Charli D’Amelio(チャーリー・ダミリオ)氏は、TikTokで最もフォロワー数が多く最も稼いでいるクリエイターだ。この17歳のスーパースターとその家族は、短い動画から得られる短期間の富よりもさらに先を見ている。米国時間2月23日、ダミリオファミリーはLightricksとのパートナーシップを発表した。LightricksはFacetuneやVideoleapといった写真やビデオ編集アプリのメーカーで、アプリのダウンロード数は合計で5億回を超えている。
チャーリーと、姉で同じくTikTokのスターであるDixie(ディクシー)、コネチカット州上院の共和党候補だった父のMarc(マーク)、元モデルの母Heidi(ハイディ)のダミリオファミリーは、Lightricksの株式を取得し戦略アドバイザーとして参画する。Lightricksはファミリーの投資額を明らかにしていないが、ファミリーからの投資は同社が最近調達したシリーズDの1億3000万ドル(約149億5000万円)とは別であると認めた。ファミリーは資金面の支援の他、The247というエディトリアル記事サービスに限定コンテンツを提供する。
Lightricksはダミリオファミリーとのパートナーシップの発表に加え、リンク・イン・バイオに関してLinktree、Beacons、Snipfeedなどのプラットフォームの競合となるLinkInBioのサービスも発表した。LightricksのLinkInBioの利用は無料で、クリエイターがソーシャルプロフィールやウェブサイトへのリンク、そして重要なポイントとしてStripeを利用した投げ銭機能を追加してカスタマイズできる。もっとも、ライバルのリンク・イン・バイオプラットフォームはもっと洗練された収益化手段を提供している。例えばSnipfeedには、購入者向けにパーソナライズした非同期のタロット占いのようなデジタルグッズの販売機能がある。しかしそのトレードオフとして、高機能なプラットフォームはサブスクリプションの課金や売上手数料の徴収などをする傾向がある。
Lightricksの共同創業者でCEOのZeev Farbman(ゼエブ・ファーブマン)氏は報道発表の中で「(ダミリオ)ファミリーはクリエイターエコノミーのトップランナーであり、世界中の前途有望なクリエイターに常に刺激を与えています。一家が開発プロセスのあらゆるステップに携わることとなり喜ばしく思います」と述べている。
Crunchbaseのデータによれば、ダミリオファミリーとしてのスタートアップへの投資はこれが初めてだ。ただしチャーリー・ダミリオ氏自身は2021年にティーン向けバンキングサービスのStepが1億ドル(約115億円)を調達したシリーズCに参加している。セレブがスタートアップへの投資を通じて資産を増やそうとするのはめずらしいことではない。俳優のAshton Kutcher(アシュトン・カッチャー)氏も、ミュージシャンのThe Chainsmokers(ザ・チェインスモーカーズ)も、女優のJessica Alba(ジェシカ・アルバ)氏もそうだ。しかしダミリオファミリーは、インフルエンサーから投資家へという新しいジャンルを体現している。
ダミリオファミリーはTechCrunchへのメールで「我々はスタートアップの分野に強い関心を持ち、起業家や新しい企業と出あうことを楽しみにしています。我々は今後数件の投資をして、すばらしいプロダクトやサービスを構築できると思われる企業を支援する予定です」と記した。
TikTokのクリエイターは、テニスプレイヤーのSerena Williams(セリーナ・ウィリアムズ)氏やハリウッド俳優のRyan Reynolds(ライアン・レイノルズ)氏といったスターのように長く輝き続けることはできないと不安に思っているかもしれない。両親のサポートのもと、チャーリーとディクシーの姉妹はアパレルのHollister、リングライトの会社、さらにはHuluのリアリティ番組までさまざまなベンチャービジネスを手がけて、すでに知名度を高めている。
しかしティーンの億万長者の苦闘(そう、多くの苦闘だ)を描いた物語でもあるNetflixの「Hype House」と同様に、この「ダミリオショー」は常にオンラインで注目されることによるメンタルヘルスへの負の影響に姉妹がどう対処するかの意味合いも強い。Lightricksとのパートナーシップは疑問のある選択のようにも思える。LightricksのフラッグシップアプリであるFacetuneはレタッチツールとして使われることが多く、身体イメージの問題の一因と考えられてきたからだ。ティーンのメンタルヘルスに対するソーシャルメディアの負の影響は最近大きな議論となっているが、Facetune以外にもLightricksのツールは簡単にビデオを編集するだけの目的でよく使われている。米国時間2月22日にチャーリー・ダミリオ氏はニキビ(ティーンにはごく普通のことだ!)がはっきり写った自撮りを投稿した。レタッチツールは今後も存在するし、本来は邪悪なものではないが、問題はどのように(そしていつ)我々がそれを使うかだ。
画像クレジット:Lightricks
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(文:Amanda Silberling、翻訳:Kaori Koyama)