Uberの旅行コンシェルジュ版目指す「tabiko」が6000万円を調達

写真左からFAST JAPAN代表取締役の片野由勇岐氏、最高技術責任者のKrishna Prahasith氏

「目指しているのは旅行コンシェルジュ版のUberのようなサービス。数百万人がドライバーとしてUberに参加しているように、世界中からユニークなコンシェルジュが集まるプラットフォームを作っていきたい」

そう話すのは訪日観光客向けのチャットコンシェルジュアプリ「tabiko(タビコ)」を展開するFAST JAPAN代表取締役の片野由勇岐氏だ。

これまでは日本を訪れる観光客の悩みを、自社で採用したコンシェルジュがチャットを通じて解決していた同サービス。5月からはまさにUberやAirbnbのように、旅行情報を持つ人がコンシェルジュとして参画できる「コンシェルジュプログラム」をスタートする。

FAST JAPANは4月5日、同プログラムの基礎固めを含めてtabikoをより強化する目的で、複数の投資家より6000万円の資金調達を実施したことを明らかにした。調達先はDGインキュベーションとキャナルベンチャーズ、そして既存投資先であるKLab Venture Partnersの3社だ。

訪日観光客の悩み事をチャット上のコンシェルジュが解決

2017年2月にローンチされたtabikoはチャット上で訪日観光客にコンシェルジュサービスを提供するアプリ。観光地や交通情報の案内、宿泊施設・レストランの予約を始め、旅行に詳しいコンシェルジュが様々な相談に乗ってくれる。

チャットボットなど機械ベースのものではなくあくまで人間のコンシェルジュが対応する仕組みなので、幅広い悩みやちょっとしたリクエストにも応じられるのがひとつのウリ。「タクシーで忘れ物をしてしまったのだけどどうすればいいか?」といった困り事が寄せられる場合もあれば、「日本で彼女にプロポーズをしたい」という男性ユーザーを手助けするといった場合もあるという。

「旅行に関するプロダクトは増えてきているが、その多くは“予約”という領域に着目したもの。旅行者にとって必要なのは予約だけではない。tabikoは旅の始まりから終わりまで全てのサポートを、コンシェルジュと共にデザインしていきたいという思いで運営してきた」(片野氏)

現在は英語と中国語(繁体字)の2言語に対応。これまで広告によるプロモーションはほとんど実施しておらず、口コミを軸にオーガニック経由で約13万人の会員を獲得した。

ユーザーにとっては、検索エンジンや旅行系のメディアを通じて毎回苦労しながら調べていたような情報を、現地に詳しいコンシェルジュからすぐに仕入れられるのがtabikoを使うメリットだ。たとえばレストランの予約は日本を訪れる外国人にとって大きなペインポイントであり、片野氏によると毎月数千件のレストランをtabikoがユーザーに代わって予約しているという。

ローンチから2年を迎えた今年の2月にはサービスをリニューアルし、コンシェルジュに対してチップを支払える「Star Rewards(スターリワード)」機能を導入。ユーザーは各チャットごとにマイクロ課金ができるほか、コンシェルジュのプロフィールから大きめの課金をすることが可能になった。

「昨年はtabikoのコアバリューではないホテルや航空券の販売を通じてマネタイズをしようとしてしまっていた。そこを欲していたのは一部のユーザーで、全ユーザーにとって本当に価値となっているのはコンシェルジュの部分。マネタイズもその体験に紐付けるべきだと考えた」(片野氏)

Star Rewardsはまだ始まったばかりの仕組みではあるけれど、開始後1ヶ月で約10%のユーザーが1回はチップを払っていて、手応えを感じているという。

Uberの旅行コンシェルジュ版目指し、新たな取り組みも開始

冒頭で触れたように、tabikoでは5月から新しくコンシェルジュプログラムを取り入れる計画。自社で採用したコンシェルジュだけでなく多様な人材が同サービスに参画することで、今まで以上に幅広いニーズに応えられるプラットフォームへと進化させるのが狙いだ。

「(自社で採用したコンシェルジュだけに限定してしまうと)提供できる価値も限られてしまう。世の中にはローカル特有の情報やユニークな旅行体験を持つ人がたくさんいるので、そういった人にコンシェルジュとして参画してもらい、旅行者と繋がれるようなサービスにしていきたい」

同プログラムを通じてtabikoに加わるコンシェルジュは、隙間時間を活用しながら旅行者への情報提供を行う。片野氏の話では上述したチップの機能などとも連動し、獲得したStar Rewardsや対応したチャット数、需給バランスなどを加味した上で報酬を支払うモデルを考えているという。

またAirbnbのホストであれば、自身が同サービス上で掲載しているリスティングや旅行体験を積極的に紹介するのも問題ないとのこと。「ホスピタリティに溢れたコンシェルジュはtabikoの特徴」(片野氏)であり、その点ではAirbnbのホストと相性が良いというのが片野氏の考えだ。

