3Dイメージングを不動産の評価と修繕に活用するホバーが約62億円の資金を調達

米国の不動産市場は、新型コロナウイルス感染症によるパンデミックに対して予想よりも早く立ち直りを見せている。本日多額の資金の調達に成功したのも、コンピューターグラフィックツールによって不動産のオーナーが保有する不動産の評価と修理を簡単に行うことを可能にし、利用者が急激に増加しているスタートアップ企業である。

その会社はHover(ホバー)。同社が構築しているプラットフォームでは、スマートフォンで撮影された最小限の写真8枚をつなぎ合わせて家屋の3D画像を生成し、修理箇所の評価、作業の見積もり、必要な材料の注文を行えるよう請負業者や保険会社に見せることができる。同社は今回、新たに6000万ドル(約62億円)の調達に成功した。

シリーズDの投資において、同社の投資後の価値は4億9000万ドル(約500億円)と算定されており、複数の戦略投資家が同社に出資していることが注目される。また、米国の大手保険会社のうち3社、つまりTravelers(トラベラーズ)、State Farm Ventures(ステート・ファーム・ベンチャーズ)、Nationwide(ネイションワイド)が投資ラウンドを主導し、建材大手のStandard Industries(スタンダード・インダストリー)や名前の明かされていない他の建築テクノロジー企業も参加している。さらに、過去にも支援してきたMenlo Ventures(メンロ・ベンチャー)、GV(以前のグーグル・ベンチャー)、Alsop Louie Partners(オルソップ・ルイ・パートナーズ)に加えて、Guidewire Software(ガイドワイヤ・ソフトウェア)が新たな後援者として名を連ねている。

今回の資金調達により、ホバーがこれまでに調達した資金総額は1億4200万ドル(約147億円)に達した。参考までに、前回2019年のシリーズCのラウンドでホバーの企業価値が2億8000万ドル(約290億円)と算定されていたことを考えれば、かなり跳ね上がったといえるだろう(データはPitchBookによる)。

本日資金調達に成功し、企業価値が急上昇し、保険会社からの関心を集めているのも、同社の非常に大きな成長の当然の帰結だろう。ホバーの設立者兼CEOであるA.J.Altman(アルトマン)氏は、2016年の同社の収益が約100万ドル(1億300万円)だったと語っている。それが今年は年間ランレートで「7000万ドル(約72億円)以上」に達すると予想されており、その成長の大部分を保険会社や他の大規模なビジネスパートナーに負っている。

2011年に設立されたホバーの名を最初に知るようになったのは、家の屋根やその他の構造物の修理を手掛ける不動産オーナーや個人事業主、それに小規模な請負業者たちだ。同社はそのソフトウェアによって市場に貢献し、スマートフォンのカメラ、センサー、アプリを活用することで、家屋の修繕にまつわる煩雑な作業の多くを省略できるようにしたのだった。

ソフトウェアの機能について簡単に説明しておこう。あるスペースのスナップ写真を普通のスマートフォンのカメラで数枚(最大8枚)撮影すれば、それらの写真を組み合わせることで「構造化された」3D画像を作成し、作業の見積もりを簡単に行えるというものだ。

それらの3D画像は通常の3D画像とは異なり、材質、サイズ、寸法などの情報も合わせて、動的にエンコードされる。こうした情報はどのような作業にも欠かせない。請負業者であれば、ホバーのアプリを使用して、見込み客のためにそうした3D画像から材料と作業スケジュールの明細を付した見積書を自動的に作成することができるだろう(これを、多くの作業で見られる、アルトマン氏の言うところの「名刺の裏」の見積もり額と比べてほしい)。

さらにホバーは最近、施工業者が部材を注文するEコマースポータルとしての役割も果たすようになっている。

同社が市場の牽引役を果たすようになった理由の1つは、それまでオンライン化をかたくなに拒み、透明性に欠けていたアナログ的プロセスをデジタル化した手法にある。この分野は、プロセスが本質的に細分化されているだけでなく、市場も非常に細分化されているという特徴があり、現在米国には営業中の家屋修繕業者が約10万社も存在している。

