アップルは少なくとも2020年までは、次世代移動通信「5G」対応iPhoneの発売を延期するとの噂が報じられています。
米メディアBloombergの匿名情報筋によると、アップルはこれ以前のモバイル通信3Gや4Gと同じく、5Gネットワークへの参入も遅らせるとのこと。すでに米国の通信大手ベライゾンが5G対応のサムスン製スマートフォンを2019年前半に発売すると発表していますが、今回の報道が正しければアップルは1年遅れとなります。
アップルが新世代の通信規格への対応を遅らせるのは「いつものこと」と言えます。たとえばアメリカでLTEがサービス開始されたのは2010年後半でしたが、LTEに対応したiPhone 5が登場したのは2012年9月のこと。Bloombergは「導入初期には電波がカバーされる範囲に問題があると正確に予測していたからだ」といった分析をしています。
しかし、5Gは以前の世代よりもはるかに高速化しているため「4Gから5Gへの飛躍」は新型スマートフォンの主要なセールスポイントになるほど重要との見方もあります。さらにはIoTに対応する超多接続性など、モバイルコンピューティングの新境地が開かれる可能性も指摘されています。
その一方でアップルの競合他社は、2019年内に5G対応スマホを投入すると噂されています。冒頭で紹介したサムスンのほか、中国のOppoやファーウェイもそろそろ具体的な動きを起こす気配があります。
遅れをとるリスクがありながら、なぜアップルは5G対応を1年遅らせるのでしょうか。Bloombergはひとつの要因として、2020年に5G版iPhoneをリリースすれば、スーパーサイクル(iPhoneの買い替え特需)を引き起こせるという予測を示しています。iPhoneが高価になり、アップグレード周期が全体的に遅くなっていることを考えれば、今から2年後の5G採用はiPhone XやiPhone XSユーザーに買い替えの動機を与えるうえでちょうどいいというわけです。
別の見方としては、5G対応チップのリーダーと言えるクアルコムとアップルの不仲が関係するかもしれないと指摘しています。iPhoneのための莫大な量の5Gモデムチップを確保するために、和解を拒否して法廷で争うライバルから調達するわけにはいかないということでしょう。ただ、片方の手で握手をしながらもう片方で殴り合うのはある意味アップルの伝統芸かもしれません。
IT分野の調査・助言を行う企業ガートナーのアナリストMark Hung氏は「アップルはいつも携帯電話の技術で遅れを取っている」「過去には影響はなかったが、5Gははるかに市場に普及しやすいだろう。2020年を過ぎると、その影響が出てくると思う」と語っています。
さらにIT調査会社のIDCによると、世界的なスマートフォン市場は4四半期連続で減少しているなか、iPhoneはアップルの収益の約60%を占めているとのこと。「今後のアップルはハードよりサービス」との声もありますが、音楽、動画ストリーミング、クラウドストレージの基礎となるiPhoneは依然として重要なはず。他社の5G攻勢に対して、アップルがどのような対策を取るか見守りたいところです。
Engadget 日本版からの転載。