そろそろ、といったところか。
設立から4年が経ったGIF検索サービスのGiphyが、ついにマネタイズにとりかかろうとしている。
関係者によれば、Giphyはメッセージアプリ内でのスポンサードGIFのテストを近々始めるとのこと。つまり、今後メッセージアプリ内でGIFを検索したユーザーは、スポンサー付きのGIFを目にするようになるかもしれない。
ある程度のユースケースは容易に想像できる。例えば、「月曜」や「朝」といった単語が入力されたらスターバックスのGIFが表示される、といった具合だろう。その一方で、特に映画やテレビ番組(そもそもGiphyのコンテンツの大部分は映画やテレビ番組の切れ端だ)をはじめとするブランドが、既存のコンテンツを使ったGIFを配信するという可能性もある。
仕組み自体はGoogleの検索広告と大差ない。Googleで「Walmart」と検索すれば、恐らくWalmartやTargetの広告が表示されるだろう。
しかしGiphyが一般の検索サービスと違うのは、主な検索ワードがブランド名ではなく、動作やリアクション、感情に関連した言葉だという点だ。つまり、スポンサードGIFが導入されれば、「Wooo(やったー)」という検索ワードに対して、ショットグラスにJose Cuervo(テキーラ)を注ぐGIFが表示されたり、「Cheers(乾杯)」という言葉に、バドワイザーのボトルを打ち付け合うGIFが返ってきたりするかもしれないのだ(ここでNetflixが「Chill(ゆっくりする)」で広告を打たなければガッカリだ)。
また、Giphyのスポンサードコンテンツは、Snapchatのスポンサードフィルターのような形で機能することになるだろう。例え企業が裏についたコンテンツだとしても、友人から送られてきたということでユーザーがコンテンツを目にする確率は上がるため、ブランドは消費者にリーチしやすくなる。
先述の関係者によれば、GiphyのDAU(日間アクティブユーザー数)はAPI経由とウェブサイトを合わせて2億人に達し、Giphyが管理しているサービスとウェブサイトを合わせたMAU(月間アクティブユーザー数)は2億5000万人におよぶという。つまり、ほとんどのユーザーが毎日Giphyを利用しているのだ。
スポンサードコンテンツの配信がいつ頃始まるかについてはわかっておらず、Giphyもコメントを控えている。しかしGiphy COOのAdam Leibsohnは、同社がユーザー数を伸ばす段階から広告商品を開発する段階に移行したと語った(その広告がどのようなものになるかについては明かされなかったが)。
「GIPHY Studios経由で、すでにパートナー企業とは1年以上コンテンツ制作で協力してきました」とLeibsohnは語る。「その経験から、広告商品をどんなものにするべきかという方向性が決まってきました」
どんな企業が最初に広告をテストすることになりそうか尋ねたところ、「コンテンツやエンターテイメント、テクノロジー、広告の分野では、既に世界的に有名なブランドと一緒に仕事をしています」とLeibsohnは語った。「広告をローンチするとなると、既存のパートナーをビジネス相手として考えるのが自然な流れでしょうね」
テストに関しては、どのプラットフォームが実験台になるのかまだハッキリしない。さらに、自社のウェブサイトやアプリ以外のプラットフォーム上でスポンサードコンテンツを配信するとなった場合、ビジネスモデルはどうなるのだろうか。
Slack、iMessage、Facebook Messenger、Twitterといったサービスは全てGiphyにとっては大口のプラットフォームだが、初期テストには少し規模が大きすぎるかもしれない。ここで忘れてはいけないのが、Giphyは何がうまくいくのか試すためにスタンドアローンアプリを次々にリリースするような企業だということだ。
戦略的に言えば、スポンサードコンテンツの実験台にぴったりなのはTinderだと個人的には考えている。既にTinderにはGiphyが統合されており、ユーザーはかなり頻繁にGIFを使っている。実際に昨年の人気トップ25に入ったGIFの中には、Tinderユーザーのおかげでランクインしたものがあった。
このようにTinderとGiphyの相性は(エンゲージメントの観点から)抜群な上、TinderでのデビューはTwitterのようにパブリックなプラットフォームに比べればリスクが低く、仕事で使われることの多いSlackほどの不確実性ややりにくさもない。
本件についてTinderにコメントを求めたが、今のところ返答はない。
スポンサードコンテンツの他にも収益化のポイントはいくつも思いつく。まず彼らにはウェブサイトへの膨大なトラフィックがある。実際のところ、訪問者の50%以上はコンテンツを閲覧する目的でウェブサイトを訪れているとGiphyは語る。
つまり彼らは、検索ワードを使ったネイティブ広告をウェブサイト上でも販売できるのだ。
さらに現在Giphyは、アカデミー賞やゴールデングローブ賞といった大型イベントに合わせてライブGIFを公開している。今のところGiphyのチームは無料でライブGIFを制作しているが、これから各イベントとパートナーシップを結ぶというのは十分ありえる。『フルハウス』や『となりのサインフェルド』といった往年の名作を使って、大手テレビ・ケーブルテレビ局向けにGIFを作るというアイディアには触れるまでもないだろう。
P2Pのネイティブコンテンツが未来の広告の大部分を占めるようになると考えている人はたくさんいるが、実際にはそれがどのような仕組みになるのかというのは未だよくわかっていない。しかしGiphyは比較的短期間のうちに、iMessage上であれ、Twitter、Tinder、Slack上であれ、私たちのコミュニケーションの欠かせない一部となった。
なおGiphyは2016年10月に7200万ドルを調達しており、これまでの累計調達額は1億5000万ドル、評価額は6億ドルにのぼると言われている。
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(翻訳:Atsushi Yukutake)