2017年に入り日本国内でも一気に知名度が上がったライブコマース。「TechCrunch Tokyo 2017」でもライブコマースに関するセッションを行ったが、やはり注目度は高かった。
10月のサービスローンチ時に紹介した東大発ベンチャーFlattも、この領域で事業展開をするスタートアップのひとつ。同社は12月19日、運営するライブコマースアプリ「PinQul(ピンクル)」にて、プライベートブランド「P.Q. by PinQul」の展開を開始したことを明らかにした。
TechCrunch Japanでは「Live Shop!」を提供するCandeeがプライベートブランド「TRUNC 88(トランクエイティーエイト)」を始めるという発表をつい先日紹介したばかり。ただPinQulは一足早く11月中旬からプライベートブランドの提供を開始。12月中旬までの約1ヶ月で、すでに数百万円の売り上げになっているという。
約30分で1万1800円のセットアップを43着販売
PinQulはインフルエンサーがお気に入りのファッションアイテムを紹介するライブコマースアプリ。主に20~30分間のライブ配信を通じて、商品の紹介やユーザー間のコミュニケーション、商品の売買までを行う。誰でも商品を売れるオープンなプラットフォームではなく、PinQulの運営が配信者を選ぶ。
プライベートブランドの構想はサービスローンチ前に取材した時から話がでていたが、ODMメーカーと組んでインフルエンサーが商品をデザイン、販売できるというもの。ただし個々のインフルエンサーが独自のブランドを持つわけではなく、デザインしたアイテムを「P.Q.」ブランドの元で販売する形をとる。
11月中旬より提供を開始し、12月中旬時点で3人の配信者がアクセサリーやセットアップといったオリジナルアイテムを計6回販売。売り上げは数百万円になっている。FlattのCCOを務める豊田恵二郎氏によると高単価の商品も売れているそうで、実施した回数はまだ多くないものの手応えを感じているという。
「代表的な例としては1万1800円のセットアップが1度の配信で43着売れた。ライブコマースは従来のテキストや画像、動画と比べて伝えられる情報が多い。ユーザーとのコミュニケーションやユーザー間のコメントなどリッチな体験を通じて商品を販売することで、購入率や購入単価をあげられるという当初の仮説が検証できてきている」(豊田氏)
売れる人の特徴は「ライブ慣れ」したフォロワーがいること
PinQulの正式ローンチから約2ヶ月半。豊田氏に直近の進捗について聞いてみると、「プライトベートブランドで予想以上の売り上げを記録したことが1番大きな変化」としつつ、合わせて売れる人の傾向がわかってきたという。
「実際に2ヶ月やってみて、人による差がものすごく大きいとあらためて感じた。たとえばフォロワー数のような単純な指標はあてにならない。影響が大きいのはライブ慣れしているかどうかということ。具体的には(配信者の)フォロワーがライブ慣れしているかが、商品の売れ行きに影響する」(豊田氏)
ライブが盛り上がることでより商品が売れるようになり、そのためには視聴するフォロワーのコメントが不可欠。ところがライブ慣れしていないフォロワーばかりだと肝心のコメントがつかないため、配信を頑張ってもなかなか売れないということもあるそうだ。たとえばセットアップを43着販売したインフルエンサーは、普段からインスタグラムでライブ配信をするなど自身もフォロワーもある程度ライブ慣れしているという。
とはいえ回数を重ねるごとにライブ慣れして成果があがることも多く、上述したインフルエンサーも1回目よりも2回目の方が販売数が増えたそうだ。
フォロワーが強力な売り子になることも
また視聴者であるフォロワーが売り上げに影響する例として興味深かったのが、1回目の配信で商品を購入したユーザーが「コアなファン」となり、2回目の配信で売り子のような存在を果たしたという話だ。
豊田氏によると「前回の放送でフォロワーになった人が、2回目の放送で他のユーザーに対して自発的におすすめのサイズなどアドバイスのコメントを行っていた」という。リアルタイムでのユーザー間コミュニケーションによって商品の売れ行きが変わるというのも、ライブコマースならではだろう。
ライブコマース領域に特化してサービスを運営する中で、Flattにはこのような双方向コミュニケーションに関する知見も蓄積されてきた。直近では配信者やコンテンツの数を増やしながらも、知見を共有することで配信者の育成にも力を入れていく方針だという。
なお10月のサービスローンチ時に、同社がフリークアウト・ホールディングス代表取締役社長の佐藤裕介氏や、ペロリ元代表取締役の中川綾太郎氏を含む個人投資家から資金調達を実施したことにも触れた。個人名や金額などは非公開ではあるが、現在までで個人投資家の数もさらに増えているということだ。