訪日外国人向けチャットコンシェルジェならびにメディアを運営するFAST JAPANは7月15日、2500万円の資金調達を完了した。代表取締役社長の片野由勇岐(かたのゆうき)氏は1992年生まれの24歳。まだ若いが、起業したのは今回が2度目となる。
「例えばインドを旅行するとき、日本語で現地のことが聞けるチャットがあれば便利じゃないですか?」
片野氏のこの発言が、FAST JAPANの根幹となる考えだ。同社が手がける訪日外国人観光客向けチャットコンシェルジュの「FAST JAPAN」では、日本を旅行・あるいは旅行を計画している外国人が、使い慣れたLINE(LINE@)やFacebook Messengerを使い、日本に関するさまざまな質問や予約を行える。例えば「おすすめの観光地はどこ?」「イチオシのお土産は?」「この飲食店を予約してほしい」といった具合だ。
FAST JAPANではメディア「FAST JAPAN」も運営しており、日本の情報も積極的に発信する。対応言語は英語と中国語(繁体字)。ユニークなのは、メディアにもチャットのウィンドウがあり、前述のコンシェルジェサービスを利用できる点だ。これをチャットへの集客に利用するほか、寄せられた質問をもとに、メディアのコンテンツを作成することもできる。つまり、メディアとチャットを組み合わせ、その相乗効果を狙う訪日客向けのツアーサイトというわけだ。
マネタイズはこれからでその詳細は非公開としている。ただし、あくまでチャットサービスを主軸にする方針だという。メディア事業でもアフィリエイトや記事広告で収益を得るが、こちらは副次的なものになると考えている。
類似するサービスとしては、タイ情報専門のチャットコンシェルジェサービス「Mr.Ask」がある。こちらは英語と中国語に対応。ただFAST JAPANと異なり、メディア展開はしていない。日本には直接の競合サービスはないとしているが、クレジットカード付帯やホテルにあるコンシェルジェが間接的な競合関係になると考えている。
冒頭にあるように、片野氏にとってFAST JAPANは2度目の起業。大学在学中に自己資金でソーシャルギフト事業を手がけるスタートアップの経験がある。サービスの概要は、FacebookやLINEで繋がっていれば、住所を知らなくても相手に荷物を届けられるというもの。片野氏はシリコンバレーでインターンの経験があるが、その際日本にいる知人にプレゼントを贈ろうとして苦労したことからこの事業を立ち上げた。結局事業が軌道に乗ることはなかったが、片野氏はこの失敗を次のように振り返る。「自分が作りたいものに合わせて、時代が求めているプロダクトを作ることが大切。それだけで周囲の後押しが全く違う」(片野氏)。FAST JAPANはそんな、時代のニーズに合わせて設計したプロダクトだという。
FAST Japanは2015年11月の設立。創業時にはソウゾウ代表取締役の松本龍祐氏から数百万円規模の出資を受けている。また今回2016年7月にシードファイナンスとして2500万円の資金調達を完了。内訳はエンジェルが1人(非公開)とKLab Venture PertnersとTLMのVC2社。日本でいまだに成長を遂げているインバウンド領域の事業である点、チャット系サービスであることが評価されたという。
同社は今回調達した資金を元手に、コアメンバー、アルバイトを含めて10人程度を想定した人員拡張を行い、チャットオペレーション体制を構築する。さらに、ボット化を含むスケーラビリティのあるチャットサービスのモデル開発にも資金を充てる。2017年前半を目標にシリーズAでの資金調達を目指すという。