ(LiLz Cam)を計器を撮影しやすい場所に設置し、撮影画像をクラウドサービス「LiLz Gauge」から確認できるようにすることでこれを実現する。また、計器の読み取りには機械学習を使い、数値の候補を出することで点検者の負担を減らす仕組みとなっている。
計器点検と言うと大きな工場に限った話かと思うが、LiLzの代表取締役社⻑の⼤⻄敬吾氏によると、もっと身近なところでも行われているという。例えば、ビルや病院のボイラー室などにも数百個単位で計器はある。計器の点検には月1回行う検針と、1日1回程度、設備が正常に動いているかを確認する日常点検とがあり、LiLz Gaugeは主にこの日常点検の効率化を目的としている。
大きな工場の場合、人命に関わる重要な計器はスマート化しているが、それ以外のものではまだアナログ計器が多いと大西氏は話す。アナログ計器は原価が数百円なので、産業機器メーカーにとって計器をスマート化するのはコストに見合わない。古い設備もスマート化するにはコストがかかる。そのため、結局人が巡回して点検する形になってしまうことが多いのだそうだ。
LiLz Gaugeは後付けが可能なこと、さらに1台のカメラで複数の計器を読み取れるため、ひとつの計器のスマート化のコストを抑えられるのも利点と大西氏は言う。カメラの画像に写っていれば、10個以上でも計器を読み取ることが可能だ。
製造業から遠く離れているからこそのメリット
LiLzは2017年7月に創業し、沖縄を拠点としている。こうしたサービスの場合、顧客であるビルや工場などに近い立地の方が良いのではないかと思う。この点について、大西氏はもともとチームメンバーが沖縄を拠点にしていることに加え、顧客と地理的に離れていることにはメリットもあると説明する。
「製造業がないところでやる意味としては、過去のしがらみがないというのがあります。また、地理的に離れているがゆえに、工夫してビジネスをしようというスタンスが生まれました。簡単にサポートできないので、商品の完成度を上げる方向性に自然となります。なので、離れていることがメリットになっているのです」。
販売に関してはパートナー企業と契約し、カメラの設置や現地のサポートも任せているので、LiLzは沖縄からもっと良いプロダクトを出していくことに専念できるという。LiLz Gaugeは2020年6月に提供を開始した。今ではビル、病院、プラント、発電所、下水処理場、道路関連設備などで導入が進み、約1200台が稼働しているという。今回調達した資金は、次の機種の開発と、販売、開発体制の強化に使うと大西氏は話している。