2021年こそ5Gがスマホ販売を救う年になる

2020年は5Gの年になるはずだった。スマートフォン業界のいくぶん困難に満ちたマクロトレンドをひっくり返すのに、少なくとも出血を止めるのに次世代ワイヤレステクノロジーが手を貸す年になるはずだった。

しかし最良の計画は、計画のままだった。今年も残すところ1週間となり、2020年は大半の人が望んでいた通りにいかなかったといってもいいだろう。ここにはもちろんスマホ市場の大部分も含まれる。スマホ販売にとって2020年がいかに悪い年だったかは、Gartnerがこのほど発表したレポートを見るだけで十分だ。

2020年第3四半期は前年同期比5.7%減という散々たるものだったが、それでもいいニュースに入るうちだ。通常の年であれば、蝋管(初期の蓄音機)とアスベストの産業を除き、多くの業界にとってこの数字はいいニュースとはならない。しかし2020年は通常の年ではなかった。ゆえに我々は、5.7%減は第1四半期や第2四半期の20%減よりもかなり目立たない落ち込みだったという事実に甘んじなければならないだろう。

ここに至るまでには前振りがある。パンデミックによって事態が急変する以前に、2020年のモバイル業界の滑り出しは順調ではなかった。2019年に筆者は「今年のスマホ販売はグローバルで2.5%減となる見込み」「スマホ販売が予想通り第2四半期に再び前年割れ」といった見出しの記事をいくつか書いた。そうした記事は前年からの流れの続きだった。

販売減の原因は、今ではすっかりおなじみのものだ。1つは、プレミアムな端末は高価になり1000ドル(約10万4000円)超えが当たり前になった。これにともない、端末の品質は向上した。しかしここでは、顧客にとって良いニュースは必ずしもメーカーにとって良いニュースとはならない。アップグレードのサイクルは従来の2年からかなり長いものになった。また経済停滞にも直面し、これも低成長の一因となった。

2020年3月、筆者は「5G端末は2019年に米国で購入されたスマホの1%にも満たなかった」という記事を書いた。おそらく、何年もの5G誇大広告の後に、ある程度の認知的不協和があったのだろう。これに関しては多くの要因が絡んでいる。まず、2019年は米国でさほど多くの5Gモデルが提供されなかったことだ。2つめにネットワークの展開が完了とは程遠いものだったことだ。そしてもちろん5GのiPhoneもなかった。

筆者はその記事を以下のように結んだ。

もちろん新型コロナウイルス感染症(COVID-19)がどのように販売に影響するかは、今後明らかになる。我々の暮らしのあらゆる面と同様に、高価なスマートフォンを購入する人の数にかなりの影響を及ぼすと考えても間違いないだろう。スマホの購入などは、グローバルパンデミックのようなものに直面しているときには重要性は低くなる傾向にある。

今考えると、答えは「大いに」だ。3月12日に記事を書いたとき、パンデミックがどれほどひどいものになるか、どれくらい続くのか筆者はさっぱりわかっていなかったことを認める。パンデミック初期に世界が直面した大きな問題はサプライチェーンだった。アジア(特に中国)が最初に打撃を受け、それにともなって製造崩壊のエピセンター(震源地)となった。中国と同国の製造は、目覚しい速さで通常に戻った。

その数カ月の間に需要は大打撃を受けた。繰り返しになるが、この理由はたくさんある。まず、人々はそれほど外出しなくなった。リモートワークにシフトするにつれ、電子機器の購入に充てていたお金はPCのようなものに向かった。そして別の大きな問題は懐事情だ。かなりの人が仕事を失い、そして暮らしが見通せなくなり、スマホは再びラグジュアリーなものという位置付けになった。

しかし、希望を持てる理由もある。いつになるか断言するのは難しいが、5Gはゆくゆくは大きな助けとなるはずだ。それは、2021年にいかに早期に「ノーマル」に戻れるかによるところが大きい。しかしさしあたって、iPhone販売の初期データは前向きなものとなっている。Apple(アップル)は今年5Gに総力を上げ、分析によると(おそらく驚くにあたらないが)新しいiPhoneは10月の5G端末販売台数でトップに立った。

Appleは1月に発表する四半期決算の中で(これまでになく重要な年末商戦も含め)より具体的な全体像を明らかにするだろう。少なくとも今は、物事はようやく正しい方向に向かっている。願わくばこうしたトレンドが継続してほしいものだ。新年には数多くのAndroid端末の発売が控えている。

おそらく2021年は5Gの年になる。なぜなら、2020年が明らかにそうではなかったからだ。

カテゴリー:ハードウェア
タグ:5G

画像クレジット:zf L / Getty Images

原文へ

(翻訳:Mizoguchi

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。