今回調達した資金も、コンシェルジュプログラムを含めたプロダクトの基盤強化に用いる方針。今後は日本だけでなくグローバルでのサービス展開も見据える。

「コンシェルジュが増えてユニークな旅行体験を提供できるサービスができれば、より多くのユーザーが集まるようになる。このモデルが積み上がりコンシェルジュがtabikoを通じて稼げるようになるとスケールできるので、まずはそのモデルの構築を目指していく」(片野氏)

FAST JAPANは2015年11月の創業。片野氏は大学4年時にオンラインギフト事業で一度起業していて、同社が2度目の起業となる。もともとはLINEなどを通じて旅行の相談ができるチャットサービスや旅行メディアなどを展開していたが、サービスの軸を変える形で2017年2月にtabikoをスタートした。

創業期に現メルペイ取締役CPOの松本龍祐氏(当時はソウゾウ代表取締役)から、2016年にはKLab Venture Partnersなどから資金調達を実施。それ以降もベンチャーユナイテッドやエウレカ創業者の赤坂優氏を含む複数のエンジェル投資家より出資を受けているという。

24歳で2度目の起業、コンシェルジェサービス「FAST JAPAN」は訪日観光客にチャットで情報を提供する

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訪日外国人向けチャットコンシェルジェならびにメディアを運営するFAST JAPANは7月15日、2500万円の資金調達を完了した。代表取締役社長の片野由勇岐(かたのゆうき)氏は1992年生まれの24歳。まだ若いが、起業したのは今回が2度目となる。

「例えばインドを旅行するとき、日本語で現地のことが聞けるチャットがあれば便利じゃないですか?」

片野氏のこの発言が、FAST JAPANの根幹となる考えだ。同社が手がける訪日外国人観光客向けチャットコンシェルジュの「FAST JAPAN」では、日本を旅行・あるいは旅行を計画している外国人が、使い慣れたLINE(LINE@)やFacebook Messengerを使い、日本に関するさまざまな質問や予約を行える。例えば「おすすめの観光地はどこ?」「イチオシのお土産は?」「この飲食店を予約してほしい」といった具合だ。

FAST JAPANではメディア「FAST JAPAN」も運営しており、日本の情報も積極的に発信する。対応言語は英語と中国語(繁体字)。ユニークなのは、メディアにもチャットのウィンドウがあり、前述のコンシェルジェサービスを利用できる点だ。これをチャットへの集客に利用するほか、寄せられた質問をもとに、メディアのコンテンツを作成することもできる。つまり、メディアとチャットを組み合わせ、その相乗効果を狙う訪日客向けのツアーサイトというわけだ。

日本の観光情報を発信するメディアは英語・中国語(繁体字)の2言語で運営

日本の観光情報を発信するメディアは英語・中国語(繁体字)の2言語で運営

マネタイズはこれからでその詳細は非公開としている。ただし、あくまでチャットサービスを主軸にする方針だという。メディア事業でもアフィリエイトや記事広告で収益を得るが、こちらは副次的なものになると考えている。

類似するサービスとしては、タイ情報専門のチャットコンシェルジェサービス「Mr.Ask」がある。こちらは英語と中国語に対応。ただFAST JAPANと異なり、メディア展開はしていない。日本には直接の競合サービスはないとしているが、クレジットカード付帯やホテルにあるコンシェルジェが間接的な競合関係になると考えている。

FAST JAPAN代表取締役社長の片野由勇岐(かたのゆき)氏

FAST JAPAN代表取締役社長の片野由勇岐(かたのゆき)氏

冒頭にあるように、片野氏にとってFAST JAPANは2度目の起業。大学在学中に自己資金でソーシャルギフト事業を手がけるスタートアップの経験がある。サービスの概要は、FacebookやLINEで繋がっていれば、住所を知らなくても相手に荷物を届けられるというもの。片野氏はシリコンバレーでインターンの経験があるが、その際日本にいる知人にプレゼントを贈ろうとして苦労したことからこの事業を立ち上げた。結局事業が軌道に乗ることはなかったが、片野氏はこの失敗を次のように振り返る。「自分が作りたいものに合わせて、時代が求めているプロダクトを作ることが大切。それだけで周囲の後押しが全く違う」(片野氏)。FAST JAPANはそんな、時代のニーズに合わせて設計したプロダクトだという。

FAST Japanは2015年11月の設立。創業時にはソウゾウ代表取締役の松本龍祐氏から数百万円規模の出資を受けている。また今回2016年7月にシードファイナンスとして2500万円の資金調達を完了。内訳はエンジェルが1人(非公開)とKLab Venture PertnersとTLMのVC2社。日本でいまだに成長を遂げているインバウンド領域の事業である点、チャット系サービスであることが評価されたという。

同社は今回調達した資金を元手に、コアメンバー、アルバイトを含めて10人程度を想定した人員拡張を行い、チャットオペレーション体制を構築する。さらに、ボット化を含むスケーラビリティのあるチャットサービスのモデル開発にも資金を充てる。2017年前半を目標にシリーズAでの資金調達を目指すという。