総額880億ドル近くにのぼる10件の注目を引くディールがあったこともあり、今年M&Aの動きは活発だった。企業は財布の紐を緩め、巨大な買収に金をつぎ込んだ。この880億ドルにはDellが再上場するためにVMwareトラッキングストックに払った230億ドル超と、我々のリストには載っていない他のいくつかの10億ドル超のディールは含まれていないのは記すに値する。
昨年の大きなディールにはIntelによる150億ドルでのMobileEye買収、Ciscoの37億ドルでのAppDynamics買収が含まれるが、大きなディールはさほどなかった。今年2件の大きな買収を行なったAdobeは昨年はほぼ静かで、小さな買収1件のみだった。Salesforceもまた2017年はおとなしく、活発だった2016年のあとでデジタル・クリエイティブ・エージェンシー1社の買収に終わった。SAPも2017年は買収1件で、Gigyaに3億5000万ドル払った。Microsoftは9社買収と活発だったが、主に小さなものばかりだった。おそらくみな、2018年のためにお金を貯めておいたのだろう。
対照的に今年は、大きな動きとなった。もしくは、元に戻ったというべきか。あらゆる面でそうした動きが見て取れる。
軌道修正やマーケット成長を模索する大企業は、買収対象をあさり、高価だがつまらないものを持ち帰ってきた。ディールのいくつかはまだ規制に絡んでの認可待ちの状態で、2019年前までにクローズしそうにない。しかしながら、こうした大きな資金が投入されたベンチャーが買収サイドが望んだ通りの配当を払うことになるのか、それとも風の中の塵といったM&Aになるのか、判断するにはまだ早い。
IBM、Red Hatを340億ドルで買収
今年断トツで最大かつ派手な案件はIBMによるものだ。社運をかけて340億ドルという驚異的な額でRed Hatを買収した。IBMはこの買収をハイブリッドクラウド事業の強化につなげたいようだ。これは大きな賭けであり、IBMが組織として成功したかどうかは数年内にわかるだろう。
Broadcom、CAテクノロジーズを185億ドルで手中に
チップメーカーのBroadcomが今年2番目に大きな額を払ったこのディールは予想されていないものだった。大枚を払ってBroadcomが得たのはITマネジメントとソフトウェアの古い会社だ。おそらくBroadcomは、チップ製造以外の分野に事業拡大する必要を感じ、CAがそれを補う手段となった。しかしこれはどちらかといえば高い買い物だった。
SAPが Qualtricsを80億ドルで買収
IBMやBroadcomの額には及ばないが、SAPはIPO直前だったQualtricsを先月買収し、いまだ80億ドルという莫大な額を払い続けている。SAPは、QualtricsがSAPのバックエンドのERPシステム内にある運用データと、フロントエンドにあるQualtricsの顧客データをつなげるのに一役買うと考えている。それが正しい考えだったかは今後明らかになる。
Microsoft、GitHubを75億ドルで買収
6月、Microsoftはデベロッパーにリポジトリを提供しているGitHubを唐突に買収した。かなりの額だったが、Diane GreeneはGoogleがGitHubを買収できなかったことに後悔の念を示した。それは、クラウド企業はデベロッパーのハートを掴むのに一生懸命だからだ。MicrosoftはGitHubユーザーにプロダクトを出すよう働きかけるチャンスを手にしたが、MicrosoftがあまりにプッシュしすぎるとGitHubユーザーは急停止するかもしれず、踏み込むときには注意しなければならない。
Salesforce、MuleSoftを65億ドルで獲得
Salesforceは2018年のM&Aパーティーで取り残されたわけではなかった。3月にこのCRM大手はAPIインテグレーションベンダーのMuleSoftを65億ドルで買収すると発表した。Salesforceにとっては大きなディールだった。というのも、Salesforceは買収に積極的だが、それらは通常、より小さい規模のものだからだ。しかしMuleSoftの件は鍵となる買収だった。なぜかというと、買収によりSalesforceはオンプレミスだろうがクラウドだろうがどこにでもあるデータにアクセスできるようになるからだ。これはSalesforceが前進する上で鍵となりえる。
Adobe、47億5000万ドルでMarketoを掴み取る
Adobeはクリエイティブクラウドに強みを持つ強固な企業になった。一方で事業のマーケティング面で収入を生み出そうとの試みを展開してきた。そのためにもMarketoを47億5000万ドルで買収し、今年初めに16億8000万ドルで買収していたMagentoと組み合わせてすぐさまマーケティング事業を推進している。
SAP、CallidusCloudを24億ドルで買収
SAPはここで名の挙がっている他のテック大企業のいくつかのようには多くの買収はしない。しかし今年は2件買収を行なった。Qualtricsを80億ドルで買収しただけでなく、CallidusCloudも24億ドルで手に入れた。SAPはERPソフトウェアを使ったバックオフィスの管理で知られているが、買収によりクラウドベース、フロントオフィスの売上プロセスをミックスさせることになる。
Cisco、Duo Securityを23億5000万ドルで手中に
Ciscoは過去さまざまな種類のソフトウェアサービスの買収に熱心だった。そして今年はDuo Securityを23億5000万ドルで買収し、セキュリティー部門に加えた。ミシガン拠点のこの会社は自前のモバイルデバイスを使いながらのアプリを企業が確保できるようにサポートしている。Ciscoがセキュリティ戦略を前に進める上で鍵を握る要素となるかもしれない。
Twilio、SendGridを20億ドルで買収
Twilioにも今年動きがあった。このリストに載っている他のテック大企業と同じリーグではないが、Twilioのプロダクトセットを推し進めるかもしれないと、SendGridを手に入れるのに喜んで大金を払った。コミュニケーションAPI企業として名をはせるTwilioはSendGridに同じ性質の精神を見出し、このAPIベースの電子メールサービスを手に入れるのに20億ドル払った。
Vista、Apttioを19億4000万ドルで
Vistaエクイティパートナーズはこのリストに載っている唯一のプライベートエクイティ企業だが、企業のテクノロジーに関心がある。企業がオンプレミスの資産とともにクラウド資産をも理解するのを手伝う会社をApttioとともに立ち上げる。Apttioは、先月Vistaが19億4000万ドルで買収する前は公開企業だった。
イメージクレジット: akindo / Getty Images
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(翻訳:Mizoguchi)