25歳になったRed HatはLinuxの先を見つめる

Red Hat Linuxディストリビューションは先週25歳になった。最も初期のLinuxディストリビューションの1つとして始まった企業は、いまや最も成功したオープンソース企業となり、その成功は他の企業たちが従う触媒となった。今日のオープンソースの世界は、LinuxがMicrosoftのデスクトップ支配に敢然と立ち向かうかのように見えた90年代半ばの熱狂とは異なっているものの、RedHatそのものは今でも強くなり続けている。

こうしたこと全てを視野に入れつつ、私は同社の過去、現在、未来、そしてオープンソースソフトウェア一般について、同社の現CEO(元Delta Air Linesの COO)Jim Whitehurstに話を聞いた。WhitehurstがRed HatのCEOに着任したのは10年前のことなので、彼は業界の最初期にはまだ関わっていなかったものの、いまやかつて無いほどの広がりを見せつつある、企業におけるオープンソースの進化に関しては、間違いなく目撃した人物なのである。

「10年前のオープンソースは、従来のソフトウェアに代わる、実用的な選択肢を提供することに重点を置いていました」と彼は語った。「既存の技術を置き換える技術レイヤーを販売していたのです。[…]当時はオープンソース技術を用いることで、低コストでの構築を行えることが売りでした。安価であることが、その価値の中心だったです」。

その当時、市場はWindowsをLinuxに、そしてIBMのWebSphereJBossに置き換えようとしていたのだという。またそれが、エコシステムにおけるRed Hatの役割も定義していた、技術的な情報の中心はパッケージングに関するものだった。「RedHatは、こうしたオープンソースプロジェクトへの取り組みを始めて、それらが従来の企業の中で利用可能になるようにしてきたのです」とWhitehurst。

Jim Whitehurst、Red Hat社長兼CEO(写真:Joan Cros/NurPhoto、Getty Images)

だが約5〜6年前に、何かが変わった。GoogleやFacebookなどの大企業たちが、自分たちのプロジェクトのオープンソース化を開始した。何故なら彼らはオープンにした基盤技術の一部を、競争上の優位性だとみなしていないからだ。自分で抱え込む代わりに、それらを彼オープンにしておくことで、その周りに形成されたエコシステムから利益を得ることができたのだ。「最も重要な点は、この考えに改宗したのはGoogleとFacebookだけではなかったということなのです」とWhitehurs。「オープンソースを巡るソーシャルテクノロジーにより、プロジェクトの遂行が簡単になりました。企業たちもそのことに対する功績を認められています」。

彼はまた、開発者たちは現在、その職歴の一部にオープンソースへの貢献を含めるようになっていることも指摘した。職場を定期的に移動する人材がますます増えているため、才能の獲得を競う企業たちは、彼らに競争上の優位性を与えない技術の少なくとも一部は、オープンソース化することを余儀なくされている。

オープンソースのエコシステムが進化するにつれて、Red Hatも進化してきた。企業たちがオープンソースの価値を理解し(そして恐れることを止め)始めるにつれて、RedHatは潜在的な顧客に対し、オープンソースがただ節約になると語ることから、いかに革新の推進に役立つかをアピールするようになり始めた。「私たちは『とにかく使える者たち』の段階から『革新する者たち』への段階に移りました。私たちが推進している技術は、今や真に新しい革新を推進しているのです」とWhitehurstは説明する。「いまや私たちは、お金の節約について語るのではなく、企業内での革新の推進を支援しようとしているのです」。

ここ数年、この革新を推進するための買収も行われてきた。例えば、Red HatはIT自動化サービスのAnsibleを2015年に買収した。また先月には、Kubernetesコンテナエコシステムの主要な独立プレイヤーの1つであるCoreOSの買収を行っている。もちろん全てはオープンソースとしての出自を保ったままだ。

Linuxディストリビューションの周りで行うことのできる革新だけでも沢山あり、そして公開企業として、RedHatはコアビジネスを超えて、顧客に役立つものをその上に構築しなければならない。そのような取り組みの一環として、例えばOpenShiftのようなサービスが立ち上げられた。これはRed Hat Enterprise Linux上のコンテナプラットフォームであり、DockerやKubernetesといった技術を統合して企業内でより簡単に利用できるようにするものである(オリジナルのLinuxディストリビューションが果たした役割と似ている)。

こうしたことに取り組む理由は?「私はコンテナが、アプリケーションの構築、展開、管理を行うための主要な手段となるだろうと信じています」と彼は言う。そして特にCoreOSの買収後、RedHatはコンテナとKubernetesの両方のリーダーになったと主張する。「ITの将来におけるコンテナの重要性について考えるならば、その価値は私たちにとっても、顧客の皆さまにとっても明らかです」。

他にRed Hatが注力している主要なオープンソースプロジェクトは、OpenStack である。これは、AWSやその他のクラウドプロバイダーを代替するオープンソースのオンプレミス環境への、企業の大規模な移行に対して否定的な見解が多く出された昨今の情勢を考慮すると、少々驚くような話かもしれない。「OpenStackは、大規模なテクノロジー企業たちにとって、Amazon対抗の救世主になるだろうという思いがありました」とWhitehurstは語る。「しかし、問題なく動作するOpenStackを利用しても、Amazonが5年前に既に実現していたことをようやく実現できるだけなのです。Cisco、HP、あるいは大手OEMたちにとって、OpenStackはある意味失望でした。しかし、ソフトウェア会社としての私たちからの立場から見れば、魅力的なものなのです」。

OpenStackは特に電気通信事業者に人気が高いため、Whitehurstは、それが5Gへの移行で大きな役割を果たすだろうと考えている。「通信事業者たちと話してみると、[…]OpenStackが5Gをリリースするためのプラットフォームになることを確信できます」。

OpenShiftとOpenStackによって、Red Hatは、将来のアプリケーション開発と、そのアプリケーションが実行されるインフラストラクチャの両方を、カバーできると考えている。さらにその少し先に目を向けて、Whitehurstは、自社製品をよりスマートで安全にするために、人工知能と機械学習をどのように使用できるかの見極めを始めていると語り、またその技術をエッジコンピューティングのためにどのように利用できるかの検討も始めていると指摘した。「今や大企業もオープンソースに貢献していますから、私たちが知識として使える材料には実質的に限りはありません」と彼は語った。

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(翻訳:sako)

投稿者:

TechCrunch Japan

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