「家屋修繕は、オンライン化されていないわずかなセグメントの1つでした」とアルトマン氏は語っている。「たとえば、屋根を新しくしたいと思っても、それにいくらかかるか教えてもらうことさえ大変でした。修理にかかる時間などを予想し、コストを見積もるためには、誰かがまず家の数十か所を測定することが必要だったからです。ホバーでは、写真からそれらすべての答えを導き出す仕組みを構築したのです」。現在このアプリを使っている請負業者は1万社を超え、アルトマン氏によればまだまだ増える余地があるとのことだ。

アルトマン氏によれば、最初のうち同社が直面した障害は、家屋の修繕を手配するために、問題のある箇所の写真を家の所有者でも撮影できるようなアプリがあるとどれほど便利か、人々に納得してもらうことだったという。

これは、DIYがこれほど一般的になり、The Home Depot(ホーム・デポ)―ちなみに前回ホバーが資金調達した時の支援者でもある― が人気を集める時代になっているのに、建築業者やそのパートナーの側が、写真撮影を顧客の役割ではなく自分たちの仕事だと考えているからだ。

だが、この状況もこの1年で大きく変化してきた。全地球的なパンデミックの時代になり、多くの人がウイルスの広がりを封じ込めるために社会的な接触を減らすことを余儀なくされている。

「家を実際に見に行く必要がなくなるというのは非常に大きな意味を持つことなのですが、新型コロナウイルス感染症の流行前まで、私たちはこのアイデアの良さをわかってもらうために多くの時間を費やしていました」とアルトマン氏は述べた。「保険会社にしろ請負業者にしろ、家のオーナーに連絡して作業をお願いするというやり方を、サービス提供側がいやがっていたのです」。ところが今では「新型コロナウイルス感染症を経験したことで(同氏)」この状況が相当変化し、多くの人がそうした方法を希望するようになっているという。

ホバーの収益の多くを小規模な請負業者が占めているとはいえ、同社のビジネスにおいて成長が著しいのは保険会社のセグメントである。アルトマン氏によれば、大型企業は自社のアプリとホバーのアプリを統合しており、ホバーのアプリを使って写真を撮影するよう顧客にリンクが送信され、その結果は保険会社のアプリに自動的に送られるため、顧客からの支払い要求を処理するプロセスを迅速に開始できるということだ。

トラベラーズのエグゼクティブ・バイス・プレジデント兼支払要求対応責任者であるNick Seminara(ニック・セミナラ)氏は、「私たちにとって、優れたカスタマーエクスペリエンスの実現は重要です。その点、ホバーのテクノロジーは、支払い要求の処理プロセスをさらにシンプルで迅速、かつ透明なものとするのに役立っています」と語っている。「保険業界には、ホバーにとって非常に大きなチャンスがあります。同社とのパートナーシップを継続し、その将来のために投資できることをうれしく思います」。

さらに長期的な視点から見ると、ホバーのテクノロジーを応用できるさまざまな分野を思いつくかもしれない。同社はすでに商業建築についての業務を多く手掛けており、次なるステップはおそらく内装設計や装飾といった室内業務への展開となりそうだ。

ある投資家がデジタルによる「複線化」と形容したとおり、物理的空間をデジタルで視覚化すれば、そこからさらに分析を進めることも、その空間に関する作業プロセスを改善することも可能だ。物理的空間のデジタルによる視覚化プロセスは、地図作製と物流、自動車への応用、医薬、航空宇宙や国防、ゲームなど数々の業界で使用されるようになっている。ホバーは、35件ほどの特許を保有して自社の技術を守り、既存プロセスにさらにイノベーションを投入できるチームを抱えている。このホバーような企業にとって、今後の成長の地平は大きく開けており、さまざまな成長戦略を採用できる。

しかし、不動産市場でのポテンシャルだけに注目したとしても、まだまだいろいろ試す余地がありそうだ。たとえば、ホバーが持っているような技術を不動産販売会社などと連携させれば、家を売るだけでなく、家屋の手軽な修繕プランを合わせて販売することができるだろう。言うまでもなく、家具や家電などを販売するEコマースにも広大なビジネスチャンスが開けている。

IKEA(イケア)Houzz(ハウズ)といった企業の多くが、Apple(アップル)のARプラットフォームのような新技術を活用したユーザーエクスペリエンスの向上にすでにかなりの額を投資していることから、この分野にはさらなるサービス改善を目指す動きが確実に存在しているといえるだろう。

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:不動産テック 資金調達

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(翻訳:Dragonfly)

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TechCrunch Japan

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