100万人以上の若者が利用するグループビデオチャットアプリHouseparty

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ライブストリーミングには、大きなイベントを放映したり、一対一のビデオコールをしたりする以外にも使い道がある。Housepartyを使って、一日に合計2000万分も会話している100万人の若者はそのことを良く知っている。Housepartyとは、ティーンに大人気のグループビデオチャットアプリだ。

今はなきMeerkatをもとに開発されたHousepartyは、同時性を備えたソーシャルネットワークという、新たなカテゴリーを牽引しているサービスで、実際に友人と会って話すのに最も近いエクスペリエンスを提供している。

フィード上に投稿して誰かがLikeボタンを押してくれるのを待ったり、メッセージ機能を使ってテキストやメディアを送受信したりする代わりに、Houseparty上のやり取りは全てリアルタイムで行われる。しかも、Housepartyでは誰かが中心となってコミュニケーションが行われるのではなく、スクリーンを最大8分割することで、会話に参加している人全員が一緒に話したり笑ったりできるようになっているのだ。

インターネット上のサード・プレイス

ファウンダーのBen Rubinは、Housepartyのことをインターネット上の居間のように考えていると話す。しかし同サービスの例えとして、居間はやや孤立性が強いように感じられる。Google HangoutsなどのグループビデオアプリとHousepartyの大きな違いは、会話に参加して欲しい人に対して、誰かを家に招くように、リクエストを送る必要がないという点だ。同サービスでは、ユーザーがオンライン状態になれば、すぐに「家の中」で他にアプリを開いている友人とパーティーを始めることができる。

これこそ、社会学者の言う「サード・プレイス」に、Housepartyがネットサービスの中で最も近い理由だ。

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「ファースト・プレイス」は人の家、つまり親密だが外の世界からは孤立した場所を指す。そして「セカンド・プレイス」は、職場のように、社会的だがフォーマルで大きな責任が伴う場所を指す。最後に、「サード・プレイス」は、カフェやバー、ショッピングモールのように、リラックスや人との交流、アイディアの共有、ブラブラして過ごすことなどを目的とした公共のスペースを指している。サード・プレイスは、それ以外の場所の厳しさに疲弊した心を休める場としても利用されることがある。

houseparty-appオンライン環境では、しばしばサード・プレイスが、意図的に作られずとも自然発生することがある。World Of WarcraftのようなMMORPGのプレイヤーの中には、ログイン後すぐに戦闘に加わるよりも、一緒にダベる人がいないかまず周りの様子を伺うという人もいるのだ。さらにSecond LifeやAltspaceのような仮想世界では、架空の家を建てたり、コンテンツを消費するのではなく、オンラインコミュニティへの出入りを目的としたユーザーの存在も確認されている。

Housepartyは意図的にサード・プレイスをつくり出し、そこへはユーザーの電話帳の中に存在する、現実世界のソーシャルグラフのどこからでもアクセスできるようなつくりになっている。その結果、ユーザーは自分が動かなくても友人と会うことができるほか、何かを作りだすというプレッシャーを感じることなく人と交流することができるのだ。

ティーンや若年層は、持ち余した時間を使って、友人と集まりたいという強い願望を持っている一方で、家族からの自立や交通手段、家の所有権の問題からその思いを完全には叶えられないでいる。その背景こそ、Housepartyが、ユーザーの60%以上を占める24歳未満の若年層に人気を博している理由だ。

パーティーは続く

新鮮な仕組みのおかげもあり、Housepartyは5月のiOSアプリのチャートで総合3位に急浮上したが、現在でも同アプリは、一発屋では終わらない力を持っていることを証明している。今週のチャートで29位まで順位を戻したHousepartyのデイリーユーザー数は、本記事のインタビューから数日経った時点で120万人を突破した。同時性を持ったこのアプリでは、ネットワーク効果が全てを握っている。既存ユーザにとっては、友人が新たに1人Housepartyを利用し始めるだけでも、アプリの価値が急激に上昇するため、Housepartyがエンゲージ率を維持できれば、サービスの価値が雪だるま式に上がっていくことが予想される。

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それに加えて、同社はサーバーをダウンさせないように努めなければならない。というのも、ライブストリーミングアプリのMeerkatからHousepartyへのピボット後、Housepartyの親会社であるLife On Airは、シリーズBでGreylockから調達した1400万ドルを引き伸ばして使うため、従業員数を36人から現在の11人へと減らしたのだ。

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当時Rubinは、PeriscopeやFacebook Liveが得意とするブロードキャスティングの分野では、Meerkatには勝ち目がないと気付いた。競合他社には、多くのファンを持つ配信者を雇って、プレミアムなコンテンツを配信するための資金力とコネクションがあったのだ。そこで、Life On Airはコストと人員をカットしながら、携帯電話のカメラという広く使われている入力機器を利用し、一般層をターゲットとしたHousepartyの開発を進めた。

これこそ、FacebookやInstagram、Twitter、Snapchatといった競合ソーシャルメディアが、Housepartyをコピーするのが難しい理由だ。Housepartyの同時的ライブ体験は、ユーザーがアプリを開いた瞬間に会話に加われなければ意味がない。そしてこの機能は、Instagramが本日発表した、ダイレクトグループメッセージへのライブ動画機能追加のように、あと付けできるものではない。さらに競合となる大手企業が、同時接続型のグループビデオチャットをサービスの中心に置くという極端なピボットを行うとは考えづらい。

つまり、Housepartyこそがユーザーの集う場所なのだ。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

投稿者:

TechCrunch Japan